第26期予選時の、#12ありくいさん(巻)への投票です(6票)。
よい具合にふくらんでいると思います。
ふくらんで、こわれるそぶりを見せないのもいい。
「ありくいさん」というのがまたいい。
懐かしい感じがします。教育テレビの粘度細工の小話。
参照用リンク: #date20041008-114608
まんべんなくユーモアをまぶし、かわいらしくほのぼのした雰囲気を盛りたてるために、少しだけ毒味を混ぜること、グロテスクさや悪意を加味することが効果的だと、この作者の作品(前作といい今作といい)を読んであらためて気づかされる。口吻をのばし、長い舌で蟻をからめとるありくいは、処理の仕方によっては十分不気味にもなりうるだろう。これが猫やウサギなら絶対に今作のような味は出ず、かといってやりすぎれば意図したほのぼの感は台なしになるわけで、つまりは匙加減がすべてを決するが、その意味でセンスがある。ありくいそのものの描写もさることながら、ありくいの去った後、生垣にすき間ができている、とか、そこから隣の家のふたごの娘のたて笛がもれてくる、といったあたりの描写、隙がない。上手い。つるんと一口で飲みこめてしまうようなこの口当たりのよさを快いと思う人もいるだろうし、まあ僕のように、かえってあざといかな、などとあまのじゃくなことを感じる人もいるだろう(いや、後者は僕だけか)。しかしともあれ、手際のよさに感心。それから、「後出し」のようでずるい言い方だけれど、前作も上手いと思いましたよ。(でんでん)
参照用リンク: #date20041008-102706
『短編』の歴史の中にもおそらく「動物もの」とでも称すべき一群があって、私ももう少しやる気があれば調べ上げて黒木さんの掲示板に報告するところだけれども、つまりペンギンとかくもざるとかカンガルーとか何とかそういう手の生き物が、当然のように人語を語りながらわけ知り顔で登場する。
この作品もそんな種類だが、アリクイが蟻を食いに来るというある意味もっともな状況で、安直さ、阿呆らしさが少ない。食う食われるという動物の基本的な営みを取り上げて、感傷的でなく、冷たくもなくさらりと描いているのもよい。どこか川上弘美のような雰囲気も感じられた。(海)
参照用リンク: #date20041007-202749
内容を考えると別に心暖まるような出来事ではないはずなのだが、読み終わってほっとするようなところがあって面白かった。無理に強い印象を出そうと気張らなかったような感じ。
他にもいくつかいい作品はあったが、それぞれちょっとずつ気になるところがあって三つに絞るのが難しそうだったので、今回は一つで。
参照用リンク: #date20041006-204721