第41期 #26
人間は、自然のうちで最も弱い一本の葦に過ぎない。しかしそれは考える葦である。
私は特別記憶力がいいほうではない、だけれどもあの言葉を先生に教えてもらったことだけは妙に鮮明に覚えているのだ。
何故、葦なのだろうかと悩んだからだと推測できる。
そんなどうでもいいことを考えながら、私は呼吸を整えた。
私は自分の家にもかかわらず、非常に緊張していた、先ほどの深呼吸もその緊張を少しでも抑えるためだった。言ったとおり私は記憶力が特別いいほうではない。だからいつからこんな気持ちになっていたのかを思い出すことはできなかった。
自分も入れて集まった六人、男子が三人。女子が三人というなんともバランスのいい構図。そしてそのヘキサゴンの中で、小学校からの幼馴染に私は恋をしているらしかった。
時刻は午前二時過ぎ、はじめたのは九時ぐらいからだったけれど、だらだらとやっていて結局ほとんど勉強なんてしていなかった。そんな中で彼が風に当たってくるといって、外に出たので私もそれに便乗する感じで出てきてしまった。
「空……星が綺麗だよ」
言葉を選んでいる余裕なんてなかった。だから思いついた言葉を滅茶苦茶に言っただけだったのだ。
それでも、空気が気持ちいいぐらいに冷たくて、月の光が庭を青く染め上げていて、雰囲気としては最高だった。
「ほら、オリオン座、綺麗じゃん」
混乱しながらも私は言葉を続けていく。
「星座って星同士がすぐ近くにあるわけじゃあないんだよね、星の間はそんな風に離れているのに、ここから見るとああいう風に見える、すごいよね」
がんばって、自分でもがんばっているとわかるぐらいがんばって、言葉を選んで喋った、でも彼は黙ったままで私を不安にさせて。
「星の数は人の数より沢山多いから、確かに確立としては星座になってもおかしくはないんだけどね、人だと簡単にはいかないよね、わ、私たちもさ。ずいぶん長い間友達だけど、それもすごいことじゃあない?」
「で?」
なぜか不機嫌な風に彼が言う、体が硬直する。
「俺は長い間友達なことはわるくないとおもう」
何もいえないまま、涙がほほを伝った。
「でも、俺はお前が好きだ」
耳がおかしくなったのかと思った。
ドアを見ると、四つのお団子がこちらを見ていた。
あぁ……彼も葦だったのだと私は考えた