仮掲示板

私が敬愛する某アマチュア作家様に捧げて

 化けの皮剥いじゃいましょう。丁寧語も疲れた。
 もう、もう何も分からない。
 読者がいなくてもいいって? 分かってくれなくてもいいって?
 何故だ、何故、そんなに勇気がある?
 俺は嫌だ。なぜなら、俺は死ぬからだ。
 死んだら、どうなるんだろうな。いや、哲学したいわけじゃあない。俺が気になるのは、俺の小説の行方だ。燃やされるかな? 
 俺は究極、これを燃やすために焼却炉にもっていく前にちょっと目を通してくれる人間のことを考える。それまでの経路も大事だが、一番俺の小説エネルギーの根源をなすのはその人だ。その人に、わかってもらいたいと思う。
 でも、その人がもし、俺の小説が分からなかったら? 俺はこれが最も恐ろしい。なぜかは分からん。ただただ恐怖を覚え、その人に分かってもらいたいがために、それまでの経路にいるはずの人間にも分かってもらう。
 そう考えてみると、それだけで狂喜乱舞してしまいそうになる賞の授与も、最後の人が俺の小説を開ける可能性を上げる一手段にしか過ぎないんだよなあ。
 時代がついてきてくれる? 何でそんなことがあろうか。そうならない可能性のほうが高いはずだ。違うか? よくそういう風な口を利く批評家がいるが、俺は思う「たまたまだ」
 俺はそのたまたまに頼っている時間はない。死期はすぐそこまで来ている。焼却炉が、口をあけて待っている。早く、早く・・・・・・。
 焼却炉の人に頼みたいことは一つ。どうか、焼かないで下さい。
 焼かないで、私が死んだ後も残してください。
 その願いが通った人間というのが、後に文豪と呼ばれるようになる。彼らは未だに生きつづけている。今の時代の読者によって、生かされている。だが文豪になれなかったほとんどの紙が、焼き捨てられる。
 お前らも俺も、今のままだと焼却炉行きだ。恐ろしくないか? 俺は恐ろしい。一部の人間にしかわかってもらえぬまま自分の世界が喪に服される日が来るのが、怖くて怖くてたまらない。俺は生きつづけたい。
 分からんわな、こんな異常な生存欲は。たぶんビョーキ。それに俺、こんなこと言ってるのに本読むの嫌いなんだ。好きなのは、文章の並びを目でたどること。それで内容が分からないのが。駄目作品だと勝手にしている駄目人間。
 だから、いい。ただ、俺と同じ恐怖症の奴がいたら聞いて欲しい。お前を救えるのは、賞を取ったくらいで狂喜乱舞してしまう作家じゃない。小説すら書けない、無才の読者様だ。
 一歩外に出たら、お前の作品を読んでくれる読者様はいっぱいいるぞ。だから絶望するな。頼む。
 これでいいでしょうか。私の敬愛するあなたの気持ちを、少しでも代弁できたでしょうか・・・・・・。

Re:私が敬愛する某アマチュア作家様に捧げて

〉 文豪になれなかったほとんどの紙が、焼き捨てられる。
〉 お前らも俺も、今のままだと焼却炉行きだ。恐ろしくないか? 俺は恐ろしい。一部の人間にしかわかってもらえぬまま自分の世界が喪に服される日が来るのが、怖くて怖くてたまらない。俺は生きつづけたい。
〉 分からんわな、こんな異常な生存欲は。たぶんビョーキ。

世の中の多くの一般人からみれば「異常」であり「ビョーキ」でしょう。でも、おそらくそういう意味では小説家(あるいは芸術家)のほとんどはもっと危なく、変態で、多重人格のおよそまともからは程遠いところの人たちのように思います。私の方があなたよりもビョーキでしょう。

〉 一番俺の小説エネルギーの根源をなすのはその人だ。その人に、わかってもらいたいと思う。
〉 でも、その人がもし、俺の小説が分からなかったら? 俺はこれが最も恐ろしい。なぜかは分からん。ただただ恐怖を覚え、その人に分かってもらいたいがために、それまでの経路にいるはずの人間にも分かってもらう。

あなたはまだまだ狂いかたが足りない。わかってもらいたい一人の人のために小説を書くなんて、まともだ。純情じゃないか! 谷崎潤一郎なんて、女のスラックス姿の脚の美しさを書きたいだけのために小説を書くわけですよ。猛烈なエゴと超異常な性欲の爆発と歪み……しかし、テーマはそんなところから始まっても、技術と感性をもってすればひとつの普遍的な小説となる。

どうぞ、「その人」にわかってもらえるような話を書けばいいじゃないですか。その他の読者はひとまずおいておいて。

〉 時代がついてきてくれる? 何でそんなことがあろうか。そうならない可能性のほうが高いはずだ。違うか? よくそういう風な口を利く批評家がいるが、俺は思う「たまたまだ」

