こんばんわ! このあいだ自分史上はじめて女の子のパンツを穿いてみたqbcです、流行にのって俺もやってみました。でも原型を破壊してしまいましたごめんなさい。エプロン、女装、恵方巻で三題噺をやったみたいです。
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節分の鬼
二月三日のこと。十四時。日曜日。家族は寝坊した俺を置いて郊外のアウトレットモールへ。中学入学を経てさらに時めきはじめた妹閣下の買物の護衛官というわけだ両親と兄は。
節分だから豆がダイニングにあった。年齢の十六粒を食べようとしたら佐倉から着信。いくつまで数えたか忘れる。
佐倉が言った。
「暇?」
「多忙だ」
「嘘だ」
佐倉の声ははずんでいた。暇だろ暇だよなそして腹が空いてるだろ空いてるなじゃあうち来いよ来るよな幼馴染だろ。
「ああ」
自転車で三分の距離をあるく。小春日和。ひとりで過ごすにはもったいない。佐倉家の呼鈴おす。佐倉のはしゃいだ返事スピーカ越しに。家族外出中ゆえ勝手にあがってくれ。
「お邪魔します」
他人の家にはいる。すこし背徳感。あとなぜかほのかに酢の香。二階の佐倉の部屋に向かう。
途中に佐倉の姉の部屋があってそこを覗きたいと思った。佐倉の父母もいない。姉本人も昨年末に結婚していない。
俺の兄と同級生だった佐倉の姉はしたたかだった。一緒に遊んだ。女は特別だと俺の妹を閣下と呼ばせた。彼女自身のことは女帝と呼ばされた。彼女が十三歳くらい迄だったろうか。
彼女の高校生活やその後を俺はよく知らない。関係が大人と子供に変わったんだ。でもだから部屋を見たい。
階下から佐倉の声。
「キッチンだ」
そういえば佐倉は俺に空腹か否かを問うていた。
階段を降りてキッチンへ。
キッチンにはペイズリー柄のワンピースを着た女の背中があった。俺の接近に気づいて女はふりむく。鬼だった。女は紙製の鬼の面をつけて。些少の緊張。
「誰だ」
直後に俺は佐倉の姉かと訊ねた。女帝お気に入りのワンピースだったから。しかし女帝はいま孕んで腹をふくらませている筈だしそもそも俺を呼んだのは佐倉弟だ。
「はずれ」
姉の服を着た佐倉は紙の面を額へおしあげて顔を見せた。
俺は言った。
「なにやってんだ」
「エプロンが女物だから姉さんのドレッサー漁って合わせてみた」
証人が必要だったらしい。女帝が旦那にせがまれて恵方巻を作った。それを聞いた佐倉も恵方巻を作る。うまいのができたと話す弟を姉は疑った。それにしても女装の理由にはならないが。
俺がその恵方巻に手を伸ばすと佐倉にとめられた。
「外で縁起のいい方の空を向いて喰うんだ」
「女の恰好で外か」
佐倉はふたたび鬼の面を顔におろす。
「口の所に穴あけてお面つけるから」
そして鬼は外だとわらった。
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こんかいチャレンジしてみて気づいたことは俺と黒田さんの違いでした。
・黒田さんは服装の描写に字数を割く。
・俺は人間関係の描写に字数を割く。
黒田さんの小説を読んでいて俺は俺もこってり服装描写やってみたいなあという気持ちがあったのだけど、やっぱりどうしても自分のより興味ある方向に流れていってしまったようです。
また、服装描写に字数を割くということは、単純に展開や他の部分を削ることになり、最低限の動きしか描けないというジレンマも生まれてくることと思います。その点をクリアした成功例として、
http://tanpen.jp/54/16.html
があると思います。
服装描写とともに心理も描いていくという方法。なぜ女装するのか、ということについて読者として俺は常に興味をもって読んでおります。このあたりの回答が9にはあった。他の多くは女装している人のいる風景という印象です。
それから女装している人を描くのは楽しかったです。あやしくていい。こんかいはそこの描写にあてる字数があまりなかったのですが。とまれいち意見としてお読みいただければ幸いです。