第256期予選時の投票状況です。3人より7票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
5 | さくさくしてて。ずるずるしてて。 | なこのたいばん | 2 |
6 | 絶対に、言葉を売ってはいけません | euReka | 2 |
7 | 叫び | たなかなつみ | 2 |
2 | プレゼント(裏) | 柴野 弘志 | 1 |
冷めて乾いているようで、『父』が染み出した蕎麦を食べられなくて、父を拒絶していると気づく一コマ。
タイトルや引越し蕎麦、海老天蕎麦が、心情を表していて、とてもうまいと思った。(この票の参照用リンク)
話の構成として描きたいことは分かりますが、子どもは状況に敏感なものですし、もっと追い詰められた気分になるものに思えます。そこから逃れようと、無理矢理”日常にありふれたちょっとした不幸”と思い込もうとしたり、意識を特々上天ざるに向けていたのかもしれませんが…。殺伐とした状況をさらっと描いたのは作者の筆力と思います。(この票の参照用リンク)
あらゆるものが資本主義の俎上に載せられて金を動かしていく。それは素晴らしいことのように、どうしょうもない現実への唯一の対策のように現れて、やがて自分自身を含む自由が奪われていく、という現在の世界のイメージを喚起させる。とても寓話っぽい。
1万円を捨てる主人公、プライベートな空間に暴力的に表れる人々、かつての不自由の象徴のような刑務所より不自由な現実。全てが示唆的だ。無茶苦茶のようでちゃんとしてるな、という印象がした。(この票の参照用リンク)
押し売りは通報できますし、連絡なく規定を変更されても従う必要はありませんが、それができない暗黒社会に今後、日本も世界も堕ちる可能性があるのが恐ろしいですね。末尾の一文も心に留めておくべき大事な言葉でしょう。
『矢場』は、矢場町は愛知県名古屋市の地名である一方、矢場川が栃木県・群馬県の県境を流れていることで、その双方に関連地名がありますが、本作はそれとは一切関連がありませんね。Google翻訳によると、繁体字では「[口艾]呀(アイヤー)!我錯認成羽田機場和成田機場混了!」、成・羽・場がさらに混乱してきますね。
『パパのおかげ!』は、小さく狭く、すきま風まで吹き込む賃貸住宅に住む家庭がおびただしい種類の生き物を飼育するのは難しそうに感じてしまいました。また、少女の母親はきちんとした人のようでしたし、飽きたからという理由で次の動物の飼育を始めることは認めなかったでしょう。
『水曜日の霜降り』は相変わらず、実在人物への配慮が不足しているように思われました。該当人物を想起させる似た名前を用いてもじゅうぶん作品は成立するはずです。
『叫び』は…、すみません、やっぱり分かりませんでした。(この票の参照用リンク)
ある程度、歳を取ってしまった人の心情ってこういうものかもしれないなと思う。
それを作者独自の感覚で言語化したのがこの作品で、詩のような物語のような、よく分からない表現に少し魅力を感じる。(この票の参照用リンク)
抽象的な語り手の心象世界だけなので、作品全体が靄の中にあるようだ。語り手も、そんな霧の中でしんどく生きている状態で語ったらそんな風になるのは仕方がないだろうから、責めるのは可愛そうだ。
初読では勘違いしていたが、声は二つあり、一つは同調圧力や常識などの誘惑・拒絶の声と、そんな世界を知らずに夢を見ていた自分の声。どちらも声でわかりにくい。叫んでいたのは後者か。(この票の参照用リンク)
前作、『プレゼント』を読んだ方が楽しめるので、逆にそういう作品を推すことに躊躇はしたのですが、でも今期は本作を超える作品はありませんでした。男性の想いや、時間に追われて切羽詰まり、また、うろたえるあまり奇行に走る状況が目に浮かび、微笑ましかったです。(この票の参照用リンク)