仮掲示板

79感想(前

1 バリア
不条理で残酷な話だなあと思いました。
ただ怖い話なだけなので、怖さをもっと強調するか、他の色を足したらな、と思いました。

2 水分茶屋 中川口物語ー塩舐め地蔵
「見方を変えれば違ってくる」というのがもっと深められていたらなあと思いました。一言でそんなに変わるのかなと。お婆さんとおっさんを対立させて葛藤を作っても良かったんじゃないのかなと。
また、最後のところ、お婆さんは前にどんな見方をしていたのかちょっと分からなかったです。

3 逆時計
これは彼女が「逆時計」って言って二人の関係をほのめかしていた、ってことなのでしょうか。であれば、もう主人公にはっきり気付かせてしまって明示しても良かったかなと思います。
逆時計であらわすことができるのは、時間を戻せないことへの感覚だと思いますので。こっちを強調した方がよいのかなと。
逆時計って本当にあるんですね。

4 ロマンチスト
「結婚しなくていい。」と言いつつ、お見合いをしたりするあたりの矛盾が気になりました。主人公としては、結婚前提の見合いということではなかったのかなという解釈もできますが。
結婚は悪くないものだよなと思います。

5 炎壁
小説の主人公は難しいなと思うのですが、私としては、このお話の主人公はなんで警察に行かないのか不思議で、むしろ先が読めなくなるほど腹が立ちました。些細なところですが、こりゃ常識的じゃないなといった設定の人物を出す時は、脇役などに「ほんとあんた変わってるわ」とかツッコミを入れさせて読者の気分を代弁させてやると、中和されたりします。

6 猫と労働者
私が動物に不信感があるからなのか、猫の擬人化の話は苦手です。
教科書に「ごんぎつね」が採用されているからこういう話が好まれるのだという俗説があったように思い出しました。

7 Visitors
怖い話だなあと思いました。
ただ怖い話なだけなので、怖さをもっと強調するか、他の色を足したらな、と思いました。

8 春と食欲
え、これでほんとに終わり? という感じでした。
「ヒナコは猫の姿」や「僕はただの『お手伝い』」といった自分ルール的設定がなんだか分からないうちに終了という感じで。

9 真夏の雪
年齢のアドバンテージを利かせた感想を残すのは嫌悪感を抱かれてしまうのだろうなという心配を前置きにして書きますが、自分もこのお話のような感覚に陥ったことは昔よくあったな、と思いました。社会に参加できないというのに、情報だけは多くて耳年増の頭でかち。たまに社会から要求されたと思ったら経験不足で力不足で自己嫌悪。社会での具体的な成功イメージが形作れずに、「真夏の雪」といった有り得ないが自分の頭の中のひどく美しいものに(アンデッドさんのようにひどく醜い場合もありますが)カタルシスの発生装置を求める。
この若書どもめがと好意的に罵りたくなります。全体の朦朧とした文章の中で、東京や桜木町といった固有名詞がほのかな観察眼を覗かせていて、微妙な変化がありました。

10 準備中
記憶力が薄れてきているのか、「アリとキリギリス」の話を忘れかけているのですが、ほとんどストーリーが変わっていないように思いました。どうでしたっけ。
キリギリス、楽しんで死んだのだから幸福だと思うのですが、アリ視点だとキリギリス的生き方は否定されるのでしょうか。

11 寂しがり屋
これもしょっちゅう思うことなのですが、自分の意見を言うために小説を使うのは、小説を痩せさせてしまうことになるからと、悲しく見守っております。
セカンドライフという仮想web社会がありましたが、あれであほほど儲けたって人がモンスター的外見をしていたとかで、それに妙に納得した自分に辟易したことを思い出しました。

12 青い月
あまりにも題材に採用されることが多いので、家族、男女、友人といった人間関係、それから動物や自然賛美、なんであれ身近な生活感情、そういったことごとくはもう小説に書くなよと時々思います。書くなら構造や文体、シーンメイクに興を載せてくれと思うのですが、そんなこともないのですかね。
お父さんは、なんか子どもとあったんだろうかねと思いました。

13 極意
なるほど。確かに旦那の血液型を聞くのは意外性があって話に引き込まれますね。ちょっと私も使ってみようと思いました。応用も利きそうだし。新しいやり方を覚えると使いたくなります。

14 受賞者
「全国民に平和への貢献の証として、ノーベル平和賞」って、ほのぼのとしていて良いですね。

15 鈍感
ああー、きっとこの展開でいくと、奥さんも穴を掘ってるんでしょうね。
なんかこう、ショートショートも新しい境地が欲しいですね。正直なところ、ツンデレっていうのもショートショート世界の住人的発想だと思うのですが。華麗なる読者への裏切りってところで。もうすでに決定的なデレを待つための様式美化しているところもありますが。様式化すると、あとはもう洗練しかないんでしょうね。
私は個人的には、成立するか成立しないかぎりぎりのラインを、縫い針が布の表裏をいったりきたりするような状態が好きなのですが。
ともあれツンデレは性格的要素を色濃く塗り込めた新しいショートショート的発想のひとつなんではないのかなと。

