第68期 #13

あー休日は寝たいけど寝たらすぐ終わるしさようなら。

 五、六人の少年らが元気一杯に空き地で遊んでいてやあ今日は空も晴れ渡って気持ちがいい、たまの休みに散歩したらこういう光景に出くわせて俺もつまんない会社員生活を乗り切る活力ってのが湧いてくるよ。頑張るぞと思ってたら子供たちが投げているフリスビーか何かだと思っていたものはエロゲーの空箱でした。糞ボケ!ああああ居たよ大学の頃にこういうのを平気で研究室の棚に並べてた奴。ほえほえ〜っ、いい加減にしろ。そりゃ俺だってAV見るし風俗にも行くがdistinguish A from B。お前らは段階というものを知らないから終わってる。セックスは、社会が理性的に回っていくために隠匿されているわけであり、もしそんなものが何の脈絡もなく日常に顔を出せば大抵の人は「エッ」と思うように出来ているのである。それは幼年期からの成長を通じてみんなの頭の中にゆっくりとインストールされていかなければならない反射なのに、あんなもんを簡単に拾えるような所に放置して彼らの成熟を阻害する無神経なキモオタどもは全員死ね。はい、児ポ法が大幅にパワーアップ!いっぱい死刑です。みんな「おめでとう」シンジ「ありがとう」。
 「コラーー」と大声を出して走っていくと、少年たちは一瞬こっちを見て俊敏な動きでズザザッと後ずさり、突っ込んできた俺を中心に円になった。構わず俺はおもむろに足下の空箱を拾って見る。『私立まんまん女学院〜聳え立つ男の塔〜』というロゴの下に裸で縛られた女の子たちがEXILEみたいな布陣で切なそうにしている。裏返すと、そこの教師たちがいかに邪智暴虐であるかについて具体的なエピソードが画像付きで列挙。
 はー最悪だな、と思って顔を上げると、子供たちが「もしかしてそれが欲しくて来たの?」的な顔になっているのに気づいた。俺は慌てて言った。「バカじゃねーの。こんなもんで遊んでんじゃねーよ」。
 すると箱の中から煙みたいにモヤモヤ〜としたものが出てきて髭面のおっさんになった。「いらないんなら、持って帰るよ」。おっさんは俺の手から箱を奪うと、空に向かって飛んで行って消えた。俺たちはしばらくポカンとしていたが、やがて子供の一人が「昇龍拳〜」と叫びながら拳を突き上げてジャンプした。それを見た他の連中も同じように「昇龍拳〜」「昇龍拳〜」と跳ねる。しょうがないので俺も昇龍拳をやると「ダメだわ、兄さん」みたいな顔をされた。えーマジかよ。



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