第27期予選時の、#2目覚め(戸田一樹)への投票です(3票)。
柔軟で抑制された、良質な叙情が全体を満たしている。
なぜ少年が泣き始めるのか、少なくとも直接の説明はない。亀の存在それ自体は、悲しみや懐かしさといった感情と、はっきり結びついているわけではない。「思いの外やわらかく、そして暖か」い亀の腹、その感触をあふれる涙と結びつけてしまうのは、ただ夢だけに許される論法で、今作はその論法を控えめに用いつつ、寂しくも柔和な雰囲気を醸すことに成功している。末尾の一行がなくとも、この短編は一片の夢として十分成立していると思うのだが、さて、どうでしょうか。夢オチ、と分かっただけで読者は萎えてしまうものだが、そのリスクをあえておかそうとしたのは、最後の一行、三人称から一人称への急な転換によって目覚めを印象づけたい、という構想からだろうか。(でんでん)
参照用リンク: #date20041104-185058
読み終えてから少し考えてやっと「ああ、それで目覚めか」と気づいた。なかなか底意地が悪い。「〜た。」「〜だ。」で統一されているけれど、最後だけはずしてみるのも面白かったのではと思った。
参照用リンク: #date20041031-105151
孤独の理由、自分の力ではよく感じ取れませんでしたが、亀への少年の繰り返しの問いかけで、好奇心からシンパシーに変化する様子が伝わってきました。本当に抱きしめたくなる亀ですね。穏やかで切ない気持ちで読める作品でした。
今回初投票です。選び方にとても気を使う方がいらっしゃる中、未熟で大変申し訳ないと思っているのですが、自分なりに好感を持った作品を選んでみました。
参照用リンク: #date20041030-225228