第26期 #3

狭まった道

 小中学校と通っていた細い道があった。高校には地下鉄で通っているので、しばらく歩道のことは忘れていた。
 この間、久しぶりにその道を通った。昔から狭い道だと思ってはいたが、何だかより狭まった気がする。ガードレールが位置を間違えたのかと思うが、どうもそうではない。ガードレールにそうそう動かれては堪らない。居心地が悪くなってきたが、もう少し行けば多少広い道に出るので、我慢して歩く。「1+1」は分かるけれど、「1×1」の理屈は分からない子供のような顔をして歩く。本当にそんな顔をしていたのかと言われれば、確信を持ってお答えすることは出来ないが、しかし、まあ、そんな心持で歩いていたのである。
 道を通り過ぎて、ようやく自分が成長したのかと思った。小学低学年の頃から、きっと倍以上は成長してる。あの頃は10年も以上後に同じ道をさっそうと歩いているとは考えもしなかっただろう。
 しかし、道はただ小さく見えたのではなく、狭まっていたのであるから、私の幅が余計に大きくなったことは否めない。なるほど、夏休みの間に体重計の弾き出す数字が2ほど加算されていたわけだ。これで体重計を新しく買い換える必要もないし、眼鏡の度を上げに行く面倒もなくなったが、あまり嬉しくない。やはり、ガードレールが場所を間違えたのではないか。
 あの頃は10年も以上後に同じ道をデブデブ歩いているとは考えもしなかっただろう。


Copyright © 2004 入江 / 編集: 短編