全投票一覧(日時順)
第116期決勝時の投票状況です。10票を頂きました。
2012年6月8日 23時57分25秒
- 推薦作品
- しき(Y.田中 崖)
- 感想
- 「雨」は、母を姓で呼ぶのは何故だろうというところでひっかかり、今ひとつよく分からないまま読み終えてしまいました。
「ぷつり」も読み応えあったのですが、好みでより虚構的な「しき」を推します。(この票の参照用リンク)
2012年6月8日 22時56分36秒
- 推薦作品
- 雨(わら)
- 感想
- 12 しき Y.田中 崖
つい最近、市川春子作品集を読んだ。人外に対するスタンスが近しいなと思った。軽快さに重たい石を孕んだような言語感覚は、さすがに決勝に残るだけあってうまいと素直に思えるのだが、言葉や物語からはみ出すものが感じられなかった。作者の思いなんて異臭のようなもので、あんまりきついと煙たがられるが、無味無臭よりはあった方がいい。いい文章を読んだ気にはなったけど、小説を読んだ気がしなかった。たぶん俺には小奇麗過ぎるのだ。
14 ぷつり 伊吹羊迷
他二作と比べると作者の思いはよく見える。記憶に新しい悲惨な事故をどうしても思い起こさずにはいられないんだけど、リアルを追求するのならなんで単独事故なんかにしたんだろうと思う。単独事故で即死ってなら、それなりの疑問を持てよ、と、お前のカミさんに問題あったんだよ、と。バスが居眠り運転で壁に衝突したり、癲癇起こしたり無免許だったり脱法ハーブでラリッた末に小学生の列に突っ込んだりしなければ思考停止なのですか、と。
まあ主眼はそこになく、むしろ怨みを向ける先さえない場合というのをシミュレーションしているのだろうが、それ、小説にしなけりゃだめなのかと思うと厭になる。なんてことをくっちゃべると「どうせお前だって家族が死んだらこんなもんだろう」って批判されるだろうが、まあまあちょっと待てガキ大将。
個人的な持論として、現実で感じえるものは小説で書く意味ないと思うのよ。ましてや現実にありげな話に乗せてさ、なに実際にありそうだから感情移入しやすい? だったら週刊誌眺めてたほうがよっぽど怖ろしいし楽しいよ。嘘か本当かの割合でいったら小説と大して変わんないし。ま、そんなことはよしとして。
フィクションがリアルに勝れないってのは3.11でまず最初に感じた絶望なのかもしれない。だからこそ数多の作家は、フィクションだからできることってのを模索し続けている。そんな折、フィクションの中に(表面的でも)リアルな作品を投入するってんなら、リアル以上に胸を抉るような“事実”を載せてもらわなきゃ、それ御伽噺よりチープですよ。どうせ現実にこういうことあるよねーってのをパロッてるだけですよ。知らんけど。
「私の生きる世界は意味をなくした」とか「でも何か、何かが足りないのだ」ってそれわざわざ言うの?ってコメカミがうずうずしちゃうし、「三週間が経った」、「何年も経った」とかそんな簡単なこっちゃねえだろうって思うんだよね。もちろん文字数が少ないんで書き込めることも限定されてくるだろうけど、だったら余白を愉しませてよっていう。
言っちまえば、悲劇なんてのは現実に起こるべくして起こる。そんなときの人間の在り方を実況されたって得るものはナッシング。どうしてもやりたきゃ、それでも乗り越えるんだってところを見せてこそ小説でしょ。フィクションの有り難味でしょう。それをやれ時間が解決してくれました的な感じで、だけれどやっぱり心は空虚です、ってそれで死んだ奥さんと娘さんは喜ぶのかって話ですよ。
結局この主人公はね、自分のことしか考えてないんですよ。何一つ事故の瞬間の妻子の気持ちとか考えないんですよ。そのくせ布団だの枕だの妻子の遺物にすがり付いて、まー気持ち悪い。悲しませる気あるのかな、と。
