第27期 #12

あいびき

「ええと、こっちかな?」
私は公園のブランコに座っていた。
「う〜ん、分かんないからどれでもいいや。」
そう言うとお姉ちゃんは適当にさっきコンビニで買った肉まんを私に渡した。
「それで今日は何からはなそっか。」
私は夜中に親の目を盗んでこっそりお姉ちゃんとたびたび公園に来ていた。
「特に喋ることがないなら何もこんな夜中に・・・。」
後半部分は、肉まんにかぶりついてしまったのでちゃんと喋れなかった。どうやらこれはお姉ちゃんが選んだピザまんのようだ。
「小学生にはまだ分かんないわよ。」
お姉ちゃんはため息をつきながら肉まんにかぶりついた。そしてあたしのピザまんと交換したけど、かぶりついた後の大きさが全然違って、年の差と、ちょっとした不公平を感じた。
「なんかこう、私って考えずに行動するくせがあるからさ、いつも疲れてばっかなんだよね。」
「それはどうもおつかれさまです。」
少しブランコをこいだだけで、夜の空気が服の中に入ってきた。
「あんた今日もあんまし聞く気ないみたいね。」
そう言うと、お姉ちゃんはピザまんの二個めにとりかかった。私も、もう一個欲しかったが奢りなので贅沢なことは言えない。
「小学生が解決できる悩みを自分でなんとかできないなんて大人失格だよお姉ちゃん。」
私がそんなことを言ったもんだから、お姉ちゃんはふてくされてしまった。
「あ〜あ、私が子供の頃には大人になることって結構あこがれだったんだけどね。」
そう言ってお姉ちゃんは星を眺めだしたので私もつられて空を見上げた。
ブランコをこいでみると、少しだけ星が降ってくるような感じがした。

「そういや、このブランコって思いっきりこぐと後ろの木に着くって知ってた?」
「ううん、知らなかったけどまさか今からするの?」
「いや、やってみたら子供に戻った気分になるかなって思ったけど、スーツが痛むからやめるわ。」
するとお姉ちゃんが「帰ろっか?」と言ったので私はブランコから立ち上がった。

「最近私日記書いてるんだ。日頃の悔いの残ったことを書いた後悔日記。」
「お姉ちゃん・・・。」
「はは、冗談冗談。そこまで暗い人生おくってないしね。」

「あ〜あ。彼氏出来ないかな。」
お姉ちゃんが帰り道決まったセリフを言う。
それを私が決まったセリフでかえす。
「はいはい。しばらくは私でがまんしてね。」

そして手をつないで決まった帰り道を歩いて帰るのだった。


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