第153期決勝時の投票状況です。5票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
15 | この言葉はあなたに読めますか? | qbc | 3 |
16 | リヴァーオブサンド | キリハラ | 2 |
つまり政治に無関心な人々の立場から世の中を眺めるという趣向か。
語り手である「私」は一定の意見を持っているように振舞っているけれども、結局はその現象の外に居るだけで、たいして何も意見を持っていないという感じがする。まるで動物園の動物でも観察しているような感じだ。
これでいいのかなという気もするが、作者なりの鋭い視点に1票入れる。(この票の参照用リンク)
いや、もういっそ自分の中では「なし」でもいいかな、って思ったんですが、なしってわざわざ投票する意味があるのか?と思って、やっぱりそれはなしなんだろうな、と思い至ったので、この作品に。
大概行きつく先は同じだったりするものですが、他の3つはなんかどこかで読んだことがあるような感じのものだったので。
後は、やっぱりタイトルから連想される内容、というか、印象でしょうか。
タイトル見ても、どんな話だったか思い出せない、ってのは論外ですよね。(この票の参照用リンク)
ハウ・トウー・ボーーン
小説を読むという話が朗読にすりかわってしまうおふざけの軽快さ。身も蓋もない話だが、1000文字ではこの軽快さを味わいつくせない。
カフカフ
後半が駆け足である。寓話はテンポを乱してはならない。
この言葉はあなたに読めますか?
よく踊っている。今期注目に値するものはこの一作だけだった。
リヴァーオブサンド
ガイドならば何百回と語ってきたかのように語らなければならないのではないか。(この票の参照用リンク)
あらためて読み返し、立ちのぼってくる匂いと音の風景に魅せられました。
荒涼としていそうで、生活臭がある、慕わしそうで、けれどもはねつけるような情景がよかったです。
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14 カフカフ euReka
タイトル見てカフカかと思って一文字目の「羊」で完全にカフカじゃんって思って短編集を読み返したら、これは評価できるかどうかって悩みました。全部カフカではなく、雑種とオドラデク、プラスeuRekaさんの独創でできた作品だけど、これはアイデアの盗難に値するのかどうなのかと。
で、毛のふさふさした得体のしれない生き物という初動は本歌取り的なものとして許容しても、最後の生き物が殺されたがっているところはカフカ短編からも拾えるイメージで、読み手に内省を促すサスペンスがあり、このカフカに発見された大切な締めくくりの被り方に私はオリジナリティを付与できない。
面白いかどうかとは別の話。話自体は面白かった。私はカフカが好きだし。
小説が、私とあなたの違いということを明確にし得る、個人という幻想の花の結晶であると考える私としては、これは評価埒外だななと思いました。
ということを考える機会になった作品としては、ずっと覚えてるだろうな、とも思いました。
11 ハウ・トウー・ボーーン 宇加谷 研一郎
「村上さんのところ」で、確か小説が好きなのは人口の数%くらいなものだという、村上春樹の回答があって、面白いなと読んだ記憶があるのだけど、検索したら書籍化で読めないみたいなのね今は。そういう念頭があったので冒頭は引き込まれた。予選票を眺めると、サイト短編を訪れる人にとっては親近感のある造形の作中人物だったのかなと。。
文章もすっきりとしていて、文を読み進める嚥下自体にに苦労はないのだけれど、どこかにあっけらかんとした風情があり、それが読みやすさを醸成する源なのだと推測するも、実はそのあっけらかんさ自体が私にとっては不可解なところで、文字を読む目の動きとは別に読んでいる私自身に、えこれなんでこんなすっきりと書けるの、と私の自意識を立ち止まらせる。
この状況だったら、もっと凄惨に、もっと深刻に精緻に書き込むことができるであろう力量を持っていると思う中で、このふつうさにいかがわしさを感じる。
で、その関心の強さに反比例して投票できないのは、そのあっけらかんさにまったくもって納得できないから。興味は持っているけど、なんかよく分からない人なのよねーっという距離感。
この作品に広告的すけべさがくわえられたのならば、もしかしたらもっと通りの良い話になったのかもしれない。今はただ、不思議な人を遠巻きに眺めているような感覚しか抱けなかった。通りの良さが備わったらこの味わいが失われる危惧があるものの、でもお通じも良く不可解さも残しつつという残尿感的刺激もできるんじゃないかな、と思う。それを作り出すのに作品の長さが必要なのか、それとも違う要素なのか、あるいは私自身との感覚との疎隔が問題なのかはは分からないけど。
16 リヴァーオブサンド キリハラ
硬い。別にこの文章ではそういう語彙でなくても構わないでしょうと思って読み進める。結局、語ろうとするものに対して作者自身の感覚がが追いついていないからこういった硬い、重い、遅い語彙になるのかなと思えて、それがかわいらしかった。総体ごつごつしていて、全編息苦しい。正直、烏を繁栄の象徴と見るのもチープに感じられたのだけど、でもそこに文章と作家の緊張感ある接合が感じられて良かった。鳥は希望の象徴だけど、カラスは凶兆で、でもこの作品ではカラスはポジティブな扱いになっていて、作家個人由来の小説造作上自然な流れというよりかは、これまでの物語作法的必然の対する嫌みとして配置するあたりとか、その思惑の呼吸が、常に新しくあるべきはずの小説の対象に取り組むのに既存の小説モチーフを持ってくる、その窮屈さが伝わってきて良かった。
カフカフ、ボーンの方が読みやすい。でもこのサンドからは荒い、息たえだえの肉体が感じられた。ということで投票します。
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