第173期 #7

朱に染まれ試みろ

 地方活性の案はこれでなかなか出てこないのだった。どこかの自治体がキムチを特産品に仕立て上げたくらいのことはできるのかも知れない。そう思って集まった実行委員会なのだが、そうそう人が集まる案など出てくるはずもない。大体誰に集まってほしいのか、その所からずれている。商売っ気がないといえばそれまでなのだが、客が誰なのか、ターゲットが絞り切れてない。
 「トマト祭りは? どうでしょう」
 近くの大学から研修だと称して二回に一回くらいのペースで会合に参加している女子大生が発言する。
 「スペインでありますよね、トマト祭り。ここもトマトが名産なので、できるのではないでしょうか」
 ほお、トマト祭り。ほお。ほお。テレビで見たことあるな。などと抜かすじじいどもにほめそやされて照れ笑い、小鼻膨らませてドヤ顔している女子大生に俺は今すぐ熟れたトマトを全力でぶつけたい。はあ? 何言ってんだよ。つやっつやのショートカット目掛けてサイドスローでぶつけたい。こいつは日に当てられた腐ったトマトの臭い嗅いだことあんのかよ。彼女の顔にへばりついたトマトの分泌液と種とを間髪入れず嘗め回したい。大体誰が掃除すんだよそれ。首から滴り落ちた朱色の液体で濡れた乳あてを捲ってその下で鳥肌を立てた乳房に種を塗りたくりたい。こいつは親にものを粗末にするなとか教わらなかったのか。もう一個。真っ赤でもないじゅるじゅるのトマトを下腹部に押し付け、そのまま下に移動させ、でも二個目のトマトは暖かいので鳥肌は立たせず、陰部で毅然としずくになって一渡り汚したその直後に吸い取りたい。「COLOR ME RADみたいー」「マジでそう!」「ねー、お土産にこんなたくさんのトマトもらったよー」「ねー、このTシャツ、いい感じに模様になってない?」「でもくさーい(笑)」「うちらの思い出だよね」パチリ。#卒業#思い出#友人#トマト#トマト祭り#スペインハッシュタグハッシュタグハッシュタグ

 ワーキングランチ。まあ雑談だべさな。ばばあどもが朝早くから起きてこさえた、マーガリンたくさん塗ったチーズとトマトのサンドイッチをつまみ、女子大生は小刻みにうなずきながらまた一口。新鮮なトマトが口の端からはみ出して種。。。。。



Copyright © 2017 テックスロー / 編集: 短編