# | 題名 | 作者 | 文字数 |
---|---|---|---|
1 | think kokusai | アース 1 | 364 |
2 | (削除されました) | - | 992 |
3 | しらゆき | なゆら | 813 |
4 | 歴史の再臨 | 八代 翔 | 952 |
5 | 事件 | ロロ=キタカ | 945 |
6 | 恋文 | 真悟 | 1000 |
7 | 青梅の実 | 初寿 芳 | 531 |
8 | 春香の場合 | yasu | 790 |
9 | 15日目 | 鼻 | 951 |
10 | 売れ残り | 水守中也 | 695 |
11 | 柿木焼酎 | ねむ亭三 | 719 |
12 | 若さ故のはらわたデイドリーム | 彼岸堂 | 1000 |
13 | 福袋 | クマの子 | 1000 |
14 | 夜の中で | 高橋 | 1000 |
15 | 東京物語 | 三浦 | 1000 |
16 | 勝つことだけ考えた | おひるねX | 859 |
17 | クリスマスの朝、雪が降る | euReka | 994 |
18 | 『銀河の夏、ニッポンの夏』 | 石川楡井 | 1000 |
201x年 税収不足を補う為、日銀は10兆円の国債を買い入れることになった。国内では労働力減少・出生率低下により、国内生産は伸びようがなかった。世界をリードしてきたアジア地域も資源の、枯渇化に伴い成長率はいきずまってきた。ついに 日本ではマイナス成長に陥り,国債は1000兆円に積みあがり 日銀がどれだけ買い入れるかに・・・・・。 いつしか 日銀による累計買入額は500兆円に 達しようとしていた。全世界的な減速経済であったので 為替相場は比較的安定していたけれども、インフレーションは途とに拡大していた。はたして 消費税アップで国債消化と健全化は進むのだろうか・・・・。 一人 初老の名もない人は 秋の夕陽に まなざしをむけるのだった。おとずれる暗闇から こうごうしい朝陽を・・・・・。
老婆に化けた、というよりも激しい憎悪によって老婆よりも老婆らしく成り果てた后、真っ赤な林檎籠の中に携えて、姫の住む深い森のぽっかり開いた野原の先の湖の辺のちいさな小屋に、馬車に乗って一目散。途中、葉の生い茂った木の枝、背高草等にぶつかってはそれを乱暴に揺らし、そのスサスサガサガサが音に敏感な野生動物達の耳に届き、たちまち森中に回される回覧板、情報が広がる、后が懲りずにやってきたと。姫のちいさいちいさいお耳にも届き、自分を殺害するために再度やってきたのだと、この時点ですでに気付いているわけである。そんなこととは露も知らずに3日3晩かけてようやく湖までやって参りましたる后、馬車から降りて、すっかり老婆に化けているかどうかを、湖面にて確認、ぬんと現れたみすぼらしい婆に非常に驚いて腰を抜かしそうになったがそれが自分だと気付いて、いやもちろんビビッてなんかありませんよ、とか独り言ほざき、何はともあれその化け具合に満足気、若干小躍りに「バラが咲いた」なんかを口ずさみながら小屋の戸を、トントントトトン8ビート刻む、ように叩く。小屋の周りの木の陰、凶暴な野生動物達の殺した息遣い。それぞれ手にした鈍器は黒く冷たい光を放つ。姫曰く、いきなり襲うことなかれ、じわじわいたぶる、そうさな、まず余が応対する、と。はっ、余が指示すればこの婆なぶり殺しの運命、その命、我が手の中に。ふいに、生じた憐れみ、感じたことのない彼女に対する憐れみ。やれ社交パーティだ、やれ流しそうめん大会だ、やれ大型の台風がやってくるだのとにかく何かイベントごとに威張り倒していたあの后がみすぼらしくてバタ臭くてどこか懐かしい匂いのする老婆に成り果てて、その運命が今や我が手の中に。これなんという気持ちのよさ。その憐れみの優越感に永遠に浸っていたいから、差し出された赤い赤い、というかもうすでに変色しとるんで赤黒い林檎を、ああこのちいさなちいさなお口で、シャクり。
月の光さえも見ることができない、暗雲に満たされた空の下、一人の老人が、まるで幽霊のようにひっそりと、林の中を歩いていた。
その林は、老人の人生で最も険悪な思い出のある場所だった。
それは、殺人。
