第96期 #25
「ナイスショット!
さすがは滝音プロのお弟子さんだ。しかし、今日は勝たせませんよ。
まるで独り言のように、いいながら屋福さんもナイスショットを見せた。プロの技、打てて当たり前の滝音プロはニコニコ笑っている。
前進ティーから打った小雪さんに並ばれてしまったのには、心の底ではすこしがっかりした栄太。
セカンドは屋福さんがきれいにグリーンに寄せてプレッシャーをかける。
「ここはオーガスタの十五番ホールにそっくりなんだよ……飛ばないからオレは花道から、いいぞ、栄太はどうする?」
ナイス寄せで、御機嫌な屋福さんが聞いた。
どうすると? 聞かれてもわからない。
「残り二百六十ヤードグリーンの手前に池があります」とキャディさんがアドバイスしてくれる。……だが、そんなこといわれても、
「今日は初めてなんだから、短く刻んで攻めるのがいいでしょう」
滝音プロがアドバイスした。
手前に落とすなら三番アイアンですか。キャディさんがアイアンを差し出してくれる。
ああ、そうか、池の手前に落とすんだ。……。
練習場でやってきたことがパッと湧き上がってきた。ボールの後ろから見る。手前のマークを決める。ボールの横に立つ。マークとボールの作る直線。それを斬るようにアイアンをおろす。左手、右手とグリップ。
肩と膝を面にそろえる。両足に体重をかける。
自然に三番アイアンが後ろに巻き上がり、グイっと引き落としながらインパクトしていた。
「ナイスショット!」
スイングが格好よく決まり。声がかかった。しかし、飛んでいない。芯をはずして五十ヤードは短くなってしまった。
滝音プロはぐっと先のほうからツーオン狙いだ。
小雪さんがウッドを使って寄せ場に落とした。
スリーオン確実だ。
「イメージが大切だよ。どこへボールを落とすか。……だよ」
練習時間の流れ、同じに……ボールの後ろから見る。……景色がちがう。
どこまでボールが飛ぶか、目の前の自然が聞いているのだ。ドライバーなら二百五十ヤード、五番アイアンなら百二十ヤード、だいたいそんなことを考えてボールを打っていた。
そして、グリーンの前に池がある。その手前に第三打をとめる。……のか、池越えし、グリーンを狙って寄せパットを決めるのか? どっちにしたらいいのか? 栄太は気が付いていない。それさえ曖昧なのに。
そういうことを、理解するためのレッスン。
屋福や滝音プロ、キャディさんの助言で今日は、???楽しいゴルフになるのか……