16 Daydreamer
 脳は飽きっぽくできています。「三日坊主」に悩む人が多いのも当然です。解決策は「脳をだます」ことでしょう。一つのポイントは「淡蒼球(たんそうきゅう)」という脳部位です。淡蒼球は「やる気」や「気合」など日常生活で大切な基礎パワーを生み出すといわれています。自分の意思で淡蒼球を動かすことはできません。しかし、ご紹介する「四つのスイッチ」を使えば、淡蒼球を起動させることが可能です。

17 いかさま
「人類が神によって地球にもたらされた」ってかっこいいフレーズですね。勇敢な気持ちになります。
「石川」って書いてしまうと、人間が野球しているような印象を与えてしまうかなと思いました。

18 冬が来る
あんまり冬っぽさが伝わってこなかったんですが、自分が鮟鱇で季節感を感じられないからなのかなと思いました。あん肝だったら冬だなって思うのですが。
「鮟鱇を掛ける」ってとこで、「鮟鱇の骨まで凍ててぶちきらる」って俳句を思い出しました。この情景は見たことないんですが、俳句の中の言葉の圧力でその様子を思い浮かばせる力があるなと思います。

19 モーニン
最初の「同級生の男の子を好きになるなんて、あたしもつまらない女になったもんだと思う」がかわいいし、全体的にもかわいいし、タイトルの「モーニン」もかわいくなってくるし、かわいさだけでしか出来ていないし、まるでアイドル主演映画でストーリーはつまらないんだけどアイドルがかわいいからかわいいやというようなお話でした。
挨拶が気持ちよくできる人はモテる人だと思います。

20 誘惑
やっちゃいけないと言われてることほどやりたくなるのはなぜなんでしょうかね。脳科学的に言うとどうなんでしょうかね。てか、私が恋愛ベタなのは父親の愛が足りなかった式のえせ心理学的解釈みたいに、脳科学的解釈が出回りつつあるような気がします。なんなんですかね全く。
1000字ぴっちり描くのであるならば、主人公の誘惑に負けたエピソードをもうひとつくらい読みたいなと思いました。

Re:79感想(後

21 オタマジャクシ
Kさんの作品を読んでいていると、どうしても途中で笑ってしまうのですよね。でも、ほんとに笑っていいんだかどうか悩みます。文体で描写にブーストをかけ過ぎてしまった結果、出来事がデフォルメされ、そこで笑いが起きてしまっているように思います。かと言って、集団への違和感っていうテーマと思しきは社会と個人にまで敷衍できそうなふくよかさがあるので、実は真剣なんじゃないのかなと、笑うに笑えない感じが。

文体に関しては、リズムにぎこちなさを感じるものの、「言葉にならない感嘆の声を上げていた。それらは渦を巻き、狂ったように共振し、辺りをとり巻いている。」といったところで、目に見えないものを動詞で捉えていく技巧が情景に異様を与えていて言葉に力がある。
けど、「無残な光景」、「嘔き気がしてきた」、「退いていると、踵が標本棚にぶつかって」とか、いくらなんでも演出過剰じゃないのかなと思う。B級ホラー映画かよと。ある人物がそのように感覚し、そのように行動することがあるとしても、常識や一般といったフィルタをかけて見ると、大袈裟に感じてしまう。

そもそも文体が観察を拡大させて現実離れを起こし始めている描写なのだから、いっそもっと非現実的なところにまで振り切って描いたほうが、人物が感じている違和感の強烈さと文体とのバランスが取れるのではないかなと思う。
あるいはテーマをもっと卑近なものに取り換えてギャグにしてしまうか。

22 最期の散歩
これは、最初の「私」がえり子の「父」で、最後の段落の「私」は「えり子」になりますか? そのあたりが不明瞭でした。
「棺の入った鉄板をボウリングの球を投げるように」というお遊戯を使った比喩は、お葬式という一般的に重いとされるイベントに対して、「私」の気持ちが一般的ではなく軽薄なものだったということを象徴していて良かったと思います。
お葬式は良いですよね。なんだかしんみりしなきゃいけないという空間で。感情を強制的に縛ろうとする儀式空間は大好きです。嘘くさくて。

23 セザンヌ
音を優先させ過ぎていて、人物、空間の位置関係が分りづらかったです。
視覚観察、伯父の心内語や想像だけでなく、感情が与える五感への影響、単純にほっぺが熱くなったなどの描写を入れた方が生々しい人間が描けたのではないかと思いました。
それから余興として姪の語尾を「〜だお」とかにして喋らせれば、場が盛り上がったのではないのかなと思います。
男体山は本当にきれいですね。最近日光によく行きます。