誰にも発見されることなく、かつての犯罪は公訴時効をとっくに過ぎていた。その相手の命がもうないということは、老人と、もしかすると彼の遺族のみが知りうることだった。老人は数年前、自白をして、遺族へ謝罪することを思い立ったが、そうすれば報道関係者は黙っていない。大衆の発言とは無責任である。責め立てられるだけだ。老人の心中も察せず、同時に、法律上にもう無罪であることを、考えもせずに。その上、彼らは老人に、何をすべきかを指し示すこともせずに、ただ永遠と、排除し続け、自らをまるで人を裁く選民であるかのように誇り続けるのであろう。そんな社会の中で、老人は今ある貴重な時間を、過ごしたいとは思わなかった。
老人は、林のずっとずっと奥に進んでいった。もう何十年も前の事であるのに、死体を埋めた場所が、つい昨日のことであるかのように鮮明に思い出された。あったとしてももうとっくに白骨化しているのであろうが、それでもまだ彼の亡骸がそこにあるのかどうか、老人は知りたかった。林の闇の中に進むにつれ、老人は心の内にこれまで経験し得なかった高揚と恐怖を感じた。そして同時に、彼の心境は犯行時の彼の心境に近づいていった。同時に、老人の決して消えぬ心の傷跡が、痛烈に痛み始めた。
やがて、老人はやっと死体の場所に辿り着いた。震える手で、穴を掘った。暗雲から、掠れた月の光が、見え始めていた。
しばらくして、老人はついに黒いバッグを発見した。老人はバッグに違和感を覚えたが、何しろ何十年前のことだ。明確に記憶しているわけではない。勘違いであろうと、そっとチャックを開けた。
とたん、老人は目を見開いた。老人がかつて殺した男とは似ても似つかぬ、一人の女の死体が、老人の目に映った。老人の胸は高鳴った。同時に、女の体がまだ温かいことから、全てを悟った。
突然、彼の後ろに、青年が一人現れた。彼の手には、白銀の短刀が握られていた。彼はためらわず、目的を遂げた。驚くほどに静かな時間だった。
空には、真っ白な月が、煌々と輝いているのが見えた。
暴走族のアタマをやって居たお婆さんが逮捕された。
容疑は自転車の上で裸の少女に曲乗りをさせて居たと言うものだ。
しかし暴走族のアタマがそんなに簡単に逮捕されるであろうか。
これには矢張り裏があった。
暴走族の権力抗争である。
副総長が会長のムッソリーニ下等さんに電話で連絡したのだ。
「ピングーカーを手配せよ」
ピングーカーはペンギン飼育用の車で逮捕されたお婆さん所属の暴走族の資金源がこれらペンギンだった。
アタマはお婆さんだが、その下に副総長が居りアタマの上には会長と名誉会長が居た。
会長や名誉会長とは言え決して名誉職では無く実権を握って居たので、しばしば権力抗争の火種になった。
会長がピングーカーを手配したと言う事は会長が本気でアタマを潰しにかかった証拠だ。
何故ならピングーカー手配はアタマ専属の権限であり、それによってアタマの威厳も保たれて居た。大事な資金源だから。
それをアタマを無視して会長に手配されてはアタマの面目丸つぶれだ。
「おのれ会長のムッソリーニめ、あたいの頭越しにやりくさって」
やけくそになったアタマが無茶な動員をかけたものだから、下っ端が腹を立てて資金源を断たれたならいい資金源がありますぜと少女の曲乗りが金になりますぜと嘘をつかれて、その上裸ならもう高値間違いなしと酒の上でのこととは言えアタマのお婆さんは信じ込んで仕舞った。
「そうかえ、そうかえ、んならやりまっしょい」
とアタマはさるスジから上玉を調達させて曲乗りをやらせて居た所、検挙されたと言う訳だ。
「婆さんそんなもの金になる訳無いだろ、いったい何年生きてきたんだい、あなたは嘘をつかれて居たんだよ」
と警察署で全てを教えられて思いのたけをぶちまけた。
「アイヤーアイヤー部下の嘘に乗せられたわいな。あんた何年生きて来(たんだい)って私は若いころ九州探題研究の権威で大学で日本史を教えて来たんだよ、その私がグレン隊のアタマを務めるまでの女の生きざまを馬鹿にしちゃいかんよ、罰が当たるよ、スズメバチだよ、なんちゃって」
結局お婆さんは厳重注意と言う事で放免になった。
もうあんな馬鹿な事はやらないだろう。
お婆さんには真人間に更正してもらいたい物だとの警察側の発表で事件は一段落したのであった。
僕は最近どんどん脳が溶けてきている。
だから君ともうまく話せないんだ。生まれた時からの病気なんだ。
世界中の人の一万分の一はこの病気なんだよ。さらにその一万分の一が犯罪者で、その一万分の一が殺人者なんだ。作り話だと思うかい?
