全投票一覧(日時順)
第239期決勝時の投票状況です。5票を頂きました。
2022年9月7日 0時5分25秒
- 推薦作品
- 立てば芍薬(朝飯抜太郎)
- 感想
- 芍薬とミュージックで大変悩んだ。
『ミュージック』は何よりもやはり音の表現に惹かれた。ほとんど説明的にならず、イメージを喚起しやすくかつ盛り上がる描写をあれだけ書けるのは尊敬する。その後に繋がるラストはありがちではあるが、ひき込まれた放課後から鮮やかに離陸していくような読後感があってこれも良かった。強いて言えば「サビ。」は個人的に不要、またはもう少し違う書き方があったかも知れないと思った。
『立てば芍薬』は凝った表現はないが、構成と文の運びに無駄がないのでとても洗練された文章に思える。牡丹がないのも意図的な余白のように感じられた。また、簡明な文体から主人公の背景、性格、価値観といった人物像が浮かび上がって来、読んでいて楽しかった。〆も大変ほっこりする。
『日々是山崎』は上2作品ほど推すポイントはなかったが、上手いしニヤニヤしながら読んだ。確かに都会でデイリーヤマザキに遭遇すると「(あっ……)」となることはある。お役所仕事のリアル加減もよかった。どちらも酷い言われようだが、どことなく作者の愛を感じるネタ具合なので悪い印象はなかった。
『朝が来る』は1000文字を描写で埋めた。埋まったは良いがそれで満足してしまったので、緩急や読者への導入といった工夫ができていない。語彙や文のレパートリーにも力不足を感じる。ちなみにこの蝶は俗にゼフィルスと呼ばれる蝶の一種で美しいです。(この票の参照用リンク)
2022年9月6日 12時59分48秒
- 推薦作品
- 立てば芍薬(朝飯抜太郎)
- 感想
- #8
面白かった。DY補助金について裏があるなど発展するかと思いきや、「かわいそうだから」という理由のみでそれが受け入れられてしまうお役所感とか、いやそれはないでしょと言いきれない妙なリアルさがある。基本的に一つのことしか書かれていないので、ちょっと中だるみというか、くどさがあるのが気になった。ただその中だるみも妙なリアルに繋がっているような気もするので、好みの問題かもしれない。
#10
今期、描写力と描かれる光景の美しさで最も優れている作品。読めば読むほどに美しいな、いいなと思う。
ただこれは読む側の問題かもしれないが、読みながら目が滑る、光景が文体に埋もれるようにも感じた。美しいイメージが、読後に思い返してみるとなぜか焦点を結ばない。読み手への導入としてメインである蝶にもっと寄せるか、緩急をつけるなどしてみてはどうか。
#4
共感覚を持つ人物に語らせることで、独自の世界を体感でき、さらにそれを通じて感情の動きが描かれている点がよい。
印象的なイメージを示し、説明を入れつつ「芍薬は珍しかった」と振り返る流れがうますぎる。ラストは初読時は弱いように感じたが、陳腐さから年齢相応の青さを描きつつ、さらに花の記録に花ではないことを記すという行為が彼の心情を如実に表していて、再読して妙にドキドキしてしまった。
というわけで最も心を動かされた本作に票を投じる。(この票の参照用リンク)
2022年9月6日 3時19分47秒
- 推薦作品
- ミュージック(Y.田中 崖)
- 感想
- いちばん遠いところへ連れていってくれた本作を今回は推します。風景描写は語り手が音楽を通して見たもので現実のものではなく、
だからこそ、立ち上がってくる風景の向こうに、音楽と、それを通して語り手が感じた生のままの興奮のようなものを、
わたしも同じく感じられたように思います。語り手が小さな存在になって、見えるものが変化するところがすごく好きです。(この票の参照用リンク)
2022年9月5日 23時36分43秒
- 推薦作品
- ミュージック(Y.田中 崖)
- 感想
- 再読して、一番心地よかった。音楽のPVのように映像が再生される。その世界に浸るように読んだ。
視覚的な情報の出し方が上手いのだと思った。あとリズム感。
初読時は、10年の長さにショックを受けた。あの放課後の幻のような一幕に人生を左右されてしまっていて、まだ道半ばであることにショックを受けたわけだけど、彼女(彼の可能性もあるか)はもう一度その場所に行くというより、彼女の歌を聞いた人を同じ場所に連れていくと考えていて、そんな魔法のような領域にに10年で行けるというのも虫が良すぎるかと思いなおした。そして彼女(彼)はそこを目指していて、いつか行くかもしれないと思うと、とても希望のある終わり方だなと感じた。
偶然だろうが、「音が橙色をしている」というのも共感覚を感じさせ(そのあとの現象で状況は変わるが)、舞台が学校ということもあって『立てば芍薬』との類似性を感じた。
『日々是山崎』は好きだが、デイリーヤマザキを貶める共通認識に共感を得にくいというのがあった。何かでバランスをとってほしかった。『朝が来る』の表現の幅というか美しさは群を抜いて良かった。(この票の参照用リンク)
2022年9月5日 10時27分14秒
- 推薦作品
- 立てば芍薬(朝飯抜太郎)
- 感想
- やはり本作が一番で、微笑ましくて青春が感じさせられました。共感覚には様々なものがあり、最も多い、音に色を感じるものの他に、言葉に味を感じたり、他人の感情に色を感じるものもあるようですね。
『ミュージック』も感性が映像化されたという点では、共感覚に近いものがあるのかもしれませんね。その感覚が十年の間、二度と得られなかったことは、その感覚の脆さも表しているのかも、とも感じました。
『日々是山崎』はシュールさがウリの一作なので、あまり考え込まずに読むのがいいのでしょうけど、少数派が、同情という名の”上から目線”で見られている感じは、やや受け入れがたく感じました。(この票の参照用リンク)
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