第27期 #19
暗がりが怖くて仕方ない王様は、御日様を寝室に飾れば夜もすやすや眠れるだろうという事に気がついた。気がついたその日から太陽への塔の建設が始まった。王様は国民を治める事と戦争に勝つ方法以外はさっぱりなので、徐々に高くなってゆく塔をただ眺めるばかりだった。寝室から高くなって来た塔を眺めていると、王様は月の出ない夜でも安心して眠る事が出来た。そしてそのまま、塔の完成を待たず一足先に天上へ逝ってしまった。
夜を怖いと思った事もない王子様が王様になり、父の悲願を叶えるためだけに太陽への塔建設を続行した。寝室から大好きな月を眺めていると、王様はその月よりも高く聳えた塔が気に障って眠る事が出来なかった。とうとう我慢の限界が来て塔を壊そうとしたが、後に退ける段階はとうに過ぎていて、王様はただ腹癒せのために建設を中止させた。そしてそのまま、すやすや眠る事も出来ずに大好きな月よりも高く逝ってしまった。
目が弱く明るく照らされる事が厭で堪らない王子様が王様になり、それならば御日様を取ってしまおうと、父が中止させた太陽への塔建設を再開させた。完成寸前で止まっていたので、たった数年で塔は御日様に届いてしまった。ところが、シャイな御日様は人がやって来ると思うと真っ赤になって引っ込んでしまった。辺りは夜になり、始終月が出ているようになった。王様は人々が困っている事には頓着せず、機嫌を良くしたまま塔も使わずに天上へ逝ってしまった。
日を浴びると大火傷してしまう体を持った女王様は、いつまで経っても御日様が沈まないので地下に隠れていた。神官を遣わして御日様に尋ねさせると、沈んだ先に高い塔があって、あんまり間近に来られるようだから恥ずかしくて沈めないのだという。報告を受けた女王様は直ちに同じ高さの塔を拵えろと命じ、自分は地下に潜ってじっと待っていたが、塔は完成せず、とうとう地下から出る事はなかった。
シャイな御日様は、しばらくは女王様側に落ち着いていたが、そちら側の塔の完成も近くなるといよいよ居場所がなくなった。困り果てた御日様は決心すると、すべてを見捨てどこか遠くへ旅立って行った。
残された月がようやく御日様を説得して連れ戻すと、人は滅んでいた。月と御日様がそれだけあった二つの塔の上に腰を下ろすと、その途端太陽への塔は崩れ落ちた。