もうすぐ僕はすっかり君のことも、過ごした時間も、可愛がっていた犬のことも、ついには頑張って覚えた円周率30桁も忘れてしまうかもしれないんだ。とっても深刻だろう。
さて、大層に振舞ってしまったが、実のところ僕は言い残したいことなんて何にもないんだよ。
申し分のない人生を送っていたわけでもないし、何か大きなことを成し遂げたわけでもない。
あぁ、そんなに悲観的に捉えなくても結構だよ。充足とはいかずとも満足はしているんだ。
ただ、これからきっと君に対して僕は他人のような親しさで接してしまったりするかもしれない。その非礼を先に詫びておくよ。
もちろん様々な愛着を忘れていってしまうことは単純に悲しいよ。けれど、決まっている運命を嘆くなんて、毎週やってくる月曜日を嘆いているのと同じことだろう。
それでも嘆いてしまう、僕はそんな人間が大好きだよ。とりわけ君のことは食べてしまいたいくらい大好きだよ。
これじゃまるでカニバリズムだって、君は怖がるかな。まだ僕が犯罪者にならない可能性は捨て切れていないしね。
けれど少しわかるんだ。だってどんなに肌を合わせても君と僕は別々の物体だし、君の考えていることなんて、恥ずかしながら5パーセントも分かっちゃいないんだ。
つまりいつ僕の前から消えてしまったり、君の頭の中から僕が消えてしまったりするのかも分からなくって、いつもヒヤヒヤしてるんだ。
もし君のこと残さず全部喰っちまえば、もう君と僕は一つだ。あぁ、もちろん逆でも構わないよ。新鮮なうちにどうぞ。
話が逸れてしまったね。早くも僕の指は速度と精度を落としてきている。いつも話の長い奴だと、また君に怒られてしまうね。終わりは近いかもしれないね。
ただ覚えていてくれ。(これから忘れゆく奴がいう科白かね)
僕の記憶があろうとなかろうと、意識だって、身体だって、たとい存在すら消されてしまったとしても、僕は君を愛する運命なんだ。
生命体が地球に存在するよりずっとまえ、ビックバンよりもっとまえから決まってたんだ。少なくとも僕はそれを疑わない。
君はまた大袈裟だと笑うだろうね。
ありがとう、まったく幸せな人生でした。これからもね。
坂を転げ上ってゆく彼女の姿を見た。かのニュートンの発見した万有引力に逆らっているこの光景は、およそ不自然に見える。私は今、先ほど飲んだものよりもずっと甘くて苦い、愉悦と後悔のカクテルを飲んだのだ。
黒いアスファルトで塗り固められた東京の大地に、たくさんの温かなヘモグロビンが舞い降りる。恐らく15.9g/dL。女性にしては多めであるのが、そこに咲く紫陽花のような赤い色をなしている理由なのだろうか。
ぐいと踏ん張り力んでいた右足から力を抜き、少し右へと滑らせる。先ほどの彼女のときと違って、ニュートンの法則は私を無視しなかったが、今度はクリープ現象の影響と重なり合って、その働きを感じない。その代わりと言おうか、再び右足をそっと踏み下ろすと、背中は軽く加速度を感じた。
私は家に着く直前にふと、この家は誰のものになるのだろうかと考えてみる。残された服や化粧台や庭の植木。彼女は几帳面で、折を見ては庭を綺麗にしていたから、外からはとても良い家に見える。
これから私のすることは、庭の木に生った麗しい青梅の実をいくつかもいで口に運ぶだけ。そうすれば私も晴れて彼女と同じ側の人間だ。短針が二回りするごとに、あの煩わしくわざとらしい東の空のほの明かりに憂鬱することは二度とない。
春香は悩んでいた。
「そもそも、冬美姉さんが悪いのよ」
そう言われてしまえば、そうかもしれない。きっかけは、長姉の冬美が結婚した相手が冬馬だったことから始まったのだから。
偶然にもお互いが四人兄弟と四人姉妹だった両家は、それから次々と縁談がまとまり、秋江は秋親と、夏帆は夏彦と結婚するに至っていた。
「いいじゃない。春太郎さん、いい人なんだし」
秋江が口を挟む。ここまでくれば、残っている春香と春太郎が結婚することは既成事実に他ならない。しかし、そんな恰かも決められていたような相手と結婚しなくてはいけないなんて、春香にとっては煮え切らない思いでいっぱいだった。
「あら? 年の差を気にしているのかしら。そんなの最初だけよ。夫婦になれば気にならないものなの」
夏帆が呟く。両家の兄弟と姉妹の大きな違いは、年齢だった。
姉妹は冬美から秋江、夏帆、春香という順番なのだけれども、兄弟は春太郎を筆頭に冬馬、秋親、夏彦という順番であった。よって、春香と春太郎に至っては一回りも年の差が生じてしまうのだ。夏帆と夏彦も六つ離れているのだから、夏帆の言うことも一理あるのかもしれないが。
「口には出さないけれど、お父さんもお母さんもきっと望んでいると思うわ」
