第273期 #3

ゾンビ

 青ざめた顔、差し伸べてくる多数の手、死人のような白目……!

 中学生だった僕は、インターネットでゾンビの画像を見ていた。


 すごい!すごすぎる……!

 画面越しでも伝わってくる迫力感に、僕は目が離せずにいた。

「いいなあ。僕もゾンビになってみたい」
 僕がぼそっと呟くと、画面の奥から突然、手が飛び出してきた。

 ゆっくり、ゆっくりと多数の手は僕の方へと差し掛かる。
 そして、ペタッと冷たい手が僕の肩に触れた。

 動揺して言葉も出ない僕を、彼らはゆっくりと誘いこもうとする。

 僕は我に返り、必死に抵抗したが複数人の力には敵いそうもない。


「違う! 違うんだ! あれは冗談だったんだ!」
 しかし、いくら叫んでも、もう遅かった。
 僕は、ゆっくりと、ゆっくりと画面の中へと入りこまれてしまう。

「だめだ! やめろっ! ……やめろーっ!!!!!!!!」
 その声を最後に、僕はこの世から消えた。

 本当に言っちゃいけない言葉もあるんだなと、僕は知った。


 そして僕もゾンビとなり、知らない誰かを襲っていく……。



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