主人公目線の物語だからとか理屈こねくり回したってね、最後ぐらいは正面きって受け止めろよ。教科書どおりにするなら「死んでからまもなくは自分のことしか考えられなかったけど、時間が経っていま、どれほど怖ろしかったか二人の気持ちを振り返れるようになった。もうお父さんは大丈夫、二人がいなくてもやっていけるよ」ぐらい言えバカたれ。そんで吹っ切れて家族の死を乗り越えて、それまでどおりの暮らしに戻ったはいいけれどやっぱり「何かが足りない」んなら話は分かるってものだよ。そういう葛藤が人生、人の心っていうものでしょうっ! 違うのか! ん、違うのか……そうか、ならしょうがない。
13 雨 わら 2
いやぁなんか『ぷつり』の感想で精根尽き果てたようで、何にも書く気が起きないのですが。
本作は技術とか伝えたいこととか、そこら辺は他二作と比べるとすごく低いというか呆気ないというか、大したこと書いてないと思うんですよ、正直。雨の使い方もシャワーと呼応させている『しき』よりか手狭な感じは否めないし。
でもホテルでの義母との一幕から、ミクロキッズ的な蟻のメルヒェン、そんで最後は耄碌ジジイと少女の問答というサゲ。なんなんですか、これ。「その後はご存知の通りだ」って全然存じてないよっていう。でも面白い小説はどれかといったら、これでしょう。
難しいこと考えながら作品に対峙するのは作者だけで十分。読者は何も考えず作品に対峙できる作品がいい作品です。お前が言うなってな。まぁ知らんけど。
(楡井)(この票の参照用リンク)
2012年6月8日 0時11分27秒
- 推薦作品
- しき(Y.田中 崖)
- 感想
- 予選ではわらさんの「雨」を選んだかと思うのですが、この作品に今回はしました。描写に工夫の跡がうかがえるかと思いました。(この票の参照用リンク)
2012年6月7日 22時25分8秒
- 推薦作品
- 雨(わら)
- 感想
- 12 しき Y.田中 崖 5 ○
あれこれ注文したくなるところがあるからには、もうちょっとの作品なんだろうなと思った。
意味の通りやすい短いセンテンス。「夕立」の最初と最後のリフレーン。四季に合わせた構成。水や、土や、枯葉、ダンゴムシ、ワードもちゃんとお行儀よく守られてる。そういうところは素直でいいなと思う。けど。
言葉を、なんだかちゃんとした意味のある物として考えている人もいるのだけれど、言葉なんて、音の連続なだけ。音の連続を他人同士が符牒として使っているだけであって、特段それに意味があるわけじゃない、ひじょーにチープな道具。その「言葉」を使うにあたり、この作品は読者を意識して丁寧に丁寧に作られてるのだけど、注文というのは、この作品の総体が、読者に対して、最終的にどう決着、どう理解させるのか、ってゆーインテンシブに欠けてて、そこなんとかしたほうが良かったんじゃないのか、ということ。
書き方のひとつに、鳴らすべき一音だけ鳴らさずに、無音でもってその鳴らすべきリマーカブルな一音を読者に聞かせる、むしろ無音であるからこそ妄想の倍々ゲームにのっかって、無限の広がりを持たせる、ってゆーのがある。そのラインをなぞって考えると、この作品は、最後の一音の三つ手前くらいで留まってしまった感じ。あと二歩か三歩近づけば良かったのにって思う。
とはいえ、これはもー個人的な人間観の違いなのかもしれないなーってのは思うのだけど。「首筋は土の匂い」「彼女に花が咲けばいい」から、「雨が頬を伝った。」に関して、私としてはどーも弱い感じがしてならないと思う。中心に対して一定距離を保ってぐるぐるぐるぐる回る事は、面白いし、長いことかけてしたためて、それが描いた軌跡を振り返ってみて眺めるのもたいへん面白い。けど、ドスってゆーよーな衝撃がなくて。結論、眺めてるだけ、あーきれいだなうまいな、って感じに終わってるところがなんか歯がゆいのかもしれない。