冬美が諭す。それもそうだろう。親たちにしてみれば、親戚付き合いなんて少ない方がいいに決まっている。まして、春香と春太郎が結婚すれば、両家だけですべて事足りるのだから万々歳であろうに。
「……あたし、好きな人がいるの」
春香は恐る恐る言葉を選びながら声を絞り出した。姉たちは、一斉に顔を見合わせる。薄々感じていたことではあるけれど、妹の告白にたじろがないわけにはいかなかった。
「この人よ」
春香の差し出した携帯電話の待受画面を、姉たちは我先にと覗きこむ。そんな姉たちに向かって、春香は間髪いれずに平然と言いのけた。
「彼、武田春樹くんっていうの」
俺の性根が腐っているので、てっきりこの世界も腐っていると思ったのに、今日の空はドギツイくらいの晴天だった。もうね、真っ青。
「あ、やっぱりつまんないですよね」
視線を窓から少年へ移す。
この少年はまだ性根が腐ってない。
「そんなことないよ。面白いよ」
俺は珍しく自然に他人に気を遣うことができた。
「その漫画のカタルシスがなんかこう、すごいんだろ?」
「そうなんですよ」
少年は再び笑顔になり、漫画の話を再開させた。
こたつが俺たちの膝を焼いている。
二時間。
彼はもうかれこれ二時間、自分の好きな漫画について語り続けている。
半ば、『漫画について熱く語る』という行為そのものに熱中している節も見えたものの、この一度たりとも絶やすことのない無類の笑顔は、俺を退屈させなかった。
居心地がいい。
中学生にしては純粋で、中学生にしては真剣な少年である。
このまま腐ることなく成長してほしい、と俺は切に願った。切に。
しかし、もうあと長針が半周もすれば十八時である。
少し早いが晩飯でも作ってやればよかったか。
俺は台所に残った洗い物に目をやり、数時間前、少年と一緒に作った昼飯の炒飯を思い出した。
俺が飯に卵を混ぜる様子を、俺が鍋をガチャガチャ揺する様子を、少年は真ん丸い目で凝視していた。
「なんで卵を先に混ぜるんですか」
「中華鍋って僕初めて見ました」
彼は、思ったことを脳を介さずに直接口から出すことができる。
俺も、彼といると自分の言葉が自尊心や羞恥心というフィルターを通らずに自然に口から洩れているのを感じていた。
会話が楽しい。
そう思えたのは実に何年ぶりだろうか。
十八時まであと一分。
いつも目やにを溜めるくらいしか役目の無い俺の目頭が、珍しく涙を流そうとしている。
実に何年ぶりだろうか。
「今日はありがとね」
俺が言うと、少年は笑顔で何か返そうとしたところで、正座の形のまま横に倒れた。
十八時だ。
俺はいつものように、死んだ少年を抱き抱えて玄関まで行き、ドアを開けたところにあるでかい段ボールに入れた。
明日はとうとう十六歳の俺が来る。
高校生だ。
明日来る俺に何か言ってやらなければ、俺は何も変わることができない。
いや、今の俺が言ってやれることなど無いことを、俺は知っている。
段ボールの中で丸まった少年は、未だ笑顔。
一度開いた涙腺は中々塞がらなかった。
世間では、一般的に年寄りより若い子が好まれている。
もちろん人によって好みは違う。けれどほとんどの人が、若い子を選ぶ。お店に足を運んでくれるお客さんも、私が年を食っているというだけで、あまり良いイメージを持ってくれない。
私だって、まだまだ若いと思っている。十分現役だ。
仮に、お店に私しかいないときにお客さんが来たら、お客さんは迷うことなく私を選んでくれる。その決定に不満を持つことなく。私だって、選んでくれたお客を満足させることができると信じている。
だが現実は甘くない。
お店には、私より後から入ってきた、私より若い子がたくさんいる。
私の隣に、容姿はほとんど変わらないけど私より若い子がいたら、先の例にあげたお客さんだって、迷うことなくその子を選ぶのである。一度は私に興味を持ってくれたとしても、その子が私より若いと分かっただけで、私を捨ててその子を選ぶのだ。
お店に訪れるのは、男性に限ったことだけじゃない。だが女性も同じである。むしろ女性の方がシビアだったりする。
これが現実である。
さすがに不憫に思ってくれるのか、店長は毎日のようにあたしを前面に押し出してプッシュしてくれる。けれど実際、お客に気に入られ一緒にお店を出ていくのは、若い子たちだけなのである。
生まれた日がたった一日違うだけでもこの扱い。
今日も私は一人取り残される。
今だってそう。目の前の男性は私を見てくれた。食い入るように目を輝かせて見つめてくれた。手を差し伸べてくれた。
けれど彼の母親は、姑のように言うのだった。
「おかーさん。牛乳あったよー」
「雄太。手前のは賞味期限が古いから、奥のを取りなさい」
