第170期決勝時の投票状況です。4票を頂きました。
# | 題名 | 作者 | 得票数 |
---|---|---|---|
15 | 草むら | euReka | 2 |
9 | 満腹王子、空腹になる | qbc | 1 |
11 | 鏡 | 宇加谷 研一郎 | 1 |
#9
Doは面白いけれど残らないタイプの話。挙げ足取りだけど「翌朝は午後に目覚め〜昼前になると」はおかしいのでは。全体的に作者らしくないな、と思った。狙ってやっているのかもしれない。
#11
最近ようやく作風が見えてきて、なるほどこういう路線ですねと思った。こちらは作者らしさが表れすぎていて、逆に引っかかってくる部分が少ない。
#15
時間。彼女との別れと知り得ない未来。登場人物にはどうすることもできない設定が、寂しさを誘発させ想像をかきたてる装置としてとてもうまく機能している。かっちりしすぎている感はあるが優れていると思う。(この票の参照用リンク)
正確なデッサンであっても好きになれない作品というものがある。上手い、よく描けている、でも私は好きではない。といった鑑賞者目線で作品は存在する。具体的な善し悪しを解説されても自身の洞察に揺らぎはないものと信じたい。そんなことを考えて、でも別の感想を読むとこの作品はそういう意図で解釈できるのか、と揺らぐこともある。
さて、今作に関して
「満腹王子、空腹になる」にはどうしても好きではないという自身の根底が存在した。「作者らしくない」「どうも現実味がない」というのが理由である。作者の持つ「会話の妙」はなく、とにかく何かが違うという感覚が付きまとう作品なのである。
「鏡」については説明的過ぎるという面はあるが、娯楽性もあり、何より小難しくなくて良いと思った。たぶん、音楽やコーヒーが出ていたら私はこれほど評価しなかったはずである。じゃあ、この作品がベストかといったら、それも違うのであるが。
「草むら」には前作同様、出発点から続く着地点ではなく、別の地点に着地したかと思えばそこからさらに飛躍するといった浮遊感が存在していた。ストーリーがどうのこうのより、この浮遊感が読者を導き、はぐらかせ、惑わせ、興奮させる要素になっていると私は考えている。というか、私は素直にこれに興奮した。(この票の参照用リンク)
「#11 鏡」と比べると、こちらのほうがずっと完成度が高いと思うので一票。完成度が高いというのは、文章や構成がよく練られているということだが、ようするに読み手に伝わるように書けているということだろう。主観的なアイデアや思いを表現しつつ、内容を客観的に、ちゃんと伝わるように書くというのは大変な作業だ。それに、そのことを上手く行うには経験やセンスも必要だろう。この作者は、今回の参加者の中では一番完成度を高めることに長けていると思う。(euReka)(この票の参照用リンク)
どの作品もとても面白かったので、とても悩みましたが、
個と鏡というテーマ性が綺麗に描かれていたこの作品を推したいと思います。
「自身」というのはどこまでなのか、どの部分をとってそれを「自身」だと思い、それが「自身の一部」だと思えるのか。
いろいろ考えながら楽しく読み進められました。(この票の参照用リンク)