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「いくらお金を積まれても」(テックスロー様)
 相変わらず独創的な世界を描くのが抜群に上手い書き手だなと思います。
作中の世界では通貨はもはや記号にすぎず、命や愛の境界すら曖昧になった世界で、人々は互いに知るもの知らないものをやり取りすることでかろうじて五感(自我)を保っているのだと思います。
ラストの「呼吸がそのまま信仰になった」という表現は、それでも生きるほかない主人公の切ない希望というか祈りに似た感情そのものなのでしょうか。SFチックなんだけどどこか物悲しい世界観がたまらなく好きな作品でした。

 「罪と罰」(世論以明日文句様)
 非常に教訓めいた寓話のようなお話だと感じました。
たった一人で暮らす「僕」は、同じくたった一匹で買われている猿に自分自身の姿を重ねていたように思います。
しかし気まぐれに猿に自慰を教えてしまったがために、猿は生きがいを見つけてしまいます。僕は猿に裏切られた想いで猿の陰茎を切り落としますが、猿に復讐され目を潰されてしまう始末。
目を失ったことで僕が初めて外の世界へ出るようになり、生きがいを感じられるようになるのはとても皮肉が効いており、考えさせられる作品でした。

 「死んでいった者たちへ」(ゼス崩壊)
自作につき感想割愛。
私は昔からスマホに文章を書き留めているのですが、書きかけの作品が多く、そこから着想して物語にしました。

 「キヅイテ」(わがまま娘様)
おそらく今期最大の問題作(誉め言葉)。
一読して意味が分からず、十回以上読み返しました。
おそらく彼女は以前に主人公へ何らかの告白をしたが、思いが伝わらず、主人公は今になってようやくそれに気付いた、というストーリーなのでしょう。
ヒントとなるのは「同じ音、同じ動き」であり「寿司好き」という言葉が自分の名前を呼んでいるように思えた点など。
ただし彼女がなんと言ったのか作中で明示されておらず、読み手は想像するほかありません。
「寿司好き」の母音は「u-i-u-i」なので、私の勝手な私見ですが、主人公の名前は「ユキ」とかそんな感じなのかなと。彼女は「ユキ、好き」と想いを伝えたけど主人公は「雪好き」と勘違いしたとか。(合っている自信は全くありませんので作者の答えを聞いてみたいです)
いずれにせよ場面転換や伏線の貼り方が巧みで好きな作品でした。もうちょっと作中でヒントがあるとよかったかな。

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