電話が鳴る。受話器を上げてみると叔父からだ。
「おう、久し振りだな。元気か?」
「うん……。叔父さんは?」
「俺か。俺はこの通り、ピンピンしてるさ。そんなことより、おまえ、少し頼まれてくれないか?」
「何?」
「柿木焼酎を買ってきてほしいんだ」
「聞いたことないよ、そんな焼酎」
「酒屋に行けば分かるから。いいか、頼んだぞ」
電話はそれで切れた。
まったく、死んでも強引さは治らない……。
そう思って愕然とした。そうだ。叔父は先日、亡くなったと聞かされていた。どうしてその叔父から電話が……。
唖然としていると、今度は背後から懐かしい声が聞こえてきた。
「いいなぁ、柿木焼酎か。あれは安くて美味い。俺も欲しいなぁ」
振り向くと、そこには七年前に死んだはずの親父が……。
「なあ、頼むよ。俺にも買ってきてくれないか」
俺は恐れながらも、生前、親父が安い焼酎ばかり呑んでいたのを思い出していた。毎晩、大量に呑むから安いものしか買えなかったのだ。
「ああ、いいよ。だからおとなしく待ってろよ」
そう、引き攣った笑顔で言った。
「悪いな」
親父は子供のような笑みを見せて、拝むように手を合わせた。これも懐かしい親父の仕草だ。
そういえば、まだ生きていたころ、親父には何もしてあげられなかった。少しばかり後悔する面もないわけではない。またこうして会えたのだから、好きな酒ぐらいは呑ませてあげたい。そんな気持ちもあったのだろう。親父の姿を名残惜しそうに眺めながら、家を出て買い物に行った。
しかし、柿木焼酎なんて聞いたこともない。
「まあ、いいか」
そうつぶやいて歩き出した……。
*
目を覚ました。
やっぱり、夢か……。ふと暦を見て、親父の命日が近いことを知った。
少年の牛革のランドセルには、人喰い魔人がいた。名をウシクイと言う。
「おい、おい、腹減らないか」
ウシクイのしゃがれた声を無視し、少年は走る。その小さな身体に重いランドセルを背負って走る。寒空の下、熱い呼気が白く背後に残されていく。凍った道路を踏みしめていく緊張感で、背中にじんわりと汗がわいてくる。
「なっ、なっ。俺、腹減っちゃったんだ」
少年はウシクイの甲高い声を無視する。
学校に着いて、まず少年は下駄箱の中身を確かめた。上履きのみ。とりあえず外履きから履き替える。
「だって、何も喰ってないんだもん」
少年はウシクイのくもぐった声を無視する。
そのとき少年の傍らを可愛らしいコートに身を包んだ長い髪の少女が通る。少年の視線はその白くなった頬に注がれる。髪のわずかに揺れる様を追う。
「腹の音が鳴っちゃうよ!」
ウシクイの叫びは、少女には聞こえない。少年は早歩きで少女の横を通り過ぎていく。淡い香りが少年の鼻をかすめる。
次に少年は机の中を確かめた。ろくに使わない道具箱のみが半分近くスペースを取って入っている。奥の方に手を突っ込むが、特別何も存在しない。
「あっ、あっ。いい匂いしてきたぞぉ」
ウシクイの強張った声がランドセルのしまわれたロッカーから響く。
少年の視線が泳ぐ。友人達が何か話しかけにくる。その言葉は少年には届かない。彼はこの世ではない風景を見ていた。
そうして一時間目が終わり二時間目が終わり三時間目が終わり四時間目が終わり全ての学業がつつがなく終了した。
少年は外履きしか入っていない下駄箱をじっと見ていた。
「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
純粋な騒音と化したウシカイの声がグラウンドに響いている。しかしそれを聞くことができるのは少年のみ。
天を仰ぎ、拳を握り締める少年。
「……帰ろう」
そう呟いて、何かを噛み締めて、靴跡ばかりの大地へと少年は眼差しを向ける。
が、その過程。
少年の視界に、可愛らしい包装を大事そうに鞄にしまうクラスメイトの姿が映る。
「ウシカイ」
騒音が止む。
「待ってました」
人のそれと懸け離れたおぞましくも冷たい声が響く。
ランドセルからずるりと、ぬらぬらと黒く輝くものが現れる。
少年はまたその瞳を天に向けてしまった。
次に彼がする行為は、耳を塞ぐことだった。
気になる人が自分のよく知らないことを話したりしていると、妙に落ち着かないというかイライラしてしまう。
僕が仕事をしているデスクの向こう、女達が楽しく話をしている。聞きたくなくても耳に入る。目はパソコンの画面を見つめている。師走だ。仕事が山程ある。だが頭の中は話し声でいっぱいになっている。一向に画面の情報が頭に入っていないことに気付く。
同僚のA子が思い付いたような調子で言った。それがまた妙に僕の思考を引っ張った。
「また福袋買いに行かなくちゃ」
後輩が答える。
「私まだ福袋買ったことないです」
