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 おはようございます。
裏短編、結果を発表させていただきます。


#02 思慮深い人 1票
#03 空のボク、大地のボク、海のボク 1票
#06 秩序を想う 2票
#09 時代遅れ?なアタシ 1票
#12 掌         1票
#13 ゴーレムを創る   1票
#15 マイソフィスト   1票
#18 横断者       1票

 投票いただいた3名の方、ありがとうございました。
以下にそれぞれの票感想を改めて転載したいと思います。


#03 空のボク、大地のボク、海のボク
 片仮名表記のボクはあまりにひ弱に思える。中性的とかいう次元じゃない。目の前で朗読されたら発狂する。

#09 時代遅れ?なアタシ
 頭が空っぽなんだと思う。小説として成立していない。

#12 掌
 作者は中学生か高校生と推察するが、多分、六十代の人間を観察するには若過ぎる。これはひどい。

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 例えばの話、#09の作者が本当に「頭の空っぽな女の子」を主人公に置いたとなれば、これはこれで成功なのではと思います。読者に本気でそう思わせる事ができるというのはかなりすごいことだと思いますしね。それから携帯電話では一目で情報が伝わりやすいように視認文字という文字が使われているらしく、携帯電話から作品を投稿した場合このような形になってもおかしくないかもしれません。この視認文字は、内容を深く読ますには向かないとの事。こういうことを考慮して作品を書いていくのも必要かと思いました。それから掲示板でありましたが、「目の前で朗読されたら発狂する」という言葉尻を取るだけでなく「片仮名表記のボクはあまりにひ弱に思える」のは何故なのか、どうしてそれがこれほどまでに受け入れられないのかを拒否する前に訊ねてみてもよいのではないかと、個人的には思いました。投票ありがとうございました。

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#02 思慮深い人

 うだうだ考えているうちに地球滅亡の瞬間を迎えてしまう、というふうに終わるのなら、始めからうだうだ考えていてもよかったかなと思いました。
 もしくは、最後の一文を消して、本当に地球が滅亡する時を舞台にしていることを強調すれば、中盤あたりまでののんびりした語り口が状況とずれていて面白いと思います。

#06 秩序を想う

 「旅客機」を選んだことに、見上げた先に偶然飛んでいた、という以上の理由を感じませんでした。
 もしも、偶然飛んでいるのを見かけた「旅客機」に無理矢理「秩序」を見出して、無理矢理溜飲を下げようとする話、として書いているのだとすれば、(川野さんが指摘した言葉のずれも含めて)手の込んだ歪さで、なかなか魅力的なんですが。

#13 ゴーレムを創る

 「虚体」「虚血」「絶対矛盾的自己同一」などを使っているわりに、素朴すぎるなと思いました。
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 こんな風に深く読んでもらうと作者としては逆にありがたいのではないかと思いますが、どうでしょうか。読者がその作品の展開される状況や小道具に何を期待するかがよくわかると思いました。逆に深く読んでもらう為の努力をしなくちゃならんなあと思いました。可もなく不可もなくいうのが一番厳しい感想だと個人的には思っているので。
 投票ありがとうございました。

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#06 秩序を想う
「読者」「作品」「作者」の三者を前提に考える。作者の心を読者に伝える手段が作品だとする。このお話は、作者が作品に近すぎるように感じました。たぶん作者が作品内の彼に近づきすぎているのではないかと。

>黒々と交差する電線に、高い早春の空は区切られ、すっかりと歪な多角形である。
この冒頭は彼が世界を眺めている視点なのかそれとも作者が彼を見つめている視点なのか、いずれにしろ読者にとっては唐突に感じられてしまうのではないかと思いました。ここを最初に読んだ時は一人称の小説なのかとかんちがいしてしまいました。
「正しく青い」「懐かしげな雲」といった言葉は誰の感覚の中で「正しい」のか「懐かしい」のか明瞭ではなかったです。このあたりも冒頭の部分で彼の視点に読者を近づけていれば問題のすくない表現になったのではないかと感じました。
もちろん小説内の人物と作者の距離が近い作品がつまらないわけでなく、読者を一緒に連れて歩いていってくれないゆえにものたりなかったんだと思います。この作品も何度か読んでいるうちに入りこむことができ、楽しかったです。ねじくれているくせに文字面では着飾ろうと勉める姿を見たように思います。
それからこれはおそらくとても余計なお世話だと思うのですが、文のリズムを「、」で取りすぎているように感じました。たとえば、
>小さな、硬いグレイである。
これを平仮名にして、
>ちいさな、硬いグレイである。
などとして、若干のゆるやかさを与えることもできますし、あるいは語彙の変更で文の呼吸をコントロールしていって幅が出るのではと思いました。「、」は読むための便宜的なもので、極端なことを言うと存在理由さえ疑ってもよいものではないかと考えています。


