第219期 #5

渇して井を穿つ

家族が寝静まったリビング。

テーブルの上の小皿、おにぎりが2つと卵焼き2つ。横には柴漬けが添えられている。
「夜食に食べてね。おにぎりはシャケとコンブです。」
夜食には多いだろババア。紙になった母と会話する。



空になった小皿をテーブルに残す。でっぷりした腹をさすり無意識に窓の外へ。親父のタバコに火をつける。

紫のため息が夜の黒、星の白と混ざり合う。
『天の川みたいだ。』
言いかけた自分の気持ち悪さに無精髭の端が少し角度を上げる。

窓を閉め階段を登る。でっぷりした腹がぷるんぷるんと揺れる。

ベッドの上にゴロンと転がる。左手にケータイを持つ。右手が股間に伸びかける。

ペンに持ち変える。





今日もまた夜が明ける。



Copyright © 2020 なこのたいばん / 編集: 短編