第15期 #29

スクリーマーズ

 いつか線を真っ直ぐ引こうと思っている。その為の定規だってもう買ってある。透明だから、覗くと向こう側が見える。これであたしは、いつか線を真っ直ぐ引こうと思っている。
 しかしだ。やっぱり女の子は可愛いね。この前デパートの屋上に上った際、無人のソフトクリームハウスを見つけたので入り込んで、そこで産まれて初めてソフトクリームを作ってみたのだけど、ソフトクリーム作りはなかなか難しく、気に入った物が出来るまで相当数の失敗作が出来てしまい、だからそれらをどうしようかとソフトクリーム舐めながら考えて、で、まあ地上へ投げてみることにしたんだけど、なんていうか、野郎は駄目だね。折角ソフトクリームが空からどんどん降ってきているのにみっともなく避けたりなんだりで。ダッサイスーツなんていくら汚れたって良いじゃないか。そこへいくと女の子は良いね。器用に空中でキャッチして、片っ端からソフトクリーム食べる食べる。あたしに手まで振っている。可愛い。あたしは手を振り返す。やっぱり女の子は可愛い。
「これで、良いですか?」
 目の前では女の子が一人、壁に手を付いてあたしにお尻を向けている。
「駄目よ。パンツもちゃんと脱いで」
「パンツも?」
「パンツも」
「解りました」
 彼女は恥ずかしそうにパンツを脱ぐ。脱いだパンツをどうして良いのか解らないようで暫くぼうっとしていたが、彼女はそれを丸めてポケットへ押し込んだ。
「名前は、なんだっけ?」
 彼女は再び壁に手を付く。今日初めて出会い、あたしは彼女を家へ連れてきた。そして早速、彼女はカップを床へ落として割ってしまった。
 あたしは罰を与えなければならない。
「サラ」
「そう。サラ、これはお仕置きよ」
 彼女は黒人と日本人のハーフだろうか、色がうっすらと黒く、可愛かった。あたしは定規を振るう。
 ぱちん。
「ごめんなさい」
「もうしない?」
「もうしません」
 ぱちん。
「もうしません」
 女の子は可愛い。うっとりと目を閉じている。あたしも目を閉じる。ぱちん。空気が震える。お尻に真っ直ぐな定規の跡が残る。ぱちん。ぱちん。
「もうしない?」
「もう、しません」
「そう。じゃあソフトクリームでも食べに行きましょう」
「うん」
 皆でソフトクリームを食べに行く。あたしは女の子達を引き連れて複雑に入り組んだ道を歩く。途中、葬式の列とすれ違う。あたし達は会釈をする。ソフトクリーム屋は、真っ直ぐな坂を上った先にある。



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