#15 マイソフィスト
おもしろいストーリーを書いていると思いました。
友人が作家になる話(http://tanpen.jp/49/25.html)の変形になると思うのですけれど、たぶん壱倉さんはふだんからこういうことを感じているのかなと。
日常的に感じていることを題材にまでひきあげ、それを読者に読ませるおもしろい話に作りこめる能力があるのだと思います。「インフルエンザ明け」といった納得感のあるシチュエーションは自分が体験したか人から聞いた話か、あるいは他の物語からの蓄積なのかと思う。

言葉と構成が気になりました。

もうほとんど小言のような細かい点なのだけれども、言葉ではたとえば、
>振り向くと背の低い試験監督が立っていた。
ここでなぜ「背の低い」と試験監督の姿を説明したのかの意図が分からない。話全体から眺めてこの「背の低い」というのは不必要に思う。
「背の低い」という情報付加をすることによって、より状況を読者に対して明確にするという意図があるならば、圧迫感を出すために「背の高い」ほうがいいのかもしれないとも思う。
もちろんあっても構わないし、「背の低い」だからといって致命的な問題ではないのだけれど、ただ、言葉の選択に対する緊張感を作品を読んでいて感じられないのが残念に思います。緊張感があるならば「お言葉に甘えた」などのありふれた慣用句は使わないのでは、と思いました。

構成に関しては、ストーリーの山場である《じつは吉田が嘘をついていた》という部分と他の部分の温度感がほとんど同じということが気になりました。
「ソフィスト」という言葉も、もうすこし劇的演出の中で登場させたほうが良かった。
たとえば、単純な遅延効果を使って、
>私「あなたは世界史で習ったあれみたい」
>吉「あれって?」
>私「忘れました」
>吉「ヒントを」
>私「ソ、なんとか」
>吉「ソフィストな」
>私「さすがソフィスト」
ですとか。
また「ソフィスト」は用語なので若干の説明が欲しいなと思いました。


#18 横断者
ふしぎなことを無理なく書きすすめられる点はすばらしいと思う。
ふしぎなことを書くにはまず尋常なことを書くことができなくてはいけなくて、それはふしぎなこととは尋常ではないことだから。尋常の上に立地しているからふしぎはふしぎとなる。たとえば「濃い緑のズボンとセーターを着ている」という描写でお話に現実としての輪郭を与えているからこそふしぎが成立する。
ただ今月のqbcさんの「せぶんてぃ〜ん」などはそもそも彼女は尋常も不思議もないという立場だから最初からふしぎなことを書いているつもりもなく俺は俺の知るありのままをどうもふざけたことばかりしてしまうどじっこ現実に対して思いださせてあげるためにありのままに書いたようです。
他人が読んでふしぎに思う話をまず書きぬける点がすばらしいと思いました。

難を感じるのは、そのふしぎの部分で留まっている点です。
現時点ですでに形としては完成はしていると思うのですが、もうひとつ味が欲しい。ただ、正直ここから先は個性になるのでこうしたらいいという直接的なことは言えないのですが。
とむさんの感想にあるように「歩行者の持ち時間が長くても、その分が僕自身の人生の時間に上乗せされるわけではない」「人の流れに乗ると、逆らうのは難しい」といった随想的人生考察の部分に対する回答を設置するのでもいいと思います。
また「交代相手は自然に決まるのだという」の部分を、「進む方向を半ば失って」しまった人間に対する皮肉として、
>進行方向を見失った人間は役立たずだから標識にされるらしい。
のようにしたり。
ふしぎを見たいという欲求が満ちると、そのふしぎは何故起きたのかという知的好奇心が湧くのが人間だと考えています。

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 裏短編の性質上、自分が面白くないと思った作品に投票するとなっているんですけど、そういう作品に対してこれほど具体的に何処がという点を指摘しながら書くのは相当の労力ですね。ありがとうございました。全般に3作品は「言葉」で作者が遊ぶというか、酔っ払うというか、そういう雰囲気がそこはかとなく漂っているという共通点があるなあとこの感想を読んで思いました。そこが、読者の胸に迫って来れないと感じる人は感じてしまうのではないかと思いました。

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このまま裏短編を続けるかは未定ですが、リクエストがあればお答えしたいとは思います。今期の問題点として「作者のレスポンスが速すぎる」という点がありますね。それから投票者に企画そのものの苦情がいってしまう。企画は私なので、苦情は私宛でお願いします。
 レスポンスが速すぎる点においてはどこかブログなのでやったほうが、投票が発表までわからないという点でいいかもしれません。「なにをこのやろう」という感じにしないためにも、どーんと後で発表されたほうが、発表された側にも心の準備ができるというか、少し冷静になれると思いました。
 以上になります。今期はいろいろとお騒がせしましたが、これからも一つよろしくお願いいたします。 (長月)

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