第239期決勝時の、#9ミュージック(Y.田中 崖)への投票です(2票)。
いちばん遠いところへ連れていってくれた本作を今回は推します。風景描写は語り手が音楽を通して見たもので現実のものではなく、
だからこそ、立ち上がってくる風景の向こうに、音楽と、それを通して語り手が感じた生のままの興奮のようなものを、
わたしも同じく感じられたように思います。語り手が小さな存在になって、見えるものが変化するところがすごく好きです。
参照用リンク: #date20220906-031947
再読して、一番心地よかった。音楽のPVのように映像が再生される。その世界に浸るように読んだ。
視覚的な情報の出し方が上手いのだと思った。あとリズム感。
初読時は、10年の長さにショックを受けた。あの放課後の幻のような一幕に人生を左右されてしまっていて、まだ道半ばであることにショックを受けたわけだけど、彼女(彼の可能性もあるか)はもう一度その場所に行くというより、彼女の歌を聞いた人を同じ場所に連れていくと考えていて、そんな魔法のような領域にに10年で行けるというのも虫が良すぎるかと思いなおした。そして彼女(彼)はそこを目指していて、いつか行くかもしれないと思うと、とても希望のある終わり方だなと感じた。
偶然だろうが、「音が橙色をしている」というのも共感覚を感じさせ(そのあとの現象で状況は変わるが)、舞台が学校ということもあって『立てば芍薬』との類似性を感じた。
『日々是山崎』は好きだが、デイリーヤマザキを貶める共通認識に共感を得にくいというのがあった。何かでバランスをとってほしかった。『朝が来る』の表現の幅というか美しさは群を抜いて良かった。
参照用リンク: #date20220905-233643