第273期予選時の、#3ゾンビ(みかんの騎士)への投票です(1票)。
ゾンビは手垢にまみれたキャラクターなので、一般的には(ジョージ・A・ロメロ監督の映画『ゾンビ』に登場するゾンビに)何か特徴を付け足したものを登場させることになるわけですが、本作のゾンビは、一段落目の描写からすると、どうやら原始的なもののようです。
本作の白眉は、ゾンビの描写を「手」に絞っている点です(画面から全身を出すことは困難ですから、理に適っています)。そこにさらに「ゆっくり」という描写を何度も何度も入れることで映像的な感覚を読者に喚起させ、一方では、八段落目の「ペタッと冷たい手」によって、小説にしか表現できない描写を効果的に入れています。
また、この単純な構成の物語(というよりも一場面)も、ゾンビを登場させたことで上手く成立していると思います(吸血鬼、狼男、幽霊などでは成立しない)。
(三浦)
参照用リンク: #date20250614-123003