第6期 #18

お星さまを食べた話

  a


 街の片隅にひっそりとその料理屋はありました。
 ひっそりとあるにしてはずいぶんと盛況で、それというのもその店で出す料理を食べると幸福になれるというのです。
 街には、その店の料理を食べて幸福になったという人で一杯になりました。
 今では、評判を聞きつけ他所の街からもお客が来るくらいです。
 
 幸福の料理の秘訣は何か、皆、それを店主に聞きます。
 すると店主はいつも笑って
「お星さまですよ。うちの料理はお空にキラキラと輝くお星さまで作っているんです」
 と言うばかりでした。
 やがて、誰も店主に料理の秘訣を聞かなくなりました。
 食べれば幸福になれることは確かだったからです。

 ある時、
「毎日、お星さまを食わせていたら、今にお星さまがなくなってしまって困るんじゃないのかね?」
 と、言った人がいました。
 それに店主はこう答えました。
「大丈夫ですよ。お星さまを食べた人は、死んだ後、お空にのぼってお星さまになるのです」



  b


「とまぁ、そんな話なんだけどね」
「へぇ、でも星の味ってどんなものだろうね」
「コンペイトウの味とか」
「それはなぁ」
「えー豆腐とか」
「うーん」
「いも!」
「ああ、ちょっといもかもしれないね」
「そうだよ。いもだよ。いも」
「うんうん」

「肉の味よ」

「え?」

「肉の味。だって、お星さまは死んだ人間で出来ているんでしょう?」



Copyright © 2003 曠野反次郎 / 編集: 短編