第161期 #2

金平糖と僕達

彼女、優香の家は裕福だ。彼女の家にお邪魔した時には、最低でもお菓子は3種類以上出され、澄まし顔の小さなお菓子がお洒落な器に並べられている。

と、ここまで述べたが、別に僕は、彼女の家を批評したい訳ではない。ただ、説明する必要に駆られて、客観的に説明しただけである。何が僕をそうさせたのか、それは、瓶に入れられた金平糖、もとい、それを差しだしている優香である。僕は、優香が何故、微笑んで金平糖を差し出しているのかがわからず、普段との落差に混乱していた。たまたま、家に他のお菓子がなく、瓶に入れたまま出した、というのは一つの可能性である。だが、普段の様子から察するに、彼女の家において、その選択肢は除外されるだろう。

いつまでも黙っている訳にもいかないので、食べても良いのか尋ねると、彼女は、瓶を高く持ち上げた。どういうことだろう、食べてはいけないのだろうか、なら何故僕に金平糖を見せたのだろう。彼女の意図を探ろうと、彼女の顔を見つめていると、彼女は、どこを見ているの、ちゃんと見てよ、と言う。取り敢えず金平糖の底を眺めると、何も言われなかったので、彼女は底を眺めてほしいのだろう。なるほど、全くもって意味がわからない。

すると、彼女は突然、瓶の底を哀れむ様に見つめながら、ねぇ、悲しいよね、耐えきれなかったんだ、と言った。何を耐えられなかったのか尋ねると、彼女は瓶の底を指差して言った。ここ、見て、灰になってる。あんなに鮮やかに、一粒一粒違った色をしていたのに、今じゃ、重さに耐えられずに灰になっちゃった。それを聞いて、僕は、でも、味は全部同じだろう、見た目だけで、後は全部同じはずだ、と反論した。彼女は、特に反論もせず、そうだね、そうかもしれないね、と言った。

しばらくして、僕等はまた会話を始めた。ねぇ、1番透けない色ってなんだと思う、そう尋ねられたので、僕は、黒じゃないのか、と答えた。すると、彼女は少し寂しそうに、ううん、違うの、白だよ、と言った。ねぇ、地面から手が離れた頃は、私達、たぶん真っ白だったんだよ、と、彼女は続けて言う。なのに、いつの間にか、半透明になっていって、今では透明になっちゃった。最も透過性の低い、主張が強くて、染まりやすい色から、最も周りを映す、自分がない、染まる以前に染められるものがない色へ。そう言った彼女は、哀れみと同時に、嫉妬を覗かせながら、金平糖を見つめていた。



Copyright © 2016 風花 立花 / 編集: 短編