第173期 #8
三百年生きているという噂は本当ですかと私は言った。だいたい本当だと騎士団長は言った。竜を殺したんですかと私は言った。殺したと騎士団長は言った。そして、騎士団にようこそと言った。
私は小鬼を殺した。小鬼を殺すのは人を殺すのに似ていると人を殺したことのある団員が言った。人を殺したことがありますかと私は言った。あるよと騎士団長は言った。
騎士団長には子供が三十人いた。そのうち七名が存命で、王家の血筋の者もいた。その第二十九子が騎士団にいて、彼は小鬼を殺すのが好きだった。私は彼に好意を寄せていたから、一緒によく小鬼を殺した。
小鬼を殺すのは人を殺すのに似ていると騎士団長は言った。彼と私は騎士団を除名された。彼と私は小鬼を殺した。やがて人も殺した。
他国との戦争が起こり、彼と私は騎士団に復帰した。彼と私は人を殺した。騎士団長は三百人の男を殺した。
戦争が終わると彼と私は小鬼を殺さなくなった。人を殺した。極悪人だけでなく小悪党も殺した。悪人はどんどん少なくなっていった。悪人がいなくなって、北の山に竜が現れた。
騎士団を中心とした討伐隊が竜に立ち向かった。彼と私も立ち向かった。騎士団長も立ち向かった。三百人の男が殺され、騎士団長は胸を裂かれた。彼と私は騎士団長の血を浴びた。そして逃げ帰った。しかし帰り着く前に彼の体はただれてなくなってしまった。
生きていますかと私は言った。生きていると騎士団長は言った。
私たちは泉の畔に移った。泉には北の山の妖精が集った。妖精は私たちに竜を殺してくれと言った。竜は北の山を動かず、襲う者の他は殺さなかった。私たちは断った。やがて妖精は泉の妖精になった。
私たちは三百年、泉を離れなかった。私たちの本が書かれ、私たちはそこで多くの小鬼を殺し、多くの人を殺し、そして竜に殺された。竜はまだ北の山にいた。
私たちをおぼえているかと私たちは言った。おぼえていると竜は言った。私たちを殺すのと私たちに殺されるのとどちらがやさしいかと私たちは言った。どちらも難しいと竜は言った。私が死ねばお前たちも死ぬだろう。お前たちが死ねば私も死ぬだろう。私は死にたくないのだと竜は言った。
三百年はこれまでと何も変わらなかった。しかしその翌年、たくさんの人が竜を殺すために騎士団長を殺しにきた。騎士団長は死に、竜も死んだ。私は人を殺した。たくさん殺したが、悪人はいなくならなかった。