第97期 #13

ごんぶと森のコン太

タンタカ山の裏にごんぶとの森という場所がある。一年中暢気な奴等が暢気に過ごす暢気な森だ。その森でちっとばかし有名な狐がいる。名前はコン太。大層な武勇伝で森中の動物から知られている。今日もコン太は森の広場で大勢の動物を前に武勇伝を語る。切り株の上は彼のステージだ。

「で、俺達はバカな人間をこの爪でギッタギタにしたわけだ。ずばーっ! ばりーっ! てな」

 森の暢気な連中はそれを聞いて喚声を上げたりする。いじめっ子達も気に入らないとは思いつつも渋々聞く。何故か? それはもちろん諺の通り。
 このコン太、無駄に虎をほめるのが上手い。ちょっとうざったい感じで褒めてくるのが絶妙に虎心をくすぐるとか。そういうわけで虎は一応コン太を舎弟として認め、守っているのだ。
 だがある日のこと。

「ちょっ、マジで虎さん相変わらず毛並みパネーっすね! マジ威厳たっぷりじゃないっすか! 爪も超エッジきいててャベー! ッべ、超カッケぇ! さすがっすね」

 いつものようにコン太が派手に虎を褒めているが、何やら虎の顔が浮かない。

「コン太」
「はい!」
「俺もう、虎やめるわ」
「はい?」

 コン太は思わず聞き返してしまった。

「正確には動物やめる。俺、四聖獣にスカウトされた」
「えっ」
「これから俺、神クラスだから。俗物と付き合っちゃいけないんだわ」
「えっ、えっ」

 虎の毛が徐々に美しい銀色になっていく。
 
「まぁそういうわけだから。お前にヨイショされんの、嫌いじゃなかったぜ」

 そう言って虎は一吼えしてから空へ飛んでいってしまった。その咆哮が凄すぎて、コン太はタンタカ山から一気にごんぶとの森まで吹っ飛ばされてしまう。

「マジかよ」
 
 コン太はどうしていいかわからず、空を見上げてこんこん鳴いていた。

 次の日からコン太の世界は一転する。
 虎が消えたのを知ったいじめっ子が急にコン太を虐めるようになったのだ。元々弱いコン太に抵抗の余地はない。

「おら、フォックスクローやれよ。虎の旦那を猟銃から救った技なんだろ?」
「ぐっ、うぅ」
 
 いじめっ子に噛まれた部分が膿んでいます。

 コン太はこうして嘘を吐きすぎた罰を受けるのです。彼はこのまま虐められ続け、社会で孤独になり、誰にも看取られることなく一匹でむなしく死んでいくのでしょう。そして地獄で宇宙の終わりまで生かされたまま責め苦を受け続けるのでしょう。嘘をついてはいけませんね。
 めでたし、めでたし。   



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