kyokoです。
票とコメントをいただいて、それに返したくなったことと、全作品に感想をひとことずつですが述べようと思い、書き込みさせていただきます。
今回は予選のみ投票させていただきました。
最初に全作品の感想です。
私はストーリーより言葉のリズムや描写の美しさに惹かれる傾向があるので、ちょっと的外れかもしれませんが、ひとことずつ。良し悪しではなく、完全に好みです。
・哲学的文学少女
私も学生時代、授業中ほどいろんな考えが頭の中を巡ったなぁ・・・レポート用紙を前にして世界のすべてについて思いを馳せる少女にくすりとなった。すごくよくわかる。
・アサイラム
今日も自分の人生を全うしているのだ、とか侮蔑と羨望、とかミイラ、とか。周りを見下しながら、ギリギリで自分を保って必死で生きている。がんばれ、卒業すればとりあえずそこは終わる。あと、ミイラは大事にしなよと思った。
・マッチョマン微笑
光る筋肉としばらく踊ったのち、にいいな、と思った。筋肉と会話したりとかしそう。筋トレがメンタルを支えるという話は聞いたことがある。でも、その筋肉の支えが彼女だったのも良い。
・敵の敵は味方
たのしいのは良いことですね。
・鳩のはなし
自分に助けを求めるたび、鳩は救われていた。に共感。
忘れることにした、とあるけれど、何度も何度も思い出して、忘れなければ鳩はきっと孤独ではないのではないだろうか、と思った。それがどんなに苦しいことだとしても。
・アップデート
人の想いとは、結局その人自身の中で完結してしまうもので、その対象がどうであろうと関係ないのだなと思った。古いやりとりやそのときの痛い気持ちはどこにいくのだろうという言葉に胸をつかれた。あなたが覚えててくれたらいいの、というのは真実で。でもきっとそれはあらかじめ登録されたセリフをAIは再生しただけ。そうして覚えた胸の痛みもどうしようもないのはわかっていて、それはそのまま、胸の底に沈んでいくのを見ていることしかできない。
・アジの食卓
なんて良い話。ちょっと多めにサービスしておかないとな、に男気と余裕を感じた。外面を優先させることが回り回って家族を守ることになる。こういうことに気づける僕もいい感じだ。でも亭主関白にいらつく奥さんにもごもっとも。外面の良い親父が家では甘えてるだけだとしても。綺麗にまとまってて読みやすかった。
・悪魔と友達になるということ
「胸に手を当てて言葉を探した」
「あなたの笑顔を見て安心したいだけ」
「詐欺でだまされるのは悔しいが、悪魔にだまされるのなら仕方ないと思えるはずだから」
ところどころの言葉が魅力的でするする読めた。
・ふりだしへ戻る
「その坂から落下することが急激に目の前の確かな未来のように感じ始める」
どう考えてもダメなことが、そうするしかないと自分を納得させることで妙な安心感を一瞬持ってしまうことってある。魔が差す、というか。
・出してごらんよ
10代前半の未完成感がよく表れていた。
自分で何かを決めるということがまだできない。
指示待ちの安心感、自分のことは自分が一番よくわかると決めつけることの心地よさ。
でも、それではダメだとどこか気づいていて、その最初の一歩が踏み出せた瞬間の、小さく何かが弾けるような感覚。
・花弁一片
タイトルも文章も美しい。
一つの恋の話。桜吹雪の中、清廉で姿勢の美しい彼女の纏う空気を感じた。
あまりにも過不足ない練られた筆致。そのまま素直に心に落ちた。
そして、私ならこうした方が好みかも・・・と思いきり影響をうけて次期の作品を書きました。それだけ引き込まれたということ。軽率に刺激を受けて書いてしまうのは私には良くあることで。失礼いたしました。この場をかりてご報告いたします。
それではコメントをくださった方への御礼です。
今回投稿した「抗えない魅力をもってそれは」の仮のタイトルは「物語を書く」でした。
私がやや長めの小説を書くときに浮かぶ情景のようなものをドミノに例えた作品です。
そのままのタイトルでは恥ずかしくて、でも多少ひねったくらいじゃきっとバレるだろうな、物語を書く人はきっとみんなこんなもんだろう、と人はみんな自分と同じ、というあまりに未熟な考えの元、ま、いいやと投稿しました。
