第95期 #5

霜月の夕刻

「用件は? 」
「斎藤安行らしき人物を見たんですけど」
「いつ? どこで? 」
「天留川駅のフレンドリーの辺りで見ました」
「フレンドリーってデパート? 」
「そうです 」
「新しく出来たん」
「はい」
「見たんはその近くでいいんですね? 」
「はい」
「犯人の特徴教えて下さい」
「三角顔でがっしりとした体形」
「住所とお名前教えて下さい」
「え! …」
「早く、早くして忙しいから」
「え!大阪府高成市日陰ヶ丘9丁目13の11」
「名前は? 」
「夏浦」
「下は? (怒) 」
「………………」
「早く。 (怒)下は?聞いてんのに答えてよ。 (怒) 」
「清子」
「キヨコってサンズイヘン? 」
「はい」
「年いくつ? 」
「え〜と40歳」
「はい、ありがとう」

「はい、もしもし」
「あ、娘さんですか? お母さんおられる清子さん」
「はい、ちょっとお待ちください」
(20秒ぐらいあく)
「はい、代わりました」
「清子さんいないの? 」
「はい、私ですけど」
「あ、清子さんでしたか失礼しました。天留川警察ですけど、東京連続殺人事件のことについてもう少し教えてほしいんやけど」
「はい」
「あっ。忘れんうちに聞いとくは。住所は? 」
「え〜〜〜〜〜〜!! 」
「そんな驚くことあれへんやんか(ないんじゃない)? 住所聞いてるだけやのに。 (怒)言うて」
「大阪府高成市日陰ヶ丘9丁目13の11」
「下の名前は清子さんでおうてんねんなぁ〜」
「はい」
「清子さん。年は? 」
「40」
「犯人の特徴は? 」
「三角顔でがっしりとした体形」
「はい、じゃまた何かあればよろしくお願いします」

「天留川警察ですけど。さっきのことについてもう少し詳しく教えて下さい。どこらへんで見られたんか具体的に説明して」
「天留川駅のフレンドリーの辺りで見ました」
「それ見たんいつ? 」
「11月20日火曜、フレンドリーの辺りで見ました」
「じゃあ。おとついか。じゃ〜また家伺わしてくれる? 」
「え! それは無理です」
「なんでや」
「え! ちょっと仕事上の都合で」
「働いてはんの? 」
「はい」
「その犯人見た! 言う時は何してはったん? 」
(2、3秒間があく)
「ちょっと娘の用事で学校まで」
「あっ娘さんの。じゃあ。また、暇な時家伺わせて下さい。詳しく聞きたいんで」
「いえ、それはちょっと無理なんですけど」
「なんで。何か行って困ることあるんか? 」
「いえそんなことないけど仕事が忙しいから」
「じゃあ、またかけます」



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