「そうならない可能性のほうが高いはずだ」と思いながらも淫してしまうのが人間のサガなんでしょう。博打狂いの友人とか知り合いとかいませんか? どうしてそれほどまで馬にかけるんだ! と思うような人とか。小説家というのを仕事にしようとするのは、まあビョーキじゃないとできないと思いますよ。単純に金持ちになりたいなら、その努力を経済にまわしたほうがいい。もっと堅実にいきたいなら、読書をビョーキな“小説"などにかけずに実学の本を読めばいい。しかし、それでも淫したい何かがそれぞれにあるから小説家は小説を書き、ダンサーは踊るのでしょう、誰のためにでもなく。

〉 だから、いい。ただ、俺と同じ恐怖症の奴がいたら聞いて欲しい。お前を救えるのは、賞を取ったくらいで狂喜乱舞してしまう作家じゃない。小説すら書けない、無才の読者様だ。

違うでしょう。賞を取ったくらいで狂喜乱舞しなかった作家、もっといえば賞云々ではなく、いい小説を書いているのにまったく無名に終わった作家たち。彼らの作品をあらためて読んでみることではないだろうか。なぜ彼らは無名であることを受け入れているのか、こんなにすばらしいのに……と彼らの本を通じて自己との対話をすることが必要に思う。

まず20編くらい連続でエゴの作品を投稿されたらどうでしょうか(別に「短編」ではなくとも)、さんざんにけなされてもやめないことがルールです。運動と一緒で最初からセンス抜群な人もいますが、たいていの人は積み重ねでなんとかなっていくのではないでしょうか。それから小説、小説とこだわられることもないような気がする。「読者」がいることが前提の「広告作成」だって世の中の立派な仕事です。あなたのおっしゃることは「小説の方法」としてはまったく理解できませんでしたけれども、「広告の方法」としては秀逸です。

ご健闘をお祈りします。

私が答えていいのかどうか

 わかんないんですけどね。
 私もね、実を言えば似たような気持ちになることありますよ。新人賞とって作家になってもどうせ死ぬんじゃん、と。死後に作品が残ったとしても本人わからへんわけやし、死ねばおんなじや、と暗くなったりしてね。
 そういう「悩み」といっていいのかどうか、私の場合は転換して消えてしまうものだから、単なる精神状態の軽い変調だと思ってますが、私の中で解決しているわけでもないし、処方箋が出せるわけでもないです。
 て言うか、こういう問題は誰か解決したのか言うたら、わからんですね。ニーチェとかいう人は積極的ニヒリズムとか永劫回帰とか言うたそうですが、さいきん中島義道という哲学者のかたは、ニーチェは間違ってる。私の人生には何の意味もない。ただそれだけだ。と言ってました。文学界の九月号だったかな。
 それにしても人文科学ってのはすごいもので、ニーチェといえば偉大な哲学者やなあと誰でもなんとなく思ってますけど、堂々と反対してもよろしいのですね。

〉 お前らも俺も、今のままだと焼却炉行きだ。恐ろしくないか? 俺は恐ろしい。一部の人間にしかわかってもらえぬまま自分の世界が喪に服される日が来るのが、怖くて怖くてたまらない。俺は生きつづけたい。

 あ、思い出した。タンソさんにお勧めの本ですけど、佐藤友哉『1000の小説とバックベアード』て、もうお読みになりました? 私は冒頭しか読んでませんが(ぉぃ)このあいだ三島賞とった小説です。小説とは何か、時代を超えるとはどういうことか、ということについて書いてあるらしいですよ。

 脈絡がないんだけど一つ付け加えておけば、タンソさんの文章を読み直していて思ったのは、やはり「分かってもらいたい」という言葉が多いなあということ。
 自分の外に何かを求めている限り、苦は免れないと思うのですよ。これはお釈迦さんも言うてはることですけど。
 私はいつの頃からか、むしろ「わかりたい」と思うようになったような気がします。「わかってもらう」というのは他人任せだから自分にはどうにも出来ないけれども、人が作り出した世界をわかるのは、自分の方のことだから、自由になります。
 それで私の場合は色々な本を読むようになったんだと思いますが、本当は生身の人間とも付き合うのが大切なのかも知れないけれども、そこはそれ人の向き不向きがあるから。

Re:私が敬愛する某アマチュア作家様に捧げて

今回の書き込み、実に面白かった。
これはあなた、小説ですよ。
これを次回の短編に投稿すればいいじゃないですか。
小説とはこうあるべきです。

私はあなたと違って本好きです。
幼い頃から数え切れない程の本を読んできました。
そしてそれは今でも変わらず、私は読者で、書くことよりも読むことのほうが数段面白い。
私はたまに私を喜ばす為に小説を書いています。
短編に投稿して自分の作品の問題点がわかると、もっとうまく自分に自分の作品を読ますことができるから。
そういう考え方の私には、あなたの考え方はすごく新鮮で面白い。
私にとってこれは完全な創作だ。
こういうのが読めるから私は短編の作品を読み続ける。
私のような読者をもっと喜ばしてください。
あなたの感覚は、黙っていたり人の意見にながされたりしているだけではもったいない。
あなたが書くべきですよ。
泥の中をはいずりまわりながら、怖い怖いと叫びながら書いてください。
それが小説というものだと私は思っています。
それが人間を書くということだと思っています。

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