ですが予想に反して読んでくださった方がさまざまな見方をしていて驚きました。私は普段二次創作の畑にいて、このようなあいまいな情景の物語を書いたのは初めてだったので、感想をいただくたびに自分でも読み返したりしました。物語は公開した時点で読者の物になる、というのを実感した瞬間でした。コメントや票をくださった方、ありがとうございます。
この短編用の話を書いていたときはちょっと行き詰まっていて、その鬱々とした気持ちのまま一気に書いた物でした。なので途中の苦しさや書き終えたときの達成感の描写ばかりを磨いた記憶があります。早くこの苦しみから脱したいと。
ですが、最初にいただいたコメントで、スタートはとんでもなくポジティブな気持ちから始まるのだとあって、涙がにじみそうになりました。私は物語を書くのがものすごく好きなのだなぁと、自分のことなのに驚いて、気づかされた。自分自身で間違いなく最後の一文字まで書いていても、読者の目を通してしか気づかないこともあるのだと。作品は読まれて初めて完成するというどこかで聞いた言葉を思い出しました。
コメントをくださった方、本当にありがとうございます。力をもらいました。御礼申し上げます。
以上です。
ありがとうございました。
#1 走れ、ケンジとなっちゃん
昔の子供向けアニメに出てきそうな話で、少し懐かしい気分になった。
でも、「最期にアイスが食べたい」という無邪気な話なので、中学三年生というより、小学生のエピソードのほうがしっくりくるような気がする。
#2 彼女いない同盟の君と
わざわざ「彼女いない同盟」まで組んだ友達に突然彼女が出来たら、そりゃ寂しいだろうと思うし、その痛い気持ちは伝わってきた。
しかし、モヤモヤした気持ちをそのままにしておくのではなく、気持ちを切り替えるような展開が何か欲しい。
#3 むぎちょこ
突然、よく分からないことが起こる不条理さが面白いし、惹きつけられるものがあると思う。
この話の場合、食べ物なら何でもいい気もするのだが、なぜあえて麦チョコを選んだのか気になる。麦チョコというと、子どもの時に食べた記憶があるので、その懐かしさが、この不条理な話とオーバーラップして、独特の雰囲気を出しているのかもしれない。
ただし、別の袋に入った(新しい)麦チョコでも同じことが起こるのか、という検証や展開があってもよかったのでは。
#4 企業天使
宗教(真理)と、お金と、世界の効率化という面白そうな話だが、その仕組みをもう少し詳しく知りたいと思った。
#5 世にしたがへば、身くるし。
誰でも、多かれ少なかれ、世の中に生きづらさを感じていることを表現したかったのか。
でも、老婆がかわいそうだなと思った。
#6 僕とりんごの暮らし
実家から送られてきたリンゴを齧ったことで、身近にいる異性のことを思い出して、汚部屋を掃除しようという気持ちになる、という気持ちの推移(展開)みたいなものが面白いと思った。
あと、十代から二十代初めぐらいの頃は、異性に気に入られることが一番の目的になっていて、それが物語を進めるエンジンになっていることもあるな、ということも考えた。
#7 ナイショだよ?
清楚なイメージがある「彼女」の舌に、突然ピアスが見えた、という展開は良かった。
いい意味で、はしごを外された気分になる。
ただ、その展開へ行くまでが、少しもたついている感じがした。
#9 SUNRISE BRAVE(歌:日輪ルル)
「ルルの言うことを批判するのはダサい」というのは、全く合理性のない考え方なのだけど、そういう、ものが言えなくなる空気みたいなものは現実の社会にもある。
社会の空気による圧力みたいなものは、客観的に見なければ、自分も飲み込まれてしまうという怖さがあるし、この作品ではそのことを上手く伝えていると思う。
#10 名告り
この作品に出てくる「名」とは、その人のアイデンティティ(出自)みたいなものか。
しかし、その「名」を一音間違えただけで、全く別の存在になってしまうという世界。
実際にあったら怖いなと思うが、現実社会にある人種差別の本質ってそういうものかもしれないなと思った。