第26期 #4

静かな戦

 億劫に槍を引き抜く。私が仕留めた敵。半瞬前こちらの兵士を葬り、油断していた瞬間を狙った。
 とはいえ、あくまで上の指示であり、私の策略が優れていたわけではない。別段無感動に、仲間をおとりにした上官への文句すらなく。前を見据える。敵の陣形は既に崩れ、勝利は目の前に見えていた。
 くだらない争いに、感情移入する気はないが、死んでやる気も無い。降りかかる火の粉を払うのみだ。
 そんな、思考の間にも、仲間が敵陣に斬り込んでいく。最早陣といえるそれではないが、しんがりが形成されていない所を見ると、退却は頭に無いようである。
 仲間が斬られた、瞬間指示が飛び、私はその敵を突き殺す。
 そうして、王と相対した。その眼光に力は無く、諦めが全身に現れていた。しかし、今突き込めば私は死ぬ。王の側近が最期の砦になっていたのだ。そして指示が飛ぶ。覚悟はしていたのに死の恐怖が私を縛った。しんがりより酷い。それは国の為に死ねという指示だ。
 逆らうことはかなわない。指示は絶対。まただ思考の間に私は突きこんでいた。
 意識が朦朧とする。その中で、私はこんな言葉を聞いた気がした。
「チェック・メイト」


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