A子が答える。
「いいよ福袋。買うとおもしろいよ」
福袋の話が広がっていく。ブランドやデパートの名前が出てくる。僕は福袋のことをよく知らない。買おうと思ったことがない。買ってみたことがない。
別に男が買う物でもない。そう思い気持ちを切り替える。昨晩鞄に入れておいた「科学の耳栓」を取り出す。スポンジのようなそれをねじって耳に入れる。耳の中で耳栓は膨らみ外の音を締め出した。
鼻で息を吸う音が聴こえる。A子達の声はだいぶ遠くになった。どこか外界と離縁したような気持ちになった。気分が良くなり目の前の仕事に集中する。
時計の針が六時を指した。耳栓を外して一息ついた。
「お先に失礼します」という声がした。何人かが帰宅の準備をしていた。
「おつかれー」という声と共に、後ろからA子がカントリーマアムを一つ僕の机に置いていった。そして「お疲れ様でした」と言って部屋を出て行った。
つい目で後ろ姿を追った。きょうはクリーム色のコートだった。鞄を肩から掛けて持ち手を右手で握っていた。歩く左手の指がピンと伸びていた。
自分がどこか矮小に思え、手の中の耳栓を見つめた。A子を意識しないようにしていると自分が段々根暗になっていく。
七時に仕事を終えて帰りの電車に乗った。中心街で電車を乗り継ぐ。師走の街はイルミネーションの光で溢れていた。カップルや家族連れの姿が目に映った。
A子は家に帰ったのだろうか。後ろ姿を思い出す。ふと電飾をまとった人形の並ぶほうへ足を進める。
ケータイを取り出す。一枚二枚と写真を撮る。うまく撮れたのを待ち受けにした。
電飾をまとったかわいい二匹の熊のぬいぐるみがあった。ポケットからカントリーマアムを取り出すとゆっくりかじった。
隣にA子の姿を想像した。二人で熊のぬいぐるみをのんびり眺めていた。
星々が騒がしく瞬きはじめる頃、窓はのしかかる闇を四角く取り除いて暖かな光を湛えていた。彼は夜道を足早に歩き、窓を道標に帰宅した。
帰宅した彼を、壁に掛けられた写真が出迎えた。写真の中にイチョウを背にして並ぶ家族四人が見えた。彼は視線を外し、温度差で顔を上気させながら母のいるキッチンへ向かった。キッチンでは母が背を向けて料理を作っていた。コンロで鍋とみそ汁が沸いていた。換気扇からあぶれた湯気が霧のように部屋を覆っていた。霧の中で母のせわしなく動く小さな背中がぼんやりと見えた。ただいま。彼は母にそう告げ、椅子にもたれてうたた寝をしている父の斜め前に腰掛けた。霧の中で母がわずかに顔を向けたような気がした。父は腹の前で手を組み合わせ静かに目を瞑っていた。弟の姿がみえなかった。かあさん。彼は弟の所在を訊ねた。母はペティナイフで魚の延髄に切り込みを入れた。お腹すいてるのね。母は魚の頭をひねって首を折った。関節の限界を越えた首は滑るようにくるくると回った。今日のご飯はお肉なの。あなた好きでしょ。霧は熱を帯びはじめ、彼の頬を汗が伝った。頭を静かに胴体から外すと喉に内臓が連なってぶら下がっていた。割かれた白い腹からどす黒い血が塊でこぼれ、溢れた血がまな板を染め上げた。血と内臓の臭いが熱い霧に運ばれて部屋中に満ち、彼は粘つく唾液を飲み込んだ。弟はどこにいるの。母は答えなかった。父はすべてが停止したかのように目を瞑ったままだった。霧の中で換気扇の立てる甲高い駆動音と汁の煮えたぎる音だけが低く響いた。
「ただいま!」
弟がくぐもった足音を立ててキッチンに入ってきた。父は目を覚まし、「おかえり」と言いながら背筋を伸ばし上げ、コンロに目をやって狼狽した。霧は既にかき消えていた。
窓の外には黒い絹のほつれのような夜空があった。窓に鍋をかき混ぜる父とグラスに注いだジュースを飲み干す弟だけが映っていた。彼はいたたまれなくなってキッチンから出た。廊下に出ると写真が目に入った。彼は傾いた写真を平らに均した。イチョウの葉の降り積もる秋だった。母は金色の海の上で笑っていた。写真に触れた彼の指先が、白い布で隠された禍々しい縫合痕の膨らみを憶えていた。記憶に比べて、写真はあまりにも平坦だった。
母はもういない。父も弟もいつか死ぬ。彼は全てを遠くに感じた。心の中にしまい込んだ闇が絞り上がり、彼の目から涙が落ちた。
音もなく大型トラックは去っていった。また止まってくれませんでしたねェ。結衣が呟いている間、あんな大きいのが静かに走っているというのはどうにも、なァ、と陸は思っていた。そんなにくよくよしないでください。すると妻が見当違いのことを言った。陸はしかし、ああ、とだけ返しておいた。
