第65期 #22

せぶんてぃ〜ん

 水曜日。お風呂あがり。ぼくの部屋。三人の女の子がいた。継原加奈が言う。
「さあここに」
 部屋の中央に布団。そこにぼくは促される。あお向けに寝ると、谷沢絵莉華がやさしく頬笑んだ。今夜はうつ伏せからですよ。
 中村枝里子が言う。
「揉んでやんぜ」
 中村が肩。谷沢と継原が各脚を担当。水曜日は週のまんなかだから疲労回復のマッサージ。

 ぼくは十七歳で教室の女子十七人全員と交際していた。
 愛沢瞳と今井朝美と丘田真由果と落合百合香と九義宮利恵と下多麻実と高橋千晶と田代沙耶香と谷沢絵莉華と継原加奈と中村枝里子と仁吾麻弥子と西田舞と長谷川顕子と平田比呂美と山中繭美と若林尚美(名簿順)と交際していた。
 二ヶ月前。帰宅途中。ぼくの体は宙にぶっ飛んだ。天体サイズの工事車両のクレーンに持ちあげられたらあんな感じかもしれない。団地の角を曲がっただけだったのに。ぼくの体は太陽に向かって加速し続けて二秒後に失神。
 翌日。朝に二人からメールで告白された。通学途中一人から。授業の合間四人。昼休憩三人放課後三人。帰宅後メールで三人。就寝前電話で一人。
 彼女たちは要領よかった。月から金で五グループに分かれた。たとえば火曜は九義宮利恵に下多麻実に高橋千晶に田代沙耶香。その曜日はその集団でぼくを独占でき、他の子たちは不干渉。
 休日は予定のない者だけぼくとお出かけする。だいたい十人前後と一緒に遊ぶ。
 ぼくが太陽に飛びたった瞬間から、彼女たちはぼくに恋したらしい。そしてすぐに彼女たちは会合を開き、ぼくの携帯電話番号などの情報交換をし、これからぼく一人と女の子十七人でどう付き合っていくか相談したそうだ。

 団体には規則が必要だった。多くがぼくに課せられる。わりと不自由だ。このほどぼくに対する第十八度行動指針が発表された。
 長谷川顕子が模造紙に書かれた文句を読みあげる。
「一、ハブラシの柄を膣に挿入しない。
 一、電動ハブラシの柄を雛先にあてない。
 一、朝のキスはハブラシを済ませてから。
 以上。テーマはハブラシなの」
 十七人全員がにやにやしていた。

 高校三年生だったから、進学や就職など進路を決定しなければならなかった。
 彼女たちのうち十一人が学校に行き、三人が就職し、残る三人が妊婦となる計画が策定された。ぼくは、特になにもしないよう命じられた。
 十七人中いちばん声の小さい落合百合香がぼくに言う。
「おうちにいるだけでいいからね」



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