第21期 #5

蜜樹の頭から発したキノコ病は、瞬く間にクラス全体に広まった。私もその犠牲者だった。
ある朝、目覚めると、頭のてっぺんに、キノコが生えている。ちょい、と触ると、ぷるると揺れる。手には銀白色の胞子がついていた。辞書で調べていると、ベニテングダケだった。
学校に行くと、もうほとんどが、キノコ病に感染していた。頭のてっぺんにキノコを持たないのは、綾のみだった。
「おはよ。」
「おはよ。」
綾は、そっけない態度、むかつく、よし。
3時間目は体育だった。私は皆が教室を出て行くまで残り、綾の弁当箱を見つけると、頭の胞子を思い切り採って、弁当に振りかけた。胞子はゆっくりと弁当に溶けていった。
翌朝、綾の頭からは、見事キノコが生えていた。成功だ。しかも、見事なベニテングダケが。
「おはよ〜♪」
「おはよ〜♪」
今日の綾は機嫌が良い。同病相憐れむってやつだ。



Copyright © 2004 森栖流鐘 / 編集: 短編