下呂温泉の帰りだという若い女性二人の車で名古屋に着いたのはバスの時間ぎりぎりのことだった。女性たちとのお喋りに愛想良く付き合っていた結衣は、発車して五分も経たないうちに寝入ってしまった。反対に女性たちの車でうとうとしていた陸は目が冴えて、妻の寝顔越しに真夜中の通りを眺めながら眠気が訪れるのを待った。
終点の狛江で降り、そこからは電車移動となった。四駅も行くと建物の数は目立って減っていき、二人の目線の先では、ぽつりぽつりと、天を支える柱のような高層ビル群が朝陽を背に黒く染まっていた。
新宿駅で紀子と合流した。彼女が経営するホテルにチェックインし、そこで朝食をとった。食休みを挿んでリムジンで移動、大正時代の銀座の一部を再現した一画をぶらつき、その後紀子がオーナーとなっている料亭で遅めの昼食を済ませると、その場で彼女と別れることになった。結衣が尋ねるより先に、近々再婚する予定があるのだと嬉しそうに話して仕事に戻っていった。
リムジンでホテルに送ってもらい、二人してベッドに横になった。お腹の調子が悪かった。夕食は諦めなければならなかった。
翌朝、気遣って電話をくれた紀子に昨夜のことを詫び、まだ本調子ではなかったが少しだけ胃に食べものを入れ、紀子に頼んでおいた一般のタクシーで出掛けた。
遠回りになりますよ、と言われたが、長男、長女、次男の順番で子供たちの自宅があった場所を回ってもらった。そこは、大きな道路であったり、ビルの敷地であったり、公園であったりした。三〇年前の焼け野原が二人の視界で二重写しになるのは、空の広さがほとんど変わっていないからだった。
紀子が都合がつかなくなったというので、ホテルで二人きりの夕食となった。もったいなかったが、食べる量は抑えておいた。チェックアウトし、電車で狛江に向かった。
名古屋から大阪経由ではあったが、二日後の夕方には無事、自宅に帰って来られた。病院にお金を支払い次女を引き取ると、ようやく人心地が付いた。
疲れましたねェ。
ああ。
紀子さん、元気そうでよかったですねェ。
「みなさん恐がっていらっしゃるけど、ほんとうはマゾじゃないかと屋福さんのこと思うことがありますわ」と、小雪さん。
「なんだよ、このひとは、なんということをいってくれるんだ」
どういう仲なんだろうと、ただ漠然と二人の会話を聞いている栄太。
きれいな細い指でグリップを固めると、小雪さんがまず最初にグリーンにのせた。次は屋福さん。
「ぼくは、このくらいの距離が一番打ちやすいんだよ」
そういいながら、残り150ヤードを軽く振り抜いた。
「いい目的ができたじゃないか?」と、滝音プロが言ったので、はっといまの状況に気持ちが舞い戻ってきて、目が覚めたように感じる。
同じくらいの距離を残して栄太のショットになった。さて何番でどのくらい飛ばすのか考えていなかった栄太である。
狙いはグリーンに立っている旗の根元だ。それは、練習でも見慣れた目標だ。
キャディさんが残り140ヤードだと教えてくれる。
9番アイアンを渡された。
滝音プロは黙っている。ルールはアドバイス禁止である。たとえ指導ゴルフでもいまは、ゲームに集中しろという姿勢だ。相談するならキャディさんに聞くしかない。
耳のかなでかすかに響く音がある。
「パーをとったらオーダークラブをプレゼントしてもらえる」
気持ちよく、ナイスショット。
栄太は、9番ならいつも、だいたい150ヤード飛ばしているのだ。
見事にグリーンを飛び越えて次のホールの林の中に打ち込んだ。
なんか、それで、いいような気がしている栄太。打ちっぱなし練習は飛べばよかった。
よく飛んでいるじゃないか。
ボーっと、そんなことを考えている栄太だった。
「どうした? ちゃんとキャディさんのいうこと聞いていたのかい?」
滝音プロのアドバイスは、もうおそかった。
「あら、まあ、このホールはおあずけね」と、小雪さんが言った。それから、
「どこかでパーをとればいいんだから、ここは、さっとあきらめたほうがいいわよ。おとこらしくね」
男らしくかぁ……、と、何もいえないまま、考えている。
栄太が、ゴルフコース攻略をおもいだすまでには、しばらく時間と慣れが必要だ。
誰かが、「朝ですよ〜」と私に向かって叫んでいるような気がした。まだ眠ってもいないのに。
「でも夜は明けたの」
私は最近、仕事を首になった。
「知ってる。でもこのままじゃあなたはダメな人間になっちゃう。秋葉事件の犯人みたいにね」
どうでもいいけど、何で君はメイド服なんか着てるんだ。
「これ、ドンキホーテで三千円もしたのよ」
私は財布から三千円出して彼女に渡した。もう帰ってくれ。
「馬鹿ね……」
彼女は千円札を白いエプロンのポケットに入れると部屋を出て行った。私にはもう三万しかないんだぞと私が心の中で言うと、彼女はお返しに「バタン!」と大声で言いながらアパートの扉を閉めた。
バタン?
