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21 オタマジャクシ
Kさんの作品を読んでいていると、どうしても途中で笑ってしまうのですよね。でも、ほんとに笑っていいんだかどうか悩みます。文体で描写にブーストをかけ過ぎてしまった結果、出来事がデフォルメされ、そこで笑いが起きてしまっているように思います。かと言って、集団への違和感っていうテーマと思しきは社会と個人にまで敷衍できそうなふくよかさがあるので、実は真剣なんじゃないのかなと、笑うに笑えない感じが。

文体に関しては、リズムにぎこちなさを感じるものの、「言葉にならない感嘆の声を上げていた。それらは渦を巻き、狂ったように共振し、辺りをとり巻いている。」といったところで、目に見えないものを動詞で捉えていく技巧が情景に異様を与えていて言葉に力がある。
けど、「無残な光景」、「嘔き気がしてきた」、「退いていると、踵が標本棚にぶつかって」とか、いくらなんでも演出過剰じゃないのかなと思う。B級ホラー映画かよと。ある人物がそのように感覚し、そのように行動することがあるとしても、常識や一般といったフィルタをかけて見ると、大袈裟に感じてしまう。

そもそも文体が観察を拡大させて現実離れを起こし始めている描写なのだから、いっそもっと非現実的なところにまで振り切って描いたほうが、人物が感じている違和感の強烈さと文体とのバランスが取れるのではないかなと思う。
あるいはテーマをもっと卑近なものに取り換えてギャグにしてしまうか。

22 最期の散歩
これは、最初の「私」がえり子の「父」で、最後の段落の「私」は「えり子」になりますか? そのあたりが不明瞭でした。
「棺の入った鉄板をボウリングの球を投げるように」というお遊戯を使った比喩は、お葬式という一般的に重いとされるイベントに対して、「私」の気持ちが一般的ではなく軽薄なものだったということを象徴していて良かったと思います。
お葬式は良いですよね。なんだかしんみりしなきゃいけないという空間で。感情を強制的に縛ろうとする儀式空間は大好きです。嘘くさくて。

23 セザンヌ
音を優先させ過ぎていて、人物、空間の位置関係が分りづらかったです。
視覚観察、伯父の心内語や想像だけでなく、感情が与える五感への影響、単純にほっぺが熱くなったなどの描写を入れた方が生々しい人間が描けたのではないかと思いました。
それから余興として姪の語尾を「〜だお」とかにして喋らせれば、場が盛り上がったのではないのかなと思います。
男体山は本当にきれいですね。最近日光によく行きます。

24 タイムバタフライ
時をかける蝶々はバタフライ効果の連想だとしても、きれいなイメージですね。このイメージをハイライトに持って行っても良かったのかなと思います。
私の勝手な作法のひとつですが、作品をひとつのテレビドラマとして見立てることがあります。であれば、冒頭は研究所かなにかの全景→研究所内→マシンの動き、と展開したほうが視聴者に分かりやすい。そして予告編に使うべき最も予算を費やすべき場面をオープニングないしクライマックスに配置する。最後に映像作品では描きにくい人物の内語や比喩、五感の描写を適宜入れていく。このお話の場合ならば特に、「残照の銀朱の中」で人物の体にどんな変化が起きたのか気になります。この作法は今考えました。

25 なぜ俺は殺人を犯したか
なんだか色々と分りづらかったです。ハリウッドっぽい大がかりな話ですね。時間場所人物筋の情報を整理したほうがいいのかなと思いました。

26 JBショー
コント台本wwwww

27 『麗を弔う宴』
鰓(えら)と鰭(ひれ)もできればルビ打って欲しかったです。クイズみたいに推測で考えました。
石川さんの作品を読んでいると、おいてけぼりにされている感じがよくあります。「皆、喪服がよく似合っている。」と言われても描写されないと分かりませんし、「話してくれた七つの海の伝説。忘れない。」と言われてもどんな伝説なのか分らないので感情移入しづらいです。アイディアがあるのにもったいないと思いました。
一人の女の葬式に複数の男が集まるという要素は、大らかな印象があって良いですね。川端康成の「神の骨」という作品を思い出しました。

28 アカシック・レコードをめぐる物語 研究編
なんだか全然分かった気がしないので感想をためらいます。いかに自分がSFの設定部分をすっとばして読んでいるかが分りますね。「アカシック・レコード」なる物に対する若手研究者の感情を描いたものだったのでしょうか。

29 からから
なんだか読みづらかったです。
作者ナレーションとか一時下げとかのメタギャグか、言葉のテンポか、どっちかに絞った方がいいのかなと思いました。あるいはもっと笑いのバリエーションを増やしてしまうとか。

30 前借り
「青い折り紙に牛乳が浸潤していく様」はないなと思いました。分りづらい比喩でした。使うなら、この空を見ると、あのとき子供が青い折り紙の上に牛乳をこぼしたのを思い出す、のように使った方がいいのかなと思いました。
なんだか分かりづらかったのですが、これはローン屋さん自身が幸福の債権回収を行って債務者とその娘を殺してしまったってことでしょうか。ということは、このお話の世界では幸福が自由に交換というか移動できるというかそういう動産的なものなのでしょうか。
「幸せの前借り」って素敵な言葉ですね。

31 春
なんだか全体的にかわいくて、春のあたたかさからできているお話なのじゃないのかなと思いました。「ヒトミは」式に作者さんが人物を紹介するような口調に好感がもてます。
春の温度はいいですね。冬の寒さが強ければなおさら。

32 さて、続きを話そうか
なんだか分かりづらかったです。話の核心を書かないというのはおkだと思うのですが、それ以外のことについても遠まわしに書かれているようで、そのあたりがなんだか分かりにくい原因だったのかなと思います。
「さて、続きを話そうか」というところで、延々とループしてしまうような世界観はなんだか怖いなと思いました。

33 ひとり
暗示的なんだけれどもなんだかよく分らなかったです。
「春の陽気の中を冷たい風が走り抜けていった。梅園は花盛りだった。」とあるのだけれど、梅の咲く頃は春ではなかったんじゃないのかなと思いました。
名探偵カゲマンを思い出しました。

34 桜散る頃に
悩みどころの問題ですね。こういう時、私だったらどっちを選ぶんだろうかなと。いや私だったら恋人に「どっちがいいか」と訊いて、責任を相手に放り投げてしまうように思います。

35 野球篇
女の子と二人でちょっとお酒を飲みに行く。そしたら隣の席のおっさんがずっと喋り続けるのでこっちの話に集中できない・・・という気分を味わいました。内容に興味はないんだけど途切れなく話し続けるのでつい耳を傾けてしまうような感じ。

36 春と紅茶
なんだか楽しげでした。「そして大の仲良しになれる。すべての春がそう言ってる。」とか、春は本当に人の心を愉快にしてくれますね。

37 迎撃
テポドンの話? 迎撃ミサイルが誤ってアームストロング船長の宇宙船を撃ち落としてしまった的な。
「信を問うべきだとあるのだが。」など政治の対応にいぶかしげなところがありつつも、クリティカルな一撃がくわえきれていないかな、という印象でした。

38 陽焼け畳の上で
鳴き麻雀で勝たれまくるとイラッてきますね。楽しげな雰囲気なんだけど、だらしない感じもあって微笑ましいと思いました。

39 卓上小説
なんだか幸せな感じのするお話でした。テーブル画家の人、良かったね、と思いました。

41 狂った男と妊婦
なんだか不安にさせられました。妊婦というモチーフは好きです。なんだかんだでこれがあればポジティブな印象になると思うのですが、他の方はどうなんでしょうかね。

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