それでも気にかかるのは、うまさってゆーののほかに、ドスっっていうのがいちおう、順番の技術によって、「私、しんでるの?」って一言によってそれまでのまさかそんなね、って前提をきちんとちゃんと食い破ってくれてるからかもしれない。
13 雨 わら 4 ○
クリシェ連発でどうも最初気にならなかったのだけど、決勝に残ったのをちゃんと読んだら読むところもあった。
常套句が嫌われるのは、言葉が記録に残るようになってからのことらしいけど、例えば「今にも泣き出しそうな曇り空」とか、ジェーポップかよとか思うし、こーいったものを陳腐だなって思う心性がまー私にはあって、それは、詩情とはどこから来るのといえば、それは普段使いではない普段使いの言葉の連なりから生まれる、よーするに「赤いオレンジ」だとか「電気街じみた鏡」みたいな作り方で生まれて、で、だからクリシェは詩情を催させないし、またこの作品はエピソード自体も成れ下がったクリシェを使ってるから、なおのこと腐臭がしてる。
でも、ぜんぜんちぐはぐなエピソード同士をならべたことによって詩情が、生まれてるんだよなって思った。これはどっちかってゆーと映画的な手法なのかなと思った。ロバート・アルトマンの映画観てる感覚に近いのかもしれない。私も真似したことはあるが、書いてる人の素地が違うからだろうけど、ぜんぜん似てないけど似てる作品を私も短編に投稿はしたことあって、まー関係ない関係ない。
みっつのエピソードがある。どれも、「あの日、何かあったクチじゃないのかい」って言葉で集約される内容で、それもそもそもクリシェだが、とゆーかなんかクリシェって書きたいだけみたいな文章だけど、でもクリシェはゆっててきもちいー言葉だけど、でもその「あの日、何かあったクチじゃないのかい」ってゆーのはなんだか情けない感じがして、かわいらしげで、そこが良かった。
つつみくらましながら、文章の向こう側にそーゆーいたいたしさがほの見えている、人間っぽさが感じられて良かった。
ただ、そーするとさっきの「しき」ってゆーのにも向こう側に作品をちくちくと構築している姿はほの見えて、楽しいんだけど、いやいやまあまあ、単純に人の苦しむ姿のほーがおもしろい、そーゆー姿を眺めてみてーってゆー感情が私自身に強いのかもねえ、って。そんなことを、そうゆうふうに思った。
14 ぷつり 伊吹羊迷 4 ○
犬の話もそうだったけど、こーゆーテーゼと言うか、イデオローグじみたとゆーか、倫理説明神話とゆーか、そーゆーのをすぐやろうとするのはまあ、言葉の使い方としては間違ってはないのかもしれないのかもしれないのだけど。私はこーゆーのを書いた後に、こーゆーの、実際私も信じたいくらいには常識的なモノサシはあるんだけれども、ラスト一行で、ごめんやっぱうそでしたー、って書きたくなる、挿れたくなる。全体として好まれやすく、嫌がられにくく、正しさにみちあふれているようで、それが物語として嘘として構築されているだけに、まさかそんなな、おい、そんなことばっかりじゃないだろう、冷厳な現実様はさ、って思う。そーゆー意味では、ぱっと咲いてぱっと散る桜を眺める趣味と同じなんだろーなと。同じアホならおどらにゃそんそん、てすばらしいことだなと思う。まー道義的な話にはこーゆー解釈はあまりしたがらない、大事なことは汚されたくない何か反射的な防御が働くんだけれども。
構造、言葉づかい、とゆうのは上手だなって思った。けど、虚無ってこんなもんじゃないのだろうよ、とも思う。ああでもうまい。時間の経過のための「惣菜」とか、「机の上のチョコチップクッキー」の体言止めとか、ちゃんとやってる。こーゆー小道具やいわゆる学校の教科書レベルの効果をちゃんと使えてると思う。だいたい、いちおー、義務教育でちゃんと「体言止め」とかくらい教えてんじゃん使えよ、ってことくらいも実作で応用きかない人多いから、そーゆーの考えてこーやって長々感想書いてるのにいつまでたっても進歩しないわからんちんな人もいるんだけど、まー、ゆーとー生的にうまい。でも一点、私が知らないので、こーゆー事故の時も包帯巻くのかなって思った。あと、落ちて上がる、けどでもそれでも痛みがあって、また落ちて上がろーってゆーのは基礎的な知識として小説書く人は覚えてもらいたいと思う。さいきんのマンガなんてすげー研究されててめっちゃ構造見えるのに、なんでそれおべんきょーしねーんだよっていっつも思ってるよ。真似じゃなくて、理解して使うってことをしないと。
