第175期決勝時の投票状況です。5票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
7 | そうじゃくなて | わがまま娘 | 3 |
9 | 部屋 | euReka | 1 |
- | なし | 1 |
めちゃくちゃ評価できる作品が今回あったとは思わない。
前回、前々回と安定して作品を発表している作家の安定した作品が上位に並び、まぁ、妥当な状況だなぁといったところが今回の総評となる。
「部屋」は構成もしっかりとしていて、読み物、娯楽として面白い作品だと思った。裏を返せば構造に不備がない分、パターン化した作品創作の過程のようなものをどうしても感じてしまう。どうしたら作品が面白くなるのかといったセオリーや、テキストのようなものを作家が意識的か無意識的かは別として取り入れているのは分かる。それを踏まえた上で尚、娯楽として楽しいものを創作していることには感嘆している。
「そうじゃなくて」には作家の一皮むけた感覚を感じている。取り憑かれていたものを捨てることに成功して、フランクな姿勢が見え隠れするといった表現が正しいのかどうか、分岐点は172期から始まったと推察する。それ以前の数作には小説を書いてやろうとする気概が見え隠れしているが、どうもこの作家にはそういった攻略姿勢はあまり似合わないように思う。作家本人はそんなこと微塵も思っていないかも知れないが、とらわれない澄んだ何かを取り込むことに成功したように思う。
「夜桜」は予選では入れなかった作品である。ある一定の評価を獲得できる作家であることは過去の票数で分かる。ただ、私には受け付けられない部分があるので、私の評価としては三作品の中では最下位になる。(この票の参照用リンク)
読めば読むほど、娘と母親との関係がどういうものだったのか、深読みしたくて仕方がなくなります。
その関係の機微を、家、および、荷物で描写されているのが、すごく巧みだと思います。
語り手の夫がかなり鈍感なタイプらしいのが見えるのも、語りの描写を引き立てていて、とても面白く読みました。(この票の参照用リンク)
この作品が面白いのは、妻の母の死という、本来ならシリアスにしたり心温まる話にするような題材を、家の重量バランスがおかしいという話にしているところ。そして母を失った本人(妻)の視点ではなく、その配偶者(夫)の視点から客観的に描かれているのも面白い。妻の心境をあれこれ説明することなく、起きた出来事をただ客観的に伝えることで、読み手に、物語の奥に流れているものを想像させている。(euReka)(この票の参照用リンク)
今期は全体的にパンチが足りない印象でした。落ち着いてて丁寧な作品が多いけど、こぢんまりと収まっちゃってるというか。
描写のよさと好みで#5かなーと思っていたのですが残念。決勝の三作品では、特に#7と#9が同じくらいで決められないので不本意ではありますが、なしとします。
#7
背景を見せるのがうまい。それだけに「どっと疲れた」で締めるのが勿体ない。関係ないけどタイトルの誤字にいま気づきました。
#9
完成度なら一番、だからつい厳しい読み方をしてしまう。鮮烈なイメージがほしい。
#10
予選で票を投じたのに再読したら冒頭の蘊蓄とか、昔の女の描写が鼻につく不思議。(この票の参照用リンク)
決勝投票「部屋」
予選で票入れして決勝に残ったのは「部屋」と「夜桜」
感想で書いた通り、「夜桜」はタイトルを微妙に感じ、部屋には納得いく読後感があったので、
「部屋」に投票します。(この票の参照用リンク)