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Re*8:苦手も苦手な苦手のqbcが第77期作品の感想を日にみっつずつ(25-27)

25 空間 ei 990
抽象的すぎるんじゃないのかなと思った。
特に最後のほうの「両脇のビルは今にも朽ち果てそうだ。」みたいなところは、すごく観念的。別にここはお話の状況に合わせて「朽ち果てそう」なビルである必然性がないのに、作者の都合で「朽ち果てそう」となってるように思う。朽ち果てそうなビルの周辺に住んでいる理由が、具体的に描かれているのならば納得できるのだけど。
ただその抽象は、寝取られというストーリー、寝取られでいいのか分からないけれど抽象的だから、そのストーリーにもやもやとしたトーンを与えていることも確か。寝取られという既に行われてきたお話の繰り返しをこの抽象性というか情報不足が救っているところもあるかなと。
映画を撮影するところを想像する。ワンシーン。ある部屋で男が二人。なにか対話をさせる。そういう場合、こういう小説を脚本にしたならば、映画監督は勝手に小道具を設定しなければならないということだ。ベッドは画面内に映っているのか。携帯電話が女からの着信を暗示させて光っているのも面白いかもしれない。なんだかねっとりした話だからペットに爬虫類がいて水槽に入ったそれをシルエットで映そうか。読者は映画監督の役割をも担うわけで、負担になる。それが悪いわけではない。ただ読者というか人間は視覚の世界に浸かりきってると考えている俺としては、自由度を上げすぎてしまうとついてこれなくなってしまうのでは、と思う。もちろん全部書く必要はない。必要なところだけを書き出せばいいと思う。

26 嫌 わら 1000
 十一時開始の大阪客先ミーティングに間に合わせるため朝の早い電車に乗った。西武新宿線高田馬場から山手線で品川駅に向かう。
 電車は七割混といったところ。
 五反田だったと思うが黒いステンカラーコートの年配の男性が米国の黒人大統領は殺されるぞと言っていた。怒鳴り声で。イヤフォンを差しこんだ耳にも聞こえてきた。男性は乗降口最寄の吊革に手をかけて目の前の座席に座るこれも黒いコートの中年に語りかけていた。あけすけな人種差別を促音便のような軽々しさで謳うので二人は上司部下の関係なのかと俺も脊髄反射で思った。違った。次の停車駅で座っていた男は降りて隣の車両に移った。俺はイヤフォンを耳から外した。
 俺は乗車口の脇に寄りかかって読書するのが習慣なのでその様子がよく観察できた。俺ならばマゾヒストだし好奇心も強いし守る家族もないので刺されても迷惑をかけないし座っていただろう。
 品川で俺はカートをひきずりながら降車した。妄言の男はマスコミの信頼性とマスコミに対する大衆の盲目について語っていた。君子危うきに近寄らずよろしく周囲もその男から距離をとっていたし男の直前の空席に誰も座らなかった。アメリカの世界貿易センタービルの事件以来弱々しくなってしまったそうだがインターネットのことをネオジャーナリズムだとか言ってもてはやしていたりしていたのだと大学の後輩が言っていたような気がするし、今更ネット以前の公共の電波がいかに私用の為に使われていたのか知らない人もいないだろうし、そもそもそういった枠が電通や博報堂といったメディア仲介屋の収益源となっているのだから、信頼性も何もないだろうなどと、口さがないグローバルカンパニーのエンジニア風情にはてなブックマーク欲しさにアノニマスでオバマに注釈をくわえた男は戯画的に描かれるかもしれない。
 いやこれも偏見か。偏見など、どこかに定見があればの話しだが。
 しかしそれにしてもネオジャーナリズムという呼び方で正解だっただろうか。自信がない。曖昧模糊。五里霧中。本当が、明日の彼方。
 品川のecuteという駅内商業施設で文庫本と客への手土産を購入した。土産は「ごまたまご」。外側のがりがりした感じが好きだ。本は人から薦められた伊坂幸太郎の「重力ピエロ」。本屋大賞受賞作家らしい。
 自由席だったが席には座れた。寝るか読書か会議資料確認かで迷う。東海道新幹線は目的地まで向かいだした。

27 ホーム・ホーム・ホームレス 暮林琴里 1000
なるほど。なんとなく、日常に帰ろう的ないい話の感じがしたのですが、なるほど。

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