第156期 #7

植物系女子

足の裏から根が伸びてきて、みるみるうちに恋人を貫き、マットレスを貫き、床を貫いて地面へ進む。
この段階でまだ恋人はすやすや眠っている。寝息がまだはっきりと聞こえてくる。

根が地について私は身動きができない。
介護の必要を訴えるが、父親は甘やかすなと厳しい。
おそらく内緒でつきあっていた恋人と裸で抱き合った状態だったことが問題なのだろう。
母親がみそ汁を口に流し込んでくれるが、そのまずいこと。それを指摘したらもう流し込んでくれないかもしれない。
恋人は相変わらず寝息を立てているし、この先いったいどうしたらいいでしょうか?
と通りかかったあざらしに訊ねてみた。

根っこがあるってことを忘れているようだねえつこさん、根は栄養分を運んでくれるのだ。
そのまま眠っていればいいってこと。

そう言ってあざらしは自ら土に潜り込んで、肛門から鳩を何匹も突っ込んで息絶えた。
ちょうど春頃には発酵して食べごろになるに違いない。

さて恋人が目覚めたときになんと説明しようか。
当然恋人にも家族がいる。
あまり大きな声では言えないが私たちは不倫関係で、何日も家を空けるとなるとそれは間違いなく怪しまれる。
恋人は夫に、同窓会に行ってくる、と言って私の家にやってきたのだから。
がんばってごまかせても数日だ。
恋人の夫は、それはそれは嫉妬深い人だから、私のことを憎み、包丁で刺してくるかもしれない。
いくら根が養分を運んでくれるとしても、切り刻まれたら死んでしまう。
死ぬ前に叫ぶほど痛い。もちろん避けたい。
とりあえず、起こしてみよう、ねえねえ、ともちゃんともちゃん、おきてよ、ねえ。

恋人は寝返りを打つ。
根に貫かれながら寝返りを打てるもんなんだな、と感心する。
つまりそんなに根は広がっていなくって、私だってちょっとがんばれば根を引き抜けるようになってるのかも。
思ったら実行するのみ。
で、えいって足を持ち上げたのね。
なにかすっぽんと抜けたような感覚、足を見ると、根があって、その先にさつま芋がついていた。

あら、天ぷらにしたらオイシそうって母親はもぎ取ってさっそく水洗いして、揚げはじめた。
ほどなく、おひとつどうぞ、
さつま芋の天ぷらを、先ほどのまずいみそ汁に浸して差し出してくるので、ひとくち食ってみると、
あらこのこってりした油がしみててちょうどいいじゃん。
母親のしたり顔と言ったら。



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