※少々思いやりに欠ける表現がありましたので、内容を一部訂正させていただきました。ご迷惑をおかけします。……euReka
5 モトカノ
あまり背伸びしない、等身大の小説。
「窓ガラスにうつる自分」が、結婚を控えた自分にいろんなメッセージを送るシーンなど、なかなか秀逸である。
6 深紅の瞳
ほぼ描写だけで成り立っている小説。
宝石のように素晴らしい描写がいくつもあるし、「深紅の瞳の怪物」も魅力的だと思う。
でも正直どう評価したらいいのかよく分からない。不思議な小説だ。
7 木戸中尉の決断
終戦記念日のテレビドラマとして観てみたい内容。
簡潔な文体が、木戸中尉の清廉な人柄や戦争の緊迫感をよく表現しているし、読んでいて気持ちがいい。
木戸中尉の“敵は人間か否か”という葛藤と、良心に従った決断は、歴史の無情(原爆投下)によって裏切られ、“人間の良心”と“人間の歴史”は深く引き裂かれていく。
戦争とは常にそういうものなのかもしれないと改めて考えさせられた。
10 Devil
物語に徹する、抑制の利いた文体/文章が魅力的。主人公の殺意を時折ほのめかしながらも、決して気取られることなく淡々と進行する語り口に、主人公の執念と、静かな狂気がうまく表現されている――と読んだあとに気付く。
13 幼稚な嫉妬。
笑えた(笑)。
いい加減な感じの内容なのに、さりげなく計算高い。前半部分では、会話と会話(「」と「」)の間に語りを差し挟んで、間を置かず一気に読ませるような工夫をするなど、構成がうまい。
14 おばけ
その「布大根」とやらに会って話をしてみたい。
「こんばんは。あなたが例の布大根さんですね」
「うらめしや〜」
「だから、それは幽霊の決まり文句でしょ? あなたはおばけですよね?」
「うらめしや〜」
「おばけの決まり文句は知らないけど、うらめしや〜は断じて幽霊の決まり文句ですよ」
「うらめしや〜」