「虚無」ってゆー観点で最後まとめると、決勝3作品ではいちばんキョムってたのは「雨」だった。大戦後の日本文学にも虚無感があったらしーけど、私あんまり邦作は読まないんで、ってゆーか邦作て言葉ないけど、ドイツの戦後文学とか読んでて、あーなんもないなって思ったことはある。そもそも、現実を言葉で盛ってるのが人間の世界観なんだろなって。そ・ゆ・意味では「しき」がすげー趣味炸裂でじゅーじつしてたね今月は。「なし」にしよーって思ったけど「雨」は空虚な感じをむりやりおしこめようと記憶の残滓みたいなのを辛い状態の中で再構成してる、その感情を言葉でなんとかかろうじて操作したいって感覚をおぼろげに受け取れたから、「雨」。(この票の参照用リンク)
2012年6月6日 2時47分8秒
- 推薦作品
- ぷつり(伊吹羊迷)
- 感想
- 丁寧な描写に。
ひとつのテーマについてぶれることなく、細部まで描写することで心情に迫る、というお手本のような作品だと思います。(この票の参照用リンク)
2012年6月5日 23時11分47秒
- 推薦作品
- しき(Y.田中 崖)
- 感想
- 今期は最後の3つが決勝入りしたのが面白かったです。
最近はどうも後ろの作品が決勝入りすることが多い気がします。上から順番に読んでいくと最後の方が印象に残りやすんでしょうか。下から読んでいく人はきっと少数派でしょう。
「しき」は情景の描き方がきちんとしているのがよかったです。ラストは予想の範囲内だけど文句なし。
「雨」はくすりと笑える。笑えるんだけど、最後の節はなんで入れたの、とそんなとこばかりが気になります。無関係に締めるのならもっと短い方がよかったんじゃないでしょうか。
「ぷつり」はテクニックがあるなと。悲しいという言葉をまったく使わずに、悲しんでいる男を表現したのは、やるなあと思いました。でもなぜか感情移入できません。街中を歩いていたら、いきなり悲しんでいる人に出会ってあっけにとられた。そんな気分。それが作者の狙いだったらすみません。
そういうわけで、楽しめてかつ隙がなかった「しき」に投票。(この票の参照用リンク)
2012年6月4日 0時15分2秒
- 推薦作品
- しき(Y.田中 崖)
- 感想
- ♯12 しき
やっぱり好きなので。浴槽っていう閉じられた世界が良い。
♯13 雨
正直よくわかんなかったです。
楽しんで書いてるのが伝わったのは良かった。
♯14 ぷつり
文章は恙無く、上手いと思います。が、全体的にさらっと終わってしまった印象。
「妻と娘が死んで悲しい」のはわかるから、その先がどうなのかの部分でもっと広げられるんじゃないかなぁと思いました。(この票の参照用リンク)
2012年6月3日 22時35分55秒
- 推薦作品
- 雨(わら)
- 感想
- 今期は全体的にそうなんだけど、なんか若すぎて単純でつまらない。自分の書いた文章にうっとりしちゃってまあと思ってしまった。
でもそういうの、短編で受け入れられるようになったのかと新鮮な気もする。もうちょっとひねくれてもいいような気がするのだけど。
ということで、こちらが読んでて恥ずかしくならない作品を選びました。
もう他の二作品は背中がかゆい。素人の作品というのはやっぱり読んでて恥ずかしいと再認識。(この票の参照用リンク)
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