スペースシャトル発射の日に、そんな話を。
筋力で跳ね上がるエネルギーは、真上に跳ね上がった場合、最高到達点においてはすべて位置エネルギーに転化する。位置エネルギーは、物体の質量をm、重力加速度をg、高さをhとすると、mghの積で表される。体重が半分になることによる筋力への影響を無視すれば、同じエネルギーで跳ね上がることとなるので、mが半分になった分、hが二倍になる。
この単純な考察によれば、クイズに正解した主人公は従来の二倍の高さにジャンプできるのであり、その程度のことで天井に突き刺さるということは考えられないのである。
そこはまあ、お話というもの。
なるほど、そういう見方もありますね。学生時代の物理すら忘れてしまった僕としては助かります。
でも、
〉 mが半分になった分、hが二倍になる。
mはgの誤りでOK?
体重が半分になる=質量が半分になるということにはならない……ん、いや重力が変わるということはどちらかの質量が変わるということだからいいのか。
あ、mが半分になるということはgはmに比例するから同じく半分になる。つまりその分hは4倍になる。
だから天井突き破れた訳ですね。納得。
……(笑)
〉〉 mが半分になった分、hが二倍になる。
〉mはgの誤りでOK?
〉体重が半分になる=質量が半分になるということにはならない……
この指摘、正解です。
「体重」が半分になるということは「質量」が半分になることとは同じではなく、mgの積が半分になるとする方が正しいのです。作中に「グラビティゴッド」という存在がある以上、「重力加速度」が半分になるとする方がどちらかと言えば自然で、しかし共通して用いられるべき値が人によって変動するのは何とも嫌だと私は思ったり、……どうでも良いことですな。
gが半分だとすると、こんな考察もあります。本当に、どうでも良いことですが。
時間の関数である高さをh(t)、その一階微分をh’(t)、二階微分をh”(t)とし、飛び上がる瞬間(t=0とし、このときのhも0とする)の速さをvとする。この場合、運動方程式は、
mh”(t)=−mg → 上記初期条件により、h(t)=−gt^2/2+vt (「^2」は二乗を示す)
関数の極大値の説明は割愛するが、最高到達点はmh’(t)=0の瞬間であり、このときのtをTとすると、
h’(T)=−gT+v=0 → よって、T=v/g
h(t)にTを代入すると、最高到達点の高さは、
h(T)=v^2/2g
となる。これにより、重力加速度gが半減すれば最高到達点は二倍の高さとなることが言える。
以上、一、二ヶ月前程度にやれと怒られそうな話でした。
こんな程度で大方のことが済むからセンター試験の理科の選択は物理が良いというのが、私の所感でした。……もう何年も前のことですが。
〉 スペースシャトル発射の日に、そんな話を。
〉
〉 筋力で跳ね上がるエネルギーは、真上に跳ね上がった場合、最高到達点においてはすべて位置エネルギーに転化する。位置エネルギーは、物体の質量をm、重力加速度をg、高さをhとすると、mghの積で表される。体重が半分になることによる筋力への影響を無視すれば、同じエネルギーで跳ね上がることとなるので、mが半分になった分、hが二倍になる。
〉 この単純な考察によれば、クイズに正解した主人公は従来の二倍の高さにジャンプできるのであり、その程度のことで天井に突き刺さるということは考えられないのである。
〉
〉 そこはまあ、お話というもの。
>神様の声を聴くのはこれで3回目
とあるので、仮にその2回とも正解していたとすると8倍の高さまでジャンプできるのであり、天井を突き破っても別におかしくはないかもしれないような気がします。
どちらかといえば、天井突き破ってどうして死ぬのかが謎です。物語上避けて通れぬ死です。ひどい。
衝撃を評価することは私の力量を超えているので、論の展開はここが限界となります。
体重の変化によって飛び上がるエネルギーは変化せずにジャンプの高さが変わると仮定しておりますので、天井を突き破れるか否かという評価は、そもそも頭上すれすれに天井があったとしても跳躍力でそれを突き破ることができるのか、という考察に置き換えても良いかと思います。エネルギーの変化を考慮しないということは体重の変化しない常識的な状態で考察しても同じということであり、現実にはそれができるようには思えませんので、体重が軽くなったことで天井を突き破ることには無理があるという結論になります。
それもお話というもの、と言ったところで、予定された死を用意することがひどいというご意見を読みまして、天井を突き破っても死なないとすれば良いのではないかと私は最初に思いました。しかしこれは間違いで、そうしてしまうと、体重が重くなったことで首の骨が折れてしまう、という部分が浮いてしまうことになるので、やはり主人公には死んでもらわなければならなかったのだと気づきました。そう思うと残酷な話で、体重が半分になった場合も倍になった場合ももう少し別のコントのような話を用意できれば良かったのかもしれないと思い直しました。
『アカシック・レコードをめぐる物語 暗闘編』ではアカシック・レコードを無為に所持する時間を作らないことばかりを考えて主人公を殺してしまった、そんな黒田皐月の感想でした。