第69期 #3

青春だらだら

「ここからやっぱり逃げない?僕らかけおちをしよう」
と君が言ったので私はとりあえず家に戻って荷物をまとめることにした。

 今自分が持ってる上で一番大きな鞄に入るだけ衣服上下下着類、でも三日分しか入らなかった。次にきっと退屈だろうからと今お気に入りの漫画を数冊、ゲームと携帯とオーディオプレイヤーの充電器を一つづつ。勿論本体も。トランプとかUNOとかはそういうのはきっとしないからおいていこう、お気に入りのぬいぐるみも家にいるなら必要なものだからええい、部屋に置いていこう。あと、念のために薬箱から適当に風邪薬、絆創膏、シップ、生理用品、勿論化粧品も、最後にお母さんの部屋の部屋の戸棚の菓子箱から私の通帳と判子、あ、箱の中に5万円入った封筒がある。これなんのお金だろういいや持って行こう。


 「きたよ」
言われて数時間後私は君の家のチャイムを押した。大きな鞄一つもって。生きる為に最低限必要な物がぎっしりつまった夢の鞄だ。
 「入って」
 「・・うん。かけおち、用意した?」
 「なんか帰ったら手紙が置いてあってさ、親が今日から三日帰って来れないんだって。泊まってってよ、で、二人が帰ってきたらかけおちしよう」
 「うん、分かった。じゃあ三日泊まってくね。そのあと出かけよう。あ、私お腹減ったな。お金五万円あるからピザ頼もう」
 「そうだね、あ、僕ポテトも食べたいな」
 「うん、頼もう頼もう。チラシどこにある?」


私は早速、笑いながら夢の鞄の中からがさごそ封筒を取り出す。君は慣れた仕草で携帯で電話をかけ始める。
こんな風にちょっと不良の私たちが二人で生きていくことなんてめんどくさくてやっていけない。今回もどうせどこにもいかない。わかってた。



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