24 タイムバタフライ
時をかける蝶々はバタフライ効果の連想だとしても、きれいなイメージですね。このイメージをハイライトに持って行っても良かったのかなと思います。
私の勝手な作法のひとつですが、作品をひとつのテレビドラマとして見立てることがあります。であれば、冒頭は研究所かなにかの全景→研究所内→マシンの動き、と展開したほうが視聴者に分かりやすい。そして予告編に使うべき最も予算を費やすべき場面をオープニングないしクライマックスに配置する。最後に映像作品では描きにくい人物の内語や比喩、五感の描写を適宜入れていく。このお話の場合ならば特に、「残照の銀朱の中」で人物の体にどんな変化が起きたのか気になります。この作法は今考えました。

25 なぜ俺は殺人を犯したか
なんだか色々と分りづらかったです。ハリウッドっぽい大がかりな話ですね。時間場所人物筋の情報を整理したほうがいいのかなと思いました。

26 JBショー
コント台本wwwww

27 『麗を弔う宴』
鰓(えら)と鰭(ひれ)もできればルビ打って欲しかったです。クイズみたいに推測で考えました。
石川さんの作品を読んでいると、おいてけぼりにされている感じがよくあります。「皆、喪服がよく似合っている。」と言われても描写されないと分かりませんし、「話してくれた七つの海の伝説。忘れない。」と言われてもどんな伝説なのか分らないので感情移入しづらいです。アイディアがあるのにもったいないと思いました。
一人の女の葬式に複数の男が集まるという要素は、大らかな印象があって良いですね。川端康成の「神の骨」という作品を思い出しました。

28 アカシック・レコードをめぐる物語 研究編
なんだか全然分かった気がしないので感想をためらいます。いかに自分がSFの設定部分をすっとばして読んでいるかが分りますね。「アカシック・レコード」なる物に対する若手研究者の感情を描いたものだったのでしょうか。

29 からから
なんだか読みづらかったです。
作者ナレーションとか一時下げとかのメタギャグか、言葉のテンポか、どっちかに絞った方がいいのかなと思いました。あるいはもっと笑いのバリエーションを増やしてしまうとか。

30 前借り
「青い折り紙に牛乳が浸潤していく様」はないなと思いました。分りづらい比喩でした。使うなら、この空を見ると、あのとき子供が青い折り紙の上に牛乳をこぼしたのを思い出す、のように使った方がいいのかなと思いました。
なんだか分かりづらかったのですが、これはローン屋さん自身が幸福の債権回収を行って債務者とその娘を殺してしまったってことでしょうか。ということは、このお話の世界では幸福が自由に交換というか移動できるというかそういう動産的なものなのでしょうか。
「幸せの前借り」って素敵な言葉ですね。

31 春
なんだか全体的にかわいくて、春のあたたかさからできているお話なのじゃないのかなと思いました。「ヒトミは」式に作者さんが人物を紹介するような口調に好感がもてます。
春の温度はいいですね。冬の寒さが強ければなおさら。

32 さて、続きを話そうか
なんだか分かりづらかったです。話の核心を書かないというのはおkだと思うのですが、それ以外のことについても遠まわしに書かれているようで、そのあたりがなんだか分かりにくい原因だったのかなと思います。
「さて、続きを話そうか」というところで、延々とループしてしまうような世界観はなんだか怖いなと思いました。

33 ひとり
暗示的なんだけれどもなんだかよく分らなかったです。
「春の陽気の中を冷たい風が走り抜けていった。梅園は花盛りだった。」とあるのだけれど、梅の咲く頃は春ではなかったんじゃないのかなと思いました。
名探偵カゲマンを思い出しました。

34 桜散る頃に
悩みどころの問題ですね。こういう時、私だったらどっちを選ぶんだろうかなと。いや私だったら恋人に「どっちがいいか」と訊いて、責任を相手に放り投げてしまうように思います。

35 野球篇
女の子と二人でちょっとお酒を飲みに行く。そしたら隣の席のおっさんがずっと喋り続けるのでこっちの話に集中できない・・・という気分を味わいました。内容に興味はないんだけど途切れなく話し続けるのでつい耳を傾けてしまうような感じ。

36 春と紅茶
なんだか楽しげでした。「そして大の仲良しになれる。すべての春がそう言ってる。」とか、春は本当に人の心を愉快にしてくれますね。

37 迎撃
テポドンの話? 迎撃ミサイルが誤ってアームストロング船長の宇宙船を撃ち落としてしまった的な。
「信を問うべきだとあるのだが。」など政治の対応にいぶかしげなところがありつつも、クリティカルな一撃がくわえきれていないかな、という印象でした。

38 陽焼け畳の上で
鳴き麻雀で勝たれまくるとイラッてきますね。楽しげな雰囲気なんだけど、だらしない感じもあって微笑ましいと思いました。

39 卓上小説
なんだか幸せな感じのするお話でした。テーブル画家の人、良かったね、と思いました。

41 狂った男と妊婦
なんだか不安にさせられました。妊婦というモチーフは好きです。なんだかんだでこれがあればポジティブな印象になると思うのですが、他の方はどうなんでしょうかね。

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