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 ※別解釈

 
 雨のしずくが窓を伝う。するすると落ちていく先でまた別のしずくとかさなり、重さで加速し桟ではじけた。追う指先は冷たくなっていく。思考はさっきから同じ所をさまよい、もちろんそんな状況では仕事も上手くいかず、自己嫌悪に陥って、それでもぐるぐると頭をめぐる同じ問題を両手に抱えきれず立ち尽くす。これではだめだと電話を手にし、「明日も休ませてください」と伝える私の声は消え入りそうで、電話の向こうは一瞬間を置くと「わかった、京都へ行こう」と抑えた声で言った。
 京都の日差しに手をかざすと、重い暑さがのしかかる。宿の部屋の窓を開けると、長い軒の先に緑の庭が見え、目には涼しいけれどやはり暑い。深く息を吸い込み、暑い空気と引き換えに、こびりついて離れない仕事のことを頭から追い出した。
「やっぱり、暑いな」
 不意に頭の上から降る声に驚いて振り返ると、思ったより近くにその顔を認め、心臓が跳ねる。 
 どうして一緒に来てくれたのかなんて、聞く事はできない。言葉にしたら心のどこかにせき止めている物があふれ出してしまうだろう。京都にはずっと前から連れてきてくれる約束を冗談めかしてしていたが、実際に現実のこととなってしまうと何だかいたたまれない。
 揺れる気持ちはもう見抜かれていて、瞳を探るように覗き込まれては、自分の中で認めるも認めないもそんなことはもうさしたる問題ではないのだ。 彼はもう見つけてしまったのだろうから。
 外は祇園祭も24日の還幸祭が終わり、ようやく終盤を迎え始める。
「観光客向けじゃなくて、いいところがたくさんあるから」
 彼が左手を伸ばして私の頬に触れると、薬指に鈍く光る指輪。私は彼の瞳を見つめながらそっと抜き取る。そうしてその指をちろりと舌先で舐めた。    

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