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面白く読ませていただきましたので、お礼は感想で、ということです。
失礼ながら、作品情報では敬称略としております。
欠落がありましたら、お手数ですが苦情などお願い致します。

題名:(無題)/作者:三浦/字数:940/元の作品:未来の乗りかた
 字数は大きくは変わっていないが、大きくふたつのことを意識して改変したという印象を受けた。ひとつは動作や背景の描写の取捨選択。この中で、「コンプリート」より「ゲームオーバー」の方がわかりやすいと私は思った。その上で「シートベルトも締めずに」、「ボタンを連打する」、「リアルに痛かった」が増えていて、これらによって主人公の描写に注力がされている。もうひとつは主人公と仲間たちの人物の単純化、あるいは形式化かもしれないことである。原作者氏に失礼を恐れずに言えば、頭の悪いステレオタイプのキャラクターにすることでゲーム性を強調しているように思えた。
 注文をつければ、両方に言えることなのだが、体感型ゲームなのでフルフェイスヘルメットのようなものを着用してもらいたいものだ。それからこの改変作への注文としては、せっかくシートベルトの描写があるのでそれをつけないことによる危険性がほしいと思ったことと、「平和」と「戦争」だけではゲームにならないと思ったことがある。

題名:(無題)/作者:三浦/字数:988/元の作品:幸福を促進できる?
 表現を口語調に、平易に改変したという印象を受けた。そのため、違う書き方によって面白さを出そうとしたことは失われたが、安定感は増している。例えば、「先輩にもっとドキドキして欲しい」の部分はより自然な話し言葉になった一方、「お父さんみたい」と言われたときの嶋野の返事が味気なくなってしまったと思った。字数制限を越えないので、この部分は元のままで良かったのかもしれない。

題名:贋作 桜の木の上には/作者:ロチェスター/字数:1,000/元の作品:桜の木の上には
 初めに酷なことを言うが、これは「贋作」とは言えない。この作品は、ロチェスター氏の言葉どおり、「私自身が感心し、あるいは感動したテーマはそのままに、私がもの足りなかった(生意気ですが)点は作り変えた」ものであり、つまり自分なりに読み直したものであり、真似をしたものではない。だから、元の作品から失われたものと足されたものがある。
 この作品を読むまで、私は元の作品の主人公が女性であるとはまったく思っていなかった。そのことを教えてもらって驚いたことが、二番目の感想である。一番の感想は、三浦氏の死生観や元の作品が持っていた感覚がほぼ失われたと思ったことである。代わりに盲目になることに対する感慨が描かれている。結果、桜の意味がまったく変わってしまったように見えたのだが、ロチェスター氏は三浦氏の解説を読んだ上でこの作品を投稿して、「同じ桜を眺めている気がした」とコメントしているので、私の感想の方が間違っている可能性が高い。

題名:贋作2 桜の木の上には/作者:ロチェスター/字数:999/元の作品:桜の木の上には
 さらに盲目になることに注力されて、もはや元の作品とは似ても似つかなくなっている。第二段の返し方には、無理やり桜を登場させたような気がして、良いとは思えなかった。しかし第四段に塀の話の代わりとして鳴動の話が挿入されていて、そこには工夫を感じた。
 最後までメールの文章としなかったことと、記号によって誰のどのような場面かを切り分ける手法は、面白いと思った。ただ、私はケータイ小説を読んだことはないのだが、これがそうと言うのであれば真似したくはないな。

題名:贋作 桜の木の上には(遊び)/作者:三浦/字数:980/元の作品:桜の木の上には
 元の作品を『贋作 桜の木の上には』とするべきと思われるほどに、そちらに合わせられている。曽祖父の存在が、目が見えなくなる恐怖に耐える拠りどころとしてのものになっていることが、共通している。
 ただ、ロチェスター氏の作品の方がそれを正直に、まっすぐに書いていると思った。こちらには、読み取れないほどのことではなかったが、やはり三浦氏の技巧が用いられていると思った。正直に考えれば主人公には思索をさせるだろう。そこを叫ばせるのが三浦氏の手札の多さだと思う。

題名:節分の鬼/作者:qbc/字数:1,000/元の作品:擬装☆少女 千字一時物語22
 以下四作は、正確には元の作品の改変ではなく、「エプロン、女装、恵方巻」の三題噺である。
 節分の行事が作品の芯に通っていて、だからそれを使っていくつものことが描けるのだと思う。「女の背中があった」などの書き方も良く、背景にいる人数も多く、その間の距離感もわかり、「口の所に穴あけてお面つけるから」の発想は純粋に驚いた。しかしそれは小学生の発想だろう、口のところを横に切って二点でつないで顎が外れたようにすれば、と思ったが、書きようがないので降参。
 細かいことを言えば、「腹が空いてるだろ空いてるな」はその前後に合わせて「腹が空いてるだろ空いてるよな」が正しいはず。それから、他人の作品として読むと、女装の理由が強引だなと思う。『22』と同じなのだが。

題名:チョコレートの急襲/作者:長月夕子/字数:987/元の作品:擬装☆少女 千字一時物語22
 作品の感想ではないが、長月氏がこのようなものを書いたことを意外に思い、幅の広い方だと思った。
 『節分の鬼』が節分に集中したことに対して、こちらは両睨みに近い。しかしその配分はこれで良かったのか、あと一歩だけBL妄想に踏み込んでおくべきではなかったかと思った。女装少年の容姿については、直接的な良い書き方がこれなのだと思った。ただ、最も良い書き方はそれだけではなく、長月氏は、そして他の方々も、これ以外の方法を持っているところが羨ましく思う。
 しかしその中で、「36分の1ロシア人」はどういうことだろうと思った。二の階乗分の一であるべきだと思うのだが。

題名:「佐倉くんヤメテ!」/作者:三浦/字数:998/元の作品:擬装☆少女 千字一時物語22
 この種の変な道具を使う話が得意なのは公文力氏ではないかと思った。なので三浦氏についても長月氏と同じように幅の広い方だと思ったが、この程度は三浦氏の守備範囲内だろうか。
 怖いし卑猥だし女装の理由が訳わからないし、しかし読みすすめる面白さが間違いなくある。しかし締め方の難しい話に挑戦したものだ、と思う。もちろん物語終了時の二人の心境は文字に表れたとおりではなく、ならばそれを書くべきかと言うとそうではない。読者がそれぞれ妄想すべき話と言っても良さそうで、本当にどうするのが最適なのか教えてもらいたいものである。教えてもらったところでまず真似はしないと思うのだが。

題名:擬装☆少女 千字一時物語22.4/作者:黒田皐月/字数:1,000/元の作品:擬装☆少女 千字一時物語22
 この作品は『22』の修正ではなく、『22』を転用して三題噺に応募した別の作品である。だから主題は「エプロン、女装、恵方巻」であるのだが、さらに前三作からいくつかの要素を意図的に取り入れている。本当は結果的にそうなったものもあるが、それは内緒とする。『節分の鬼』から佐倉姉の存在を、『チョコレートの急襲』からチョコレートと三人目の登場によって必要となった主人公の名前を、『「佐倉くんヤメテ!」』から女装強要の要素を借用しているのである。特に女装強要については私が認識している今までやっていないことのひとつであり、まさかここで実現されるとは慮外だった。姉に強要される妹的女装少年は、比較的定型的なものなのだが。
 こうしていろいろと織り込んでみたが、その結果女装姿の描写と女装の結果がこぼれ落ちてしまい、力量不足を思わされた。

ここから一作選ぶとすれば私は『節分の鬼』を挙げます、と言ったら手前勝手でしょうか。

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