仮掲示板

68期全感想(前半)

短編から遠く離れているうちにいろいろな騒ぎがあったようですが、あまり空気を読まずに書いてみます。

1 自動筆記 秋好夕霧
本当に自動筆記したのではないかなと思います。手の動くままに書いたという。
そういう試みをしてみたい気持ちは分からんでもないですが、読んでて楽しいものではありませんでした。

2 春に、長い髪の彼女を思う イス川
僕もたまに駄文でハルキ風文体を試みてはわりと苦労するのですが、そう考えるとここまでハルキ臭を出せるのはすごいことなんじゃないかという気もします。が、狙ってやらないと価値がない。

3 手 K
人間べつに手だけで生きているわけではないだろう、と思ってしまうのは、なぜこの人たちにとって手がそれほど重要な意味を持つのか、が分からないからです。そこは書いてほしかったなあ。

4 The Blue Marble さいたま わたる
小説にオチが必要だとはぜんぜん思っていないし、オチのためだけにそれまでの文章が存在するようなショートショートはあんまり好きじゃなかったりもする。それでも、少なくとも落とそうという気配を見せるのであれば、ちゃんと落としてほしいとは思います。

5 サクラ・テレパス 八海宵一
ああ、なんてストレート。そんなん勝手にやっててください、と思ってしまうのは、別に僕がひねくれているからではないと信じます。

6 ケチャ わら
外国映画を見ていると誰が誰やら顔の区別がつかなくなってしまうことがありますが、馴染みのない名前ばかりで誰が誰やらいささか混乱しました。ニョマンにワヤンと呼ばれてプトゥと答えるところがいちばん分かりにくかったかなあ。
好きとまでは言いませんが嫌いでもありません。好感度は高いと思います。

7 血流 笹帽子
冒頭は自分の血を吸ってたということでしょうか。最後は女子高生も吸血鬼だったということでしょうか。ちょっと分かりにくかったです。
しかし吸血鬼の口ってあんま血を吸いやすそうじゃないですよね。だらだらこぼれそう。管を突き刺すようなスタイルのほうが効率がいいです。

8 あの娘になりたい 藤袴
ちゃんと落ちてます。二度目に読んだときもオチを忘れていてちゃんと落とされました。
惜しむらくは(・・・)(・・・。)が顔文字に見えてしまうことでしょうか。

9 水面下に生きる 柊葉一
「あそこから天使がっ降ってくる」はいけません。内容は悪くないと思いますが、「がっ」だけで頭がいっぱいになってしまう。

10 擬装☆少女 千字一時物語28 黒田皐月
なぜ「それならば、今すぐこの日傘を開くのが道理」なのかが分からない。じっくり読んでもやっぱり分からない。その後の意表を突く展開でこのことも腑に落ちたような気にもなったけど、いやいややっぱり分からない。
生理的にあまり好きにはなれないものの、内容はしっかりしてると思います。けど、不安定な文章がそれを邪魔する。

11 綻び bear's Son
どうしても時代劇の癖が抜けない俳優ががんばって現代劇に出てみました、とでもいうような違和感がありました。なんでこんなに仰々しくなるのか、なんで母親の声がロボットみたいなのか。

68期全感想(後半)

続きです。

12 とあるひととき。 ちぃ
吸血鬼としてのとあるなんでもないひとときを、素直に描いたのでしょう。それ以上特に言うことは見つかりません。

13 あー休日は寝たいけど寝たらすぐ終わるしさようなら。 Revin
こういう砕けすぎた口語体っていまどきの流行りなんでしょうか。俗っぽさと芸術性はもしかしたら紙一重かもしれませんが、その紙一重は越えられなかった。

14 ドミノ 浦上やず
結局ぜんぜんドミノになってない。じゃあこのタイトルと冒頭はいったい何なのか。

15 白山羊 はるひ
オチはなるほどと思いますが、それなら手漕ぎボートはどうしたっておかしい。オチの転回によってそれまでの文章に新たな光が当てられるべきなのに、疑問点を生じさせてしまうのはよろしくありません。

