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240期全感想

どうも、八海宵一です。
久しぶりに参加しましたので、240期の全感想も書きました。
相変わらず、ずれた視点で作品を読んでいるかもしれませんが、そのへんは笑い飛ばしていただければと思います。
(なお、予選で投票した作品の感想は、そのまま同じ感想になってます)

というわけで、以下、感想です。(そして、長文です)


「短編」240期 感想

1)東京文化大学  蘇泉さま(☆☆☆)
 おもしろかったです。いかにもありそうな校名だし、ありそうな話だなと思いました。王さんがこの後、どうしたのかが気になるところですが、文字数的には、ここで切るのが千字小説なんだろうなと思います。東京文化大学の人を採用するかしないか、この後の王さんの人間性が気になります。

2)花見猫  吟硝子さま(☆☆☆)
「ワガハイは肉派なのである。」がすてき。たしかにそんな猫もいるにちがいない、そう思いました。ちなみに、ニンゲンはカタカナ理解なのに、十把一絡げは「ジッパヒトカラゲ」にならないところが、この猫らしい気がします。ほんわかとした猫エピソードのはずなのに、最後の一文がとても寂しい印象でした。読み手によって変わると思いますが、ニンゲンどころか花もない世界が待っていそうな気がしました。でも、そういう世界観がすき。

3)魔法使いの末裔  たなかなつみさま(☆☆)
 多感な時期に見えてくる人生の分岐点、そんな言葉が脳裏をよぎりました。特別な聴覚を持つがゆえの悩み、そして、その聴覚に向き合う姿勢が成長とともに、はっきりしてくるところが見え始めたような気がします。不安定だけど、だからこそ、希望が見いだせる時期。そのとても大切な瞬間に、強がって世界を救うのが印象的でした。

4)国内および国家間の不平等を是正する テックスローさま(☆)
「そこで終わるんかいっ」というのが、第一声。でも、この文字数でここまで書けるのはすごいと思いました。熱量というか勢いに圧倒されます。そして、昔話の「強さ」みたいなものも感じました。なんというか、王道の昔話はいろいろな解釈や脚色などに耐えうるどころか、むしろ新たな輝きを放つ、そんな気がします。

5)会社の一日 狐狸等間隔さま(☆)
 リズムのある文章でおもしろいです。とくに冒頭の「コピー機は壊れました。」のぶっ飛び具合が心地よいです。支離滅裂のようでいて、本人にはわかるストーリーがあるのだろうなと思いますが、さすがにそこまでは想像できませんでした。

6)シゲさんは不器用 霧野楢人さま(☆)
 シゲさんが不器用なのはよくわかりましたが、もう少し具体的に山になにをしにいったのか知りたかったです。あと、シゲさんの置かれた状況ももう少しわかれば、さらに深みが出たのかなと思います。書かれていない部分に、大切ななにかがあるような気がしました。

7)あなたがくれるもの わがまま娘さま(☆)
 細やかな描写で寂しさ、または恋の苦しさを表現するお話ですが、個人的に興味深かったのは、喧嘩したあとの「零くん」と「いっちゃん」に温度差が見えたところです。「零くん」はふだんの生活が別のものに見えるくらい動揺しているのに、「いっちゃん」の「零くん? どうしたの?」からは、一切それが感じ取れないのがおもしろいと思いました。関係性が透けて見えた気がします。こういうお話、大好きです。

8)列を抜け出してパスタ屋に向かった、あの日。 (あ)さま(☆)
 読みやすい文章に、心地よい日常の1ページ。電子マネーを使いたくてラーメン屋を始めた店主に興味が湧くところですが、それ以上に、「彼女」のことが気になりました。「彼女とはそれまであまり会話したことがなく」ということは、すでに面識があり、なんらかの接点がある人だったと思うので、もう少しだけ、そこを読みたかったです。

9)日曜日の音楽 euRekaさま(☆)
 信じる者は救われる。鰯の頭も信心から。そんな言葉が頭に浮かぶ作品です。お婆ちゃん強し、そう思いました。自分で「自分の信じられるもの」を作れる人は最強だと思います。見習いたいと思います。

10)そして石になる 朝飯抜太郎さま(☆☆☆)
 前半と後半で大きく話の調子が変わるので驚きましたが、おもしろかったです。シリアスな話と思わせて、実は……という話、大好物です。ただ、前半のトーンのまま、作品を作ったら、どうなるのかも気になります。SFショートショート大好きなので。

11)剝き身になったわたし ウワノソラ。さま(☆)
 複雑な心情の手紙を読んだ気がします。他人が口を挟めないような心の内が見え隠れしている感じ。これを読んで思ったことは、こうして人は成長していくんだろうな、ということ。「あなた」と付き合っていなければ、この作品は、きっと生まれなかったと思います。最後に繰り返し読んで思ったのですが、もしかして、これは弔文なのかなと思いました。読み間違ってたら、すみません。そのぐらいの「距離」を感じました。

12)聖域 Y.田中 崖さま(☆)
 なにからなにまで、不気味な話。冒頭の地下通路も薄気味悪いし、詳しい説明をせずに案内する老婆も不気味。なにか儀式らしいことが行われているが、巻き込まれている「私」はよくわかっていない。見てはいけない秘儀を見た気持ちになりました。ああ、逃げ出したい。

13)祝電 八海宵一
 自作。感想は省略です。
 北村さま、「短編」20年、おめでとうございます。


最後に今期、投票してくださったみなさま、そして、お褒めくださった霧野楢人さま、ありがとうございます。

ではまた、どこかで。

八海宵一

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