第179期決勝時の投票状況です。5票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
11 | リリーはキツネのリュックになる | 宇加谷 研一郎 | 4 |
9 | 虫のこと | テックスロー | 1 |
締め方の効果も大きいのだろう、何度読み返してみてもワクワクするものがある。そういう読ませ方をさせる文脈であったし、キャラ付けであった。(三倉 夕季)(この票の参照用リンク)
#6
虐げられている様が淡々と語られていくなか、「ハルとも暮らせないほどだめな人間なのか。」の一文だけが浮いてしまっている。この一文の前までは、四郎は決して「だめな人間」ではないはずだ。作者の意図が透けて途端に白けてしまった。
#9
そもそもヒアリとの結びつけが強引すぎると思う。噛みつくだけなら犬でもいいので、もっと虫らしさを感じさせる描写がほしい。#6同様、進めたい方向へ進めたいのだな、という感じ。登場人物は人形?
#11
今期はこちらに。死神とか悪魔といわれるだろう彼らの造形の奇妙さもさることながら、ふだん描かれない家を舞台にしている点など興味深かった。歴史の裏側。おそらくこの先に起こるだろう恐るべき事態について想像を働かせるが、どことなくコミカルな彼らの所作や「キツネのリュック」の可愛らしさでもって有耶無耶にされてしまう。そのバランスが見事だと思う。
あとこれは完全に蛇足だけどルドンは蜘蛛が好きです。(この票の参照用リンク)
三作品の中では最も想像力を掻き立てられた。(この票の参照用リンク)
額面通りに読むと、これは妖怪らしき存在の不思議な話ということになるが、その奥にあるのはやはり人間であり、人間について考えている話だと思う。
われわれは普段何気なく暮らしているが、それはいろんなものにずっと守られているからできることなのだろう。でも、普段はそのことに気づくことはなく、何事もなかったかのように人生を謳歌している。この作品では、何か不思議な力で人間を守っているといった設定になっているが、実際には、愛情や、思いやりや、人との繋がりなどにより人間は守られているのだと思うし、この作品では、そのことを暗に伝えたかったのではないかと感じる。そして、そのことを直接的に書くと押しつけがましくなってしまうのだが、この作品では、上手く物語の中にメッセージを溶け込ませて、物語そのものを楽しめるようにしており、その点が上手いというか素晴らしいと思う。(euReka)(この票の参照用リンク)
予選票では「リリーはキツネのリュックになる」には入れなかった。妖怪系のアニメを想像させてしまう(オリジナルという感じがしない)ということがマイナスポイントになると考えたからである。それでもこの作品はさわやかで娯楽性のある作品だと思う。シリーズで作品の世界観が徐々に理解できれば、今回解明できなかった言葉の意味も分かるのであろう。
票を入れた「虫のこと」は、読者への歩み寄りがないし、わかりづらい書き方だけれども、それ以上に魅力ある作品だと私は思った。感想は予選票で書いたから割愛するが、歩み寄りがないということが実は、読者に考えさせることを促す効果になっているのではないかと考えるようになった。鳥居みゆきの「ヒットエンドラン」のように色々な解釈が生まれる複雑さを私は感じた。(この票の参照用リンク)