第171期 #6

冷蔵庫

「うみ亀のたまごを、それも、産みたてのたまごを、ひとつだけ、持っておくと、いいのよ」
 と、衣笠さんに云われたので、河中さんはまなつの夜の、海岸に、身じたくを、調えて、こそこそと、出かけていった。
 河中さんは、こんじょうが、がまん強く、できていた。さいしょの日には、うみ亀は、やって来なかったのだ、けれども、それでも、なん日も、いく日も、夜になれば、海へ、こそこそと、出かけていった。
 そうして、ある夜に、ようやく、河中さんは、うみ亀の産卵に、そうぐうした。河中さんは、はは亀の背後に、こそこそと、まわりこみ、やはり、こそこそと、みぎてをのばし、たまごを、ひとつだけ、てにした。
 そのたまごを、河中さんは、家に、もちかえったが、どうしていいか、わからず、とりあえず、れいとうした。
「はつこいの人から、ハンケチを、ぬすんで、それを、持っておくと、いいのよ」
 衣笠さんが、河中さんにおしえる、おまじないは、いつも、だれかから、なにかを、かってに、頂戴する、そんな、しゅるいだった。河中さんは、こんじょうが、がまん強かったので、ついつい、おまじないの、ような、こっそりかくれて、待つ、そんな、ほうほうを、とくいとしていた。
 やっぱり、河中さんは、はつこいの人のハンケチを、ぬすんで、れいとう、した。

 これは、おれの義理の、にいさんだった、河中さんの、話だ。
 にいさんが、衣笠さんに、そそのかされて、あつめた品々は、うちの二階の、八じょうまの、河中さんと、ねえさんの、寝室に、おかれた、冷蔵庫の、冷凍室に、しまわれている。
 河中さんは、衣笠さんといっしょに、どこか、とおいところへ、にげてしまったので、その、あつめた品々を、おれたちの、てで、どうにかしなければ、ならなくなった。
 河中さんは、冷蔵庫をいつつも、購入していたので、いくら、さいきんの冷蔵庫が、省電力といっても、これだけあったら、料金も馬鹿にならない。
 品々は、あまりにも多く、どれが、大事なものなのか、どれが、必要なものなのか、しゅうしゅうがつかず、だから、これはしかたがない結論なのだと、おもうが、ぜんぶ、庭に、うめることにした。せっかくだし、かき氷にしたら、と、かあさんが、獰猛な、案を、だしたが、おれが、つぶした。姉さんは、すこし、かあさんに、同調しかかっていたけれども、ともかく、その案は、俺が、つぶして、品々は、ぜんぶ、つちに、うめた。



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