第8期 #18

 蠅がいつも、ニ、三匹部屋の中を飛び回っていて、この前からずっと気になっていた。
 どこか目の付かないとこで、野菜の切れ端でも腐っているのかと思って、冷蔵庫も動かし、台所を徹底的に掃除してみたのだけど、別に何も腐ってはいなかった。

 相変わらず、小蠅がぶんぶんと飛んでいる。
 僕は思わず、ため息を漏らした。

 そると、生暖かい息にのって、小蠅が一匹、僕の口から飛び出してきた。

 ああ、腐っていたのは僕だったのだ。



Copyright © 2003 曠野反次郎 / 編集: 短編