第97期 #6
ろくろ首の足元に100円玉があった。
以前やっていたマクドナルドのCMが頭にちらつき、ろくろ首はいてもたってもいられなくなり、人間の時間でいうと3日間かかってマクドナルドにたどり着き、さて何を食べればよいのだろうか、と考えながらカウンターに踊り出る。何も分からぬまま、ろくろ首は目に映ったマックシェイクを注文する。ほどなくして手渡されたマックシェイクを手に、ろくろ首はマクドナルドをあとにする。
闇雲に歩きながら、いざ啜ろうとしたその時、ろくろ首の天敵である天狗が舞い降りた。
この天狗、たいへん意地の悪い天狗であった。というのはマクドナルドへ向かうろくろ首を3日間追いかけていたのだ。そして、ろくろ首がいざ啜ろうとした瞬間を見計らって舞い降りる。驚いたろくろ首、天敵の出現で慌てて首をにゅううううううううううと伸ばす。ろくろ首といっても年がら年中首を伸ばしているわけではない。首を伸ばすのは、天狗に遭遇したときと身長測定のときのみ。首を伸ばしてどうするのか、それはここで言ってしまうと、ろくろ首全般が困る事になりますのであえて言いませんが、はい、天狗死ぬ。
さて、首を伸ばしてしまったろくろ首。すぐに首を縮め、マックシェイクを啜ればよかろう、そう思うかもしれない。しかし、である。
簡単に首は縮まらないのだ。一旦伸ばした首は自然に縮まるようになっているのだが、その縮まる速度が、人間の時間でいうと大体3日間かかる。3日間もマックシェイクを放っておけば、何か違う味になりそうで嫌だ。なによりようやく手にしたマックシェイク、一刻も早く飲みたいのがろくろ首の心情。だから、ろくろ首、長い首のままマックシェイクを啜る。が、本場仕込みのマックシェイク、流動性がなく、強い啜る力が必要となる。まず口で吸い上げ、マックシェイクがストローから口の中に入る。
常時ならここで終りだ。しかし今は首を伸ばした状態、続いて、長い首を経なければならない。マックシェイクを吸い、長い首を通り抜ける、そんな力が、本体になかった。面食らったがすでに時遅し、哀れろくろ首、マックシェイクが首につまり、足元に転がる天狗と同じ場所倒れこみ、苦しみながら死んでしまったのである。
よいか小僧、マックシェイクの粘り気を決して侮るなかれ。南無。