16 家庭教師 qbc
よくできた妄想だと思います。この声優もキャラクターも知りませんが、ちょっと引き込まれそうになるところはあります。
気になったのは「いまやってるタイトル」で同じシリーズのタイトルをつらつら並べるところ。文章効果を狙ってのものとは思いますが、同じシリーズを同時進行なんてやるもんでしょうか。

17 存在のゆらめき 宇加谷 研一郎
「刺激はないけどなんか感じのいい」小説が、最後に台無しになってしまった。正直いって興ざめでした。ショージ君のくだりなんて面白かったのになあ。
そして千字小説の登場人物は本に帰るのだろうか。まあ無いことも無いだろうけど、ハードディスクに帰るほうがしっくりきます。

18 イマジナシオン 崎村
夏が来るまでこたつ布団を出してるなんてなかろう、と思いますが、彼への未練で片づけられなかった、というのが優しい解釈でしょうか。

19 声に出して、ネバーランド fengshuang
最後のセリフ、「やっぱりまだ子どもかなと感じた」ということは本当に知らずに聞いたのだと思いますが、それにしては語り口が客観的すぎるように感じました。地の文にもちょっとぐらい子供っぽさがほしかったです。

20 九龍 sasami
主人公の過去や性質や周辺をつらつらと説明していた文章が、最後にとつぜん現在の出来事を記す文章に変わってしまうのは違和感があります。
ただ、それを差し引いてもこの作品には十分な魅力があります。テンポがよくて、読んでいて心地いい。ひとつひとつのエピソードも楽しくて、あちこちに光る文章がある。まさか関係なかろうとは思いますが、るるるぶさんを連想させるものがありました。

21 嚥下 森 綾乃
なぜ嚥下したのか。そのヒントがどこにもない。だから唐突な印象ばかりが残りました。愛憎入り交じる複雑な感情だというのは分かりますが、嚥下に説得力がありません。

22 ホーム 川島ケイ
自作です。

23 箪笥角 三浦
せめてテンポがよければ、もうちょっとは楽しめたかもしれません。

Re:68期全感想(前半)

返信が大変遅くなりました。理由がないのでそれ以上言えることもありません。
第68期の掲示板は感想5件。前期以前と比べれば件数は少ないのですが、感想の数だけ見ればそんなものでしょう。短編に触れたばかりの方には、こちらが本当の姿だと言っておきたいところです。
本当は自分の作品以外の感想への感想も書くべき時機なのでしょうが、それはできず、最低限訊いてみたいことにとどめます。

〉10 擬装☆少女 千字一時物語28 黒田皐月
〉生理的にあまり好きにはなれないものの、内容はしっかりしてると思います。けど、不安定な文章がそれを邪魔する。

これを書くと自慢になりますが、前期の『26』に長月氏から今まで一番丁寧だったという感想をいただいたことと言い、二期連続で褒め言葉をいただいております。しかし、私、変われたつもりはないのです。いつもと何が違ったのだろうと、次に活かすべきものが何なのかが、わからずにいます。
余計なことを言いました。訊きたいことはそれではなくて、「不安定な文章」が何を指しているのかということです。今さらの質問で済みません。
普通に使う表現だと思います。だから私のしていることは揚げ足取りのようにも思います。でも訊いておきたい。不安定なのは、文体なのか、内容なのか。
書いた側から言えば、答えになどなりませんが、不安定なのは私自身。内容は私自身が安定であろうとなかろうと良いものを描けないのはさて置いて、書き方はその不安定さを反映して感傷的な書き方を志向しているように思います。それが、「それなのに」、「だから」などといった言葉を増やしているような気が、私自身はしています。
それが作品からも見えるのか、と気になりました次第です。
でも、来期はモノローグではないからそこまで目立たないかな。

運営: 短編 / 連絡先: webmaster@tanpen.jp