私はシャワーを浴び、身支度を済ませるとアパートを出た。
冬の空を仰ぎ、針のように尖った冷たい風の中を歩いていると思わず酒が飲みたくなった。コンビニに寄って一番安いウイスキーを買った。店員の女の子はサンタの赤白帽を被っていたが、笑顔はまるで無かった。
私はウイスキーを飲みながら職安を目指した。体と心が少しずつほぐれてゆき、職安に着くころには随分まともな気分になっていた。でも私は、そのあと職安のソファーで眠りこけていたらしい。恐い顔をした職安のおばさんに起こされたときはもう夕方で、早く帰れと言われたので私はもと来た道を帰った。
アパートへ戻ると朝のメイド服が部屋にいた。
「メリークリスマス!」
殺風景な部屋の壁にはクリスマス風の下手糞な絵が描いてあったり色紙でさっき作ったような飾りがあちこちに貼り付けられていた。そして小さなちゃぶ台の上にはケーキとシャンパンが。
「朝もらった三千円で買ったの。いいから早く座って」
メイド服はケーキの蝋燭に火を点け、グラスにシャンパンを注いだ。
「ねえ、電気を消して」
私は電気を消した。シャンパンを飲みながら、蝋燭の灯りに照らされた彼女を眺めた。
「Hなことは考えないでね」
私は彼女をつき倒しキスをした。
「もう、ダメだってば……」
その後のことはよく覚えていない。朝目覚めると窓の外に雪が降っていた。
テレビを点けると、昨夜隣国との間で戦争が始まったというニュースが繰り返し流れていた。そしてなぜか軍服姿の彼女が突然テレビ画面に現れ、凛とした表情で演説を始めた。
「諸君!」
私の部屋には彼女のメイド服だけが脱ぎ捨てられている。戦争が終わったら、また戻ってくるのだろうか。
「ワタクシ、宇宙へ帰ります」
連続回転に設定していたはずの扇風機が急に止まったかと思えば、どこからともなくそんな声が聞こえた。古式の扇風機を見つめながら、もしかして今の、と独りごちると、ええワタクシです、と扇風機が喋った。何で喋るのか勢いで問い質せば、日本語覚えましたと返ってくる。
故郷、宇宙なのか。
「エエ。電化星雲トオシヴァ星H-30P30G系から参りました」
で、帰るのか。
「ハイ。里帰りです。そういう時期だと覚えました」
理屈は通っているので暫く様子を見ていると、盂蘭盆に先駆けて星の見える夜にアパートの窓から扇風機は帰っていった。回転した羽根から普段は出さない強さの風を巻き起こし、いとも容易く夜空へ消えた。実家時代から数えればゆうに十五年は超える同居生活はそうしてあっさりと終えたのである。帰る間際、これまでの御礼と称して、羽根四枚の内の一枚を置いていった。故郷の特別な石で造られているそうで、売ったらクーラー一台ぐらいにはなるらしい。どう見てもプラスチックにしか見えないのだが、とりあえず受け取った。扇風機の帰郷後、質屋に持っていくと案の定門前払いを受け一銭にもならず、それでも猛暑に対抗する術が欲しかった俺は、有り金を叩いてクーラーを購入した。
熱中症の危険は去り、夏の終わりの夜空を見上げながら煙草を吹かす。満天の星空のどこかに奴がいると思って、夏のボーナス返せと叫んだら、翌朝隣人たちから暑さで頭がおかしくなったのじゃないかと心配されたがそれはまた別の話。
一年が過ぎ、また訪れた初夏。クーラーも馴染み、暑気を待ち受ける準備の整っていた我が家だが、時代後れの扇風機があった場所は蛻のからで一年経つのは早いなと今更感じてしまった。当然のことながらクーラーは寡黙を極めている。溜め息めいた冷気しか吐かない。
とある日。じんわり夏を体感しながら帰宅する途中、近所のごみ集積場に見覚えのある三枚羽根の扇風機が捨ててあった。あっ、と辺りに響くほどに声を出してやると、気持ちばかし羽根が回り始め、お前か、と詰め寄ると照れ臭そうに首を振る。
「マタ来ました」
羽根の何処からか懐かしい声。クーラーが常備された今、奴の居場所はない。けれども両方使用している家が多いこともまた事実だ。
今年も暑くなるといいな。
暑さがなければ使い道のない存在なのに、肯くことを知らない扇風機はやっぱり首を振っている。