第208期決勝時の投票状況です。6票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
7 | 始まりの物語 | えぬじぃ | 3 |
4 | カーピス将軍 | ハンドタオル | 2 |
3 | 惑星ナイーヴ | テックスロー | 1 |
始まりの物語を聞く聴衆が、誰もかれも、それ以前に物語を聞いたことのあるような振る舞いを自然にできていることが引っかかった。
イグイの話を聞いている聴衆には、物語を娯楽として捉えるだけの余裕が備わっている。「つまらん」と吐き捨てて去った男は、すでにそれ以前につまらなくない状況を知っていたことになる。一人で剣歯虎を倒すことに、「危険な剣歯虎に近づくときは石槍を持て」、以上の、何かの意味を見出して、それを表現することをイグイに期待している。うまく言えないが、始まりの物語は、会えば即死の剣歯虎に会って死なずに帰ってこれた、という、そのこと自体が物語になるのではないかと思った。我々が生きているこの世界より、イグイが生きていた時代のほうが、情報の濃度が濃かったとでも言ったらいいのだろうか。物語は、膨らませることができる、というのは、それを受け取る側が、膨らみを受け取る素地があるということ、そしてその物語が多数に支持されるということは、命に係わる情報がすでに十分にみんなに共有されているということだと思った。
長々と書いてしまったが、始まりの物語という視点はとても新鮮だったし、書きぶりもとても好きです。(この票の参照用リンク)
3作とも好きな作品だったので大変悩みました。が、今回は『始まりの物語』に投票します。
剣歯虎討伐のエピソードが次第に膨らんでいく過程が楽しかったのと、予選票でも書きましたが、最後の一文が広がりに満ちているように感じられて、とても良い作品だなとあらためて思いました。(この票の参照用リンク)
三作品とも読み直してみて、他の方の感想も読んでそれぞれの良さを再確認もしましたが、やはりこの話が一番好きでした。聞いてくれる人を喜ばせようと、つい話を盛ってしまうというのは、「分かる分かる」という気にさせてくれます。(この票の参照用リンク)
面白かった。酷な展開の物語とユーモラスな語り口というのは、相性がとてもいい。
初っ端からひとつひとつ、ありえないエピソードが重ねられていくのだけど、
無責任に興じながら、現実の似姿かとふと我に返る。よかったです。(この票の参照用リンク)
「惑星ナイーブ」が短歌的な作品であるとするならば、「カーピス将軍」は俳句寄りの作品だろう。カーピス将軍をカーピス将軍たらしめる要素を1000字で書き尽くそうとしている。物語としては「始まりの物語」の方が据わりがいいのかもしれない。「カーピス将軍」のオチが物語として落ちているかどうかは私は自信はない。「カーピス将軍」はむしろこれからカーピス将軍や兵卒たちの物語が始まりそうな予感があり、短編として完結しているのかどうかはよくわからない。
しかし「始まりの物語」の主人公イグイが最後の2行で実在性を失い、物語の始まりってどんな感じなのかなーと考えた誰かの空想上の人物に成ってしまうような気がする一方で、カーピス将軍は最後の一行まで語り手の日常に生きている感じがした。この実在感を無視できないので私は「カーピス将軍」に投票する。(この票の参照用リンク)
改めて3作品を読み直しました。それぞれがテイストの全く違う作品なので単純に比較できません。本当に個人的な好き嫌いです。小説としてはもやっとしているかもしれません。ただ少ない文字数で一番大きな世界観を作っていると思います。何より世界観が暗く切なくて好